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井上あきら習作篇 その五十 当季雑詠


「春の雪」
冴返る口縄坂の寺の間


春浅し崖を行くJR(ジェイ・ア−ル)


料峭や消したき記憶蘇る


武者震ひ菫は宙に知ろしめす


朧月水晶橋の人と逢ふ


ビル街を熊野古道や春の雪


春の雪赤い実埋めゐたりけり




<字句補足説明>
【本稿の季語の説明についてはその多くを
インタ−ネット歳時記「季語と歳時記 5000語検索サイト」
http://kigosai.sub.jp/ に掲載された内容を参照しています
旧暦関係の説明には畏友・松村賢治編著「和のくらし・旧暦入門」
(洋泉社MOOK)にその多くをよっています
広辞苑によるものは 末尾に(広辞苑)と表示しています】
*
二月四日は立春 歳時記ではこれより春の部に

今回の主題は「春の雪」(はるのゆき)
雪は冬の代表的な季語
立春を過ぎてから降る雪は
<春の雪>と断って 春の季語とする慣習
関東以西でも二月十一日(建国記念日)珍しく大雪に

「冴返る」(さえかへる)が春の季語
春さき 暖かくなりかけたと思うと
寒さが戻ってくること 類語に余寒(よかん)がある
暖かさを感じたあとで より冴え冴えとした感じになる
天王寺七坂は上町台地の西の崖にある
南端の逢坂から北端の源聖寺坂まで
崖沿いに社寺が並んでいる
寺の名のつく坂が多いが
口縄(くちなわ=蛇)坂は見かけで名付けられた
坂の途中 寺の間(あひ)で感じた冴え(寒さ)

「春浅し」(はるあさし)が春の季語 早春の季語
「崖」(がけ)は「きりぎし」と読む
JR関西本線はかつて奈良と名古屋を結ぶ幹線だった 
いまでは 加茂と伊賀上野を結ぶ鄙びた単線
木津川沿いの急峻な崖はスリル満点

「料峭」(れうせう)が春の季語
春寒 春風が肌にうすら寒く感じられるさま(広辞苑)
頭は冴えて さまざまな記憶が蘇ってくる
ことに忘れたい記憶が蘇ってくるのが困る
「峭」(せう)という字 漢字源によると
山が細くとがったさま 山が鋭くとがって登れないさま
けわしい きびしい 春寒料峭(春さきの寒さがきびしい)
ちょうど今頃にぴったりの表現

菫(すみれ)が春の季語
品種改良された三色スミレ(パンジ−)
は派手で大きな花をつける
原種の菫は小さく生きる道を選んだ
山路で風に揺れている様は じつに可憐(かれん)だが
武者震いして宙(そら)に知ろしめす
この<知ろしめす>というフレ−ズ 大昔
上田敏訳詩ロバアト・ブラウニング「春の朝」で学んだ
時は春/日は朝(あした)/朝は七時/
片岡に露みちて/揚雲雀名のりいで/蝸牛枝に這ひ/
神、そらに知ろしめす。/すべて世はことも無し。
から得た「知る」の尊敬語「しろす」よりさらに敬意の強い言い方
お知りになる ご存知である(広辞苑)
小さな菫は神の化身

「朧月」(おぼろづき)が春の季語
春先の浮遊物や大気の粒子が緩んで朧(おぼろ)ぼんやりと見える月
水晶橋(すいしやうばし)は堂島川にある可動堰の名称
水をせき止めて潮の干満を利用して一気に放流する堰(せき)
1929年(昭和4年)河川の水質浄化のために設置
橋の機能は無粋なものながら デザインはモダニズムの優等生
一段高く舞台のようにもみえる

「春の雪」(はるのゆき)が春の季語  二句
熊野街道(古道)は熊野大社へ詣でる古代の参詣道
その賑わいは<蟻の熊野詣で>と称えられた
京から下りは淀川を舟で毛馬を経て
旧淀川(現大川)の天満 八軒家の船着場まで
そこから南へ陸路 上町台地を行く
いまは中央区のビル街の上町筋を四天王寺に向かい
さらに南の住吉大社とのほぼ中間点に位置する
阿倍野の王子神社(一番王子)へと続く
京から摂津 和泉を経て熊野大社へ到る
熊野街道には九十九の王子(熊野大社の末社)がある
この王子 街道に設けられた休憩所兼遥拝所
陰陽師の阿倍晴明(あべのせいめい)神社に隣接

