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あきら「茶柱句会 第三部 第18回茶柱ツイッタ−句会」

─俳句を遊ぼ─
「第17回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」

(着信順 投句のまま)
6月22日〜6月30日締め切り分
一人三句まで(1ツイ−ト3句以内)
兼題は簾(すだれ)団扇(うちは)朝曇(あさぐもり)
あるいは自由題(当季)


朝曇まづは一歩を土間に立つ

節電といふはいぢまし京団扇

数枚の簾を漉せど姦しき
(以上三句 大阪市 あきら)


端居して視線合はさぬ間がら

青梅を探し緑の帳かな

冷蔵庫のぞきのぞかれ二十年
(以上三句 神奈川 みゆき)


色白の娘の窓に伊予簾

朝行けばデスクの上に団扇かな

朝曇みやげの服はまた明日に
(以上三句 西条市 田所良雄)


大津絵の雷神怒る団扇買ひ

古簾交はす会話の古びたる

田植機で余呉湖一枚小半日
(以上三句  加古郡 はつを)(代ツ)


卵管に造影剤や朝曇

軒簾の影揺れゐたり波の音

雨降りて母の忘れし団扇かな
(以上三句  鈴鹿市 天白)


用いられた季語
順番に 朝曇 団扇(うちは)簾 端居(はしゐ)青梅 冷蔵庫
伊予簾 田植機



<同人欄>
「夜光虫」 あきら(代表同人)vol.6
掌を抜くニュ−トリノ昼寝覚

プラントののたくるパイプ熱帯夜

夜光虫星を定めて握る舵

風鈴の点にきはまる三次元

かき氷の秀に降りかけし和三盆

草いきれ卍崩しの見ゆる里

緑陰や慮りてとる間(あはひ)

胡麻塩の人に寄り添ふ夏の蝶

鱧の皮ざくざくざくと毛馬胡瓜

大阪「七月大歌舞伎」を触れて周る恒例の「舟乗り込み」
松嶋屋は片岡仁左衛門の屋号

「松嶋屋!」浴衣の舟にかゝる声

字句補足説明
順番に
昼寝覚(ひるねざめ)熱帯夜(ねつたいや)夜光虫(やくうちう)
風鈴 かき氷 緑陰(りょくいん)
夏の蝶(なつのてふ)鱧の皮 浴衣が夏の季語
ニュ−トリノは恒星内部の核融合で大量に発生 あらゆるものを透過する素粒子未発見の「第三の変化」捉える というニュ−スを見た後の昼寝覚
掌(てのひら)を抜けたかどうかもわからない
プラントは石油化学製造やLNG精製の巨大な機械装置 
近代日本の巨大産業を象徴する 産業遺構になりつつある 
裸のままにパイプがのたうちまわっている熱帯夜
夜光虫は植物性鞭毛虫 海に浮遊していて 波や物に触れて青白い燐光を放つ
むかしのヨットの夜間航行は 
行き先が決まると星を定めて舵を固定して交代で握った 
ヨットの舳先に当たった夜光虫の光が妖しく不気味に思えたものだ
風鈴はその涼し気な音で涼を呼ぶものだ 
ここでは もっと過激に蒸暑いこの世(三次元)ごと風鈴が吸い取って
異次元へ移行する装置とす
かき氷の秀(ほ)に和三盆糖を降りかけて食べる
卍崩しは 卍(まんじ)崩し組子の略 塔や堂の欄干の意匠に用いられる
卍は仏教において功徳円満の意 吉祥万徳の相とする
この里は法隆寺のある斑鳩の里(いかるがのさと)
緑陰は木下闇(こしたやみ)ともいわれる 夏の涼しい木陰のこと
誰もが涼みにやってくるので お互い慮り(おもんばかり)合って 
暗黙の距離感 間(あはひ)がおかれる
ざくざくは 胡瓜をざくざくと薄く切る料理
鱧の皮と合わせて酢の物にする 胡瓜は伝統のなにわ野菜
幻とされていた毛馬胡瓜(けまきうり)
松嶋屋は片岡仁左衛門の屋号 浴衣の舟は恒例の「船乗り込み」の舟
大阪の「七月大歌舞伎」の開催を触れて川を周る


