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井上あきら習作篇 その五十一 当季雑詠


「彼岸会」
花を先づ白木蓮は潔く


白酒の姫らと僕らマツコリ派


啓蟄やアラビア文字の縺れをり


お水取り観音悔過の極まりき


彼岸会や日想観の丘の香


西行忌新暦により合点せん


春塵に花びら混ぜん万華鏡




<字句補足説明>
俳句という作品には作者の署名責任はあっても 説明責任は不要
あくまでも読む人の便宜のために 字句補足説明を掲載しています
【本稿の季語の説明についてはその多くを
インタ−ネット歳時記「季語と歳時記 5000語検索サイト」
http://kigosai.sub.jp/ に掲載された内容を参照しています
旧暦関係の説明には畏友・松村賢治編著「和のくらし・旧暦入門」
(洋泉社MOOK)にその多くをよっています
広辞苑によるものは 末尾に(広辞苑)と表示しています】
*
弥生・三月は春を寿ぐ行事が目白押し
三日は桃の節句 雛祭り
六日は二十四節気の啓蟄(けいちつ)
蟄虫 すなわち冬ごもりの虫がはい出る意(広辞苑)
十二日から奈良東大寺二月堂 お水取りが始まる

今回の主題は「彼岸会」(ひがんゑ)
彼岸は彼岸会の略で春と秋の年二回
<春彼岸>と断らなくても 春の季語とする慣習
春なら春分(二十一日)を中心にした七日間が春のお彼岸

「白木蓮」(はくもくれん)が春の季語
春の魁はなんといっても梅の花だが
桜が開花するまでは白木蓮
葉よりも先に 花を咲かせるところは潔く
山桜とも似ている
より野生種に近いからだろうか
すでに 枝の先端にポンポンと上向きの蕾をつけている

「白酒」(しろざけ)が春の季語 
粘りのある白濁した酒
蒸した糯米(もちごめ)と米麹(こめこうじ)
とを味醂または清酒 焼酎に混和して発酵させ 
後にすりつぶして造る 甘味豊かで一種特有の香気がある 
多く雛祭に用いる(広辞苑)
甘酒として知られている こちらは女性に
一方 マッコリは韓国の伝統的な大衆酒で男性が 
(マツ+コルダ)=(粗雑に+濾す)という意味の命名
日本でいうと「どぶろく」のような粗雑な濁酒(Wikipedia)
白酒とよく似たところもある

「啓蟄」(けいちつ)が春の季語
啓蟄のにょろにょろ感がアラビア文字に似ている
このアラビア語圏が騒然
アラビア文字が縺れ(もつれ)に縺れている
インタ−ネットが発達し
住民が一斉蜂起 独裁体制が崩壊
チュニジアに端を発しエジプト リビア・・・
啓蟄どころか 大揺籃は止まることをしらない

「お水取り」(おみずとり)が春の季語
一日から十四日まで奈良 東大寺二月堂で行われる修二会(しゅにえ)
天平勝宝四年(752年)以来 千数百年途絶えることなく続けられる
本尊の十一面観音菩薩に天下泰平 五穀豊穣 万民快楽などを願い
練行衆が人々に代わって懺悔の行をする 観音悔過(かんのんけか)
当時 東大寺は国立の寺院 僧侶は国家公務員だった
堂内の様子は知るよしもないが 仄聞するに凄まじいものらしい
外部から眺める籠松明の篝火も最高潮に達して
十三日未明におこなわれる儀式が「お水取り」
若狭井の香水をご本尊にお供えして
この儀式で修二会が極まるように思う
関西ではこの時期 一段と冷え込む
それが過ぎれば 本格的な春

「彼岸会」(ひがんゑ)が春の季語
日想観(につさうくわん)とは観無量寿経に
説かれる十六観の第一 西に没する太陽を
観察して 西方の極楽浄土を想い浮かべる修行(広辞苑)
彼岸とは河の向う岸 生死の海を渡って到達する
終局・理想・悟りの世界 涅槃(広辞苑)
夕陽丘の南端にある一心寺がその本拠地
日想観の丘とは上町台地の夕陽丘のこと
春分の日(彼岸の中日)は太陽が真西に沈むのでうってつけ
一帯の崖地に寺院がずらりと並び 線香の煙が絶えない

「西行忌」(さいぎやうき)が春の季語 
西行の辞世の歌ともいえる
<ねがはくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃>
この歌の通り 1190年旧暦二月十六日釈迦入滅(旧涅槃会)の翌日
享年七十三歳で花の下での大往生
忌日は実際の忌日より一日早い旧暦二月十五日とされた(季語歳)
如月(きさらぎ)は旧暦二月の異称
望月(もちづき)は十五日の満月
現在の二月十五日では 桜の花は咲いていないが
明治維新後 新たに採用された新暦法による
新暦(しんごよみ)だと今年は三月二十日 桜も満開の頃だろうか
と合点する句は理屈の句

「春塵」(しゅんじん)が春の季語
春風に舞い立つ塵のこと
万華鏡は 三枚の鏡を三角柱に組み 色紙の小さなものを
入れて回しながら小さな孔から覗くと美しい模様が見える(広辞苑)
春塵といえども 塵は塵 花びらのひとつも入れないと映えない 
(344句目)

<お知らせ>
一億人の俳句という向きもありますが 話半分 五千万人の俳句
俳句は日本語の国民的文芸の一形式 <読めれば詠める─俳句を遊ぼ─>
2010年(平成22年)10月から
twitter上に五千万人の「─俳句を遊ぼ─茶柱ツイッタ−句会」を開始
http://twitter.com/haijin575 から投句できます
@haijin575へのダイレクトメッセ−ジからの参加でも構いません

ハガキに句を書いて投句する方法は いまも全国的な俳句結社で実践中
もとはといえば 明治時代に新しくできた郵便制度を一早く取り入れた
正岡子規のアイデア「郵便俳句」
その進取の気風に倣い ツイッタ−時代の全国句会「茶柱ツイッタ−句会」
ささやかな参加人数ながら 愛媛県 兵庫県 大阪府 愛知県 神奈川県 
東京都など全国からご参加いただいて 今回は「第八回」目
誰でも 何時でも 何処からでも 気軽に参加できる句会です
参加費用は無料です
俳句の優劣を競うコンク−ルの場ではありませんので
審査員も選者もいません 投句されたまま掲載されます
順位をつけたり 特別な賞を授与することもありません(添削もしません)
俳句は生活に「張合い」をもたらしてくれます
もっと大袈裟にいえば「生き甲斐」にすらなり得ます
(俳句の基本ル−ルだけ守り)上手 下手はさておき
俳句を日常生活のレベルで詠んだり・読んだりして─俳句を遊ぼ─
読む(鑑賞)だけでも立派な参加者 ツイッタ−でご感想をお知らせ下さい
今年から 読み手の感想(鑑賞文)欄を設けます
ル−ルは運営しながら随時定めてゆきますが
ル−ルがあるから 皆が共通に楽しめる(遊べる)
楽しむために 俳句といえる基本的ル−ルとして ただ一点

<五七五 十七音の中に(主たる)季語を一つ入れること>と定めます

ツイッタ−に不慣れな家族 友人 知人の依頼による代筆ならぬ
「代ツイッタ−」は(代ツ)と末尾に書き添えていただければ可とします

季語の判定については
インタ−ネット歳時記の
「季語と歳時記 5000語検索サイト」掲載の解釈を基本とします
http://kigosai.sub.jp/

「茶柱ツイッタ−句会」参加者で ご希望があれば その力量に応じて
「個人・茶柱ツイッタ−句作展」(不定期)を開催することも検討中 
主宰にお気軽にご相談下さいませ

将来 投句作品の全句集を印刷冊子化あるいは
電子書籍化することもあり得ますので
作品の著作権は主催者に帰属することをご承諾いただきます 以上


<鑑賞(読者の欄)>
●茶柱句会その五十について(加古川 初男)2011.2.24.
<春の雪>の句、今年は珍しく春の雪に恵まれて、
俳句の題材として風雅な趣を提供してくれます。
良い季語を良いタイミングで出されましたね。
柔らかい春の雪に紅い南天の実が良く映えますね。
<料峭や>の句、不思議なことに、歳を重ねる程に
、鮮やかな記憶として蘇ってくることが有ります。
苦しいことや、あまり良くない思い出などは忘れて、
楽しいことだけ残るというのは嘘だと思う。
夢と同じで醒めてやれやれと思うことが有るように。
この句、切れがよく効いていると思います。
<ビル街を>の句、ガイドブックに載る古道は、山村の小路。意外性に軍配。


─俳句を遊ぼ─
「第十回茶柱ツイッタ−句会応募作一覧」(着信順 投句のまま)
2月22日募集〜2月28日締め切り  3月8日掲載
兼題「弥生(やよひ)」「雛祭(ひなまつり)」
「白酒」「白魚(しろうお)」「残雪」「雪解(ゆきどけ・ゆきげ)」
「水温む(みずぬるむ)」「蕗の薹(ふきのたう)」「草餅」



道化師のパソコン起動春の宵(大阪市 あきら)

水温むポンポン船の洗ふ岸(大阪市 あきら)