「一週間」 良雄(同人)vol.5
「夏帽を取れば」とをなご句友かな

鮎を食ふ尻尾腹から頭から

まだ見ゆる子に幸多し蛍かな

汗の句に明日のタオルを選びけり

うとうとと昼寝懐かし幼稚園

掬ひ飲むやつと出てゐる泉かな

焼酎やただいま言ひつ腹に注ぐ

字句補足説明
順番に 夏帽(なつぼう)鮎 蛍 汗 昼寝 焼酎が夏の季語


「玉葱」 はつを(同人)vol.3
新玉葱連れて吹田の句会かな

大玉葱播磨の土も付けしまゝ

赤玉葱皮剥くほどに紅ほのか

奥の細道の旅の途中 
月山八合目の山小屋で同宿した東松島の夫婦に新玉葱を送る

松島を見舞ふ玉葱送り出す

チャグチャグ馬コの新聞記事を見て
チャグチャグ馬コ被災のわらべ鞍に笑み

字句補足説明
順番に 玉葱(たまねぎ)新も大も赤も全て チャグチャグ馬コ が当季季語
今回から同人欄のみ前書を付すことを解禁しました

<講評>
茶柱句会主宰 あきら(茶柱ツイッタ−句会代表同人)
今回の参加者は5名(85名)参加句数15句(235句)( )内は累計
神奈川のみゆきさんが<端居>と<冷蔵庫の句>で復帰
冷蔵庫は年中 同じ表情で台所にある が歳時記では夏の季語
あまり ナルホドとうなる句にお目にかからない題材
作者も苦心された様子 説明になっては句として面白くない
冷蔵庫の中身は毎日のように入れ替わる 
そのたびに<のぞきのぞかれ>と感じる
作者の実感に基づく言葉の発見によって一句になった
原句には結婚以来20余年の期間を回顧する拘りがあった 
これを持ち出すと俳句の器に納まりきらない 
俳句では捨てる部分の多さがコクになることが多い
下五の五音でさらりと表現 これによって佳句となった
<端居して/視線合はさぬ間がら>の句 
それだけで端居している二人の間がらが伝わってくる佳句 
言い尽くさず多くを読み手に委ねているところがいい
端居(はしゐ)とは家屋の端近く出ていること 
とくに 夏の夕方 涼を求めて縁側などにいること(広辞苑)
夏の季語の中でも名作の部類
同人の田所良雄さん<色白の>の句 兼題の簾を詠まれた
伊予簾(いよすだれ)は細長い篠(しの)で編んだ上等の簾
伊予簾の奥の色白の人となると つい「深窓の麗人」が思い浮かぶ
<朝行けば>の句 デスクの上に団扇が置かれている 
ただその心遣いだけで涼し気 余分なことを一切述べないところが俳句の勘所 
同じ団扇でも 同人のはつをさんのは 大津絵(おほつゑ)の雷神の団扇
大津絵は 近世初期より大津の三井寺辺で売り出された民衆絵画(広辞苑)
風刺が利いた明快な戯画風のものが道中土産として人気を博した
この雷神様もその一つだろうか はつをさんの個性が滲み出ている
<田植機で余呉湖一枚/小半日>の句
余呉湖(よごこ)は琵琶湖の北端にある 琵琶湖のホクロのような小さな湖
湖の岸まで水田になっている
農作業をされるはつをさんによると たんなる比喩でなく 最新の田植機なら
本当に余呉湖くらいなら小半日で植え終わる 自負がこめられているとのこと
同人欄ではいろんな玉葱(たまねぎ)を詠まれた
新玉葱も大玉葱も赤玉葱も実際に育てた実感がものをいう佳句
鈴鹿市の天白さん脱皮の一句でますます快調
兼題の朝曇は 夏の暑くなる日の朝の曇ったような空模様をいう
その先行きが思いやられる不安な様相を 
造影剤を飲んだ作者自身の心境と取り合わせ佳句とされた 重い一句
<軒簾の影が揺れし波の音>が原句だったが中七の調子が悪い 
視覚から入って下五でさっと聴覚に転じる構成は 
作者の才能の冴えを感じさせる
上五の字余りは慣例で佳しとされるので 句意を尊重しつつ 三段切れも回避
<軒簾の影揺れゐたり/波の音>と添削した
天白さんは 猛烈に俳句のみならずいろんな分野の勉強をされている
次回の作品がますます期待される

「切れ」は俳句の大切な要素(詠み手にも読み手にも)
これで終わりというほど生易しくはない 手強い課題 
折に触れて自得するまで学び抜かねばならない 胸突き八丁
茶柱句会のバックナンバ−「井上あきら習作篇 その四十五」の
切れの解説をご参照あれ「切れ」が分れば <俳句が100倍楽しくなる>


茶柱句会第三部「第19回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
7月8日〜7月15日締め切り7月22日掲載(予定)
兼題は片蔭(かたかげ)沙羅の花(しゃらのはな)滝
あるいは自由題(当季)でご参加あれ 1人3句以内(1ツイ−ト3句以内)
震災復旧等の影響で掲載日程が変ることもありますのでご了承下さいませ

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