長閑けしやすぐ出(いで)きたる遺失物(大阪市 あきら)

雛祭り夜中こっそりざわめけり(奈良市 たいぞん)

仏にも男(お)と女(め)とありや雛の顔(奈良市 たいぞん)

雪解けて夢の覚めくる心地せり(奈良市 たいぞん)

八重梅のつぼみに被く春の雪(加古郡 はつを)(代ツ)

春の雪なれど狭庭の雪明り(加古郡 はつを)(代ツ)

さみしさもぬぎすててゆくふきのたう(加古郡 はつを)(代ツ)

朝遅き女の如し水温む(横浜市 十巣)

汲むといふ語もやはらかき白魚漁(横浜市 十巣)

露の玉うければあふる雛の盃(横浜市 十巣)

白酒の病人食や賑やかせ(西条市 田所良雄)

名水を汲みて百日水温む(西条市 田所良雄)

草餅や姪が作りてやや小さき(西条市 田所良雄)

雪とけて新たな季節早来たり(一宮市 俳句(ry )

忘れない祖母の命日雛祭(一宮市 俳句(ry )


<総評>

─俳句を遊ぼ─「茶柱ツイッタ−句会」主宰 あきら

今回の参加者は6名(46)参加句数17句(127)でした( )内の数字は累計
遅遅とした亀の歩みながらも半年で十回を数え 累計句数127句
一気に春めいた句会となりました
初参加は(奈良市 たいぞん)さん 日蓮宗のお坊さん
それかあらぬか 句に陰翳があり個性的 次回にまた期待したい
句中の「切れ」を効かすと もっと句意が明瞭になるはず
加古郡のはつをさん<八重の梅>句 蕾に被く(かづく=かぶる)春の雪
<春の雪>の句と春の雪を二句 いづれも儚さがあって美しい
狭庭(さには)は読んで字のごとし 小さな庭にも春の雪明り
<さみしさも>はすべてひらがなの蕗の薹の句 「寂しさも脱ぎ捨てる」
ととらえて滋味深い一句にされた 写生+サムシングの秀句
横浜市の十巣さんの句 起き抜けのなま温い女と水温むを取り合わせた
女性ならではの一句 春の艶かしさ
<汲むといふ>の句 白魚漁の春の悦びが やはらかく描けた
<雛の盃>の句も春の悦びの一句
西条市の田所良雄さん 味わいの春の三句
<名水を>の句 百日といえばざっと三ヶ月前 
つまり今年の若水だろうか
世の中は騒然としているが 若水も温む春が静かに訪れている
けっして声高にならず 静かに時間経過の事実だけを伝える
良雄さんの恬淡としたところが じつに俳人と俳句の功徳 
一宮市の俳句(ryさん 二句で連続参加継続中
俳句には工夫の余地が多々あるが
飄然とした詠みぶりは理屈を寄せつけない もはや個性
神奈川のみゆきさんは都合で休会 
素直に俳句の基礎を猛勉強中 次回の参加に期待されます

インタ−ネットは実に立派な俳句学校
意欲さえあれば 学ぶにこと欠きません
いくつかご紹介しておきます
茶柱横町の茶柱句会もその一つ
その茶柱句会の冒頭にも示している
一、インタ−ネット歳時記「季語と歳時記 5000語検索サイト」(季語歳)
から検索 古今の例句と季語の分類や解説がじつに適切
二、清水哲雄の「増殖する俳句歳時記」(増俳)から検索
現代俳句作品とその解説が別の俳人によって簡潔に述べられている
関連例句にも触れ 作品も解説も一流 読むだけでも楽しい
まず この二件をお気に入りに登録 折に触れて小まめに学ぶ
ツイッタ−上では 芭蕉 蕪村 正岡子規 名句 
各Botをフォロ−しておくと定期的に作品が配信され 
身近な名句ツイッタ−になる
自由律の山頭火 短歌では定家 良寛 与謝野晶子
詩なら中原中也 寺山修司などなど枚挙にいとまがない 
古志 小熊座 e船団など
既存の俳句結社のHPも勉強になります
他にも現代俳人のブログなどがあるので 個別にご自由に発掘されたい
質問があれば当「茶柱ツイッタ−句会」主宰のあきらへお気軽にどうぞ
ここが皆様のホ−ムクラブ


「第十一回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
3月8日募集〜3月15日締め切り  3月22日発表
兼題は特に設けず のびのび自由題 当季(春)とします
季語はインタ−ネット俳句学校から検索して下さい
投句はお一人三句まで(1ツイ−ト3句まで)3月15日着信可
春を感じて─俳句を遊ぼ─



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井上 明関連サイトリンク
暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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