赤い実は 冬に成る南天の実の名残
てんてんと散る血のようにも見える 儚い雪だからこそ情趣が深い
2月14日 大阪も白い朝を迎えた
阪神高速道路は全線通行止め
「春の雪」といえば三島由紀夫の「豊饒の海」に及ぶ
1965年〜1967年に雑誌「新潮」に連載 三島文学の真骨頂
物語は大正時代を舞台に 貴族階級で実際に起こった禁断の恋(スキャンダル)
映画化は 2005年に行定勲監督 第29回日本アカデミ−賞を総ナメ 
主題歌は宇多田ヒカル「Be My Last」だった
(337句目)

<お知らせ>
一億人の俳句という向きもありますが 話半分 五千万人の俳句
俳句は日本語の国民的文芸の一形式 <読めれば詠める─俳句を遊ぼ─>
2010年(平成22年)10月から
twitter上に五千万人の「─俳句を遊ぼ─茶柱ツイッタ−句会」を開始
http://twitter.com/haijin575 から投句できます
@haijin575へのダイレクトメッセ−ジからの参加でも構いません

ハガキに句を書いて投句する方法は いまも全国的な俳句結社で実践中
もとはといえば 明治時代に新しくできた郵便制度を一早く取り入れた
正岡子規のアイデア「郵便俳句」
その進取の気風に倣い ツイッタ−時代の全国句会「茶柱ツイッタ−句会」
ささやかな参加人数ながら 愛媛県 兵庫県 大阪府 愛知県 神奈川県 
東京都など全国からご参加いただいて 今回は「第八回」目
誰でも 何時でも 何処からでも 気軽に参加できる句会です
参加費用は無料です
俳句の優劣を競うコンク−ルの場ではありませんので
審査員も選者もいません 投句されたまま掲載されます
順位をつけたり 特別な賞を授与することもありません(添削もしません)
俳句は生活に「張合い」をもたらしてくれます
もっと大袈裟にいえば「生き甲斐」にすらなり得ます
(俳句の基本ル−ルだけ守り)上手 下手はさておき
俳句を日常生活のレベルで詠んだり・読んだりして─俳句を遊ぼ─
読む(鑑賞)だけでも立派な参加者 ツイッタ−でご感想をお知らせ下さい
今年から 読み手の感想(鑑賞文)欄を設けます
ル−ルは運営しながら随時定めてゆきますが
ル−ルがあるから 皆が共通に楽しめる(遊べる)
楽しむために 俳句といえる基本的ル−ルとして ただ一点

<五七五 十七音の中に(主たる)季語を一つ入れること>と定めます

ツイッタ−に不慣れな家族 友人 知人の依頼による代筆ならぬ
「代ツイッタ−」は(代ツ)と末尾に書き添えていただければ可とします

季語の判定については
インタ−ネット歳時記の
「季語と歳時記 5000語検索サイト」掲載の解釈を基本とします
http://kigosai.sub.jp/

「茶柱ツイッタ−句会」参加者で ご希望があれば その力量に応じて
「個人・茶柱ツイッタ−句作展」(不定期)を開催することも検討中 
主宰にお気軽にご相談下さいませ

将来 投句作品の全句集を印刷冊子化あるいは
電子書籍化することもあり得ますので
作品の著作権は主催者に帰属することをご承諾いただきます 以上


<鑑賞(読者の欄)>
●茶柱句会その四十九について(伊賀上野 輝雄)2011.2.10.
<北壁に>の句、観衆の目を釘付けにして、一見ぎこちなく、
ゆっくり登ってゆくロボット。
一方ユリカモメは群れて川面を滑らかに飛び交っている。
というような情景が思い浮びます。その対比が面白い。
<息白し>の句、うまく「動」をとらえているなあと思いました。
<節分や>の句、昔からの行事にも時代の流れを感じる句です。
ありがとうございました。

●茶柱句会その四十九について
例によって私の好きな句を。(加古川 初男)2011.2.13.
<北壁に>の句、中国の万博でビルを昇降する
業務用のロボットに人気が集ったと聞きます。
この分野の発展は目覚しいですね。
介護・防災・組み立て等々の分野の発展が、
長生きする事の楽しみのひとつです。
私も仕事柄、ガス導管の中を自在に、
TV画面に内面の情報を映し出すシステム採用の
プロジェクトに参加したことがあります。
また近年著しく性能アップしたと聞いています。
ロボットと鴎との取り合わせが良いと思います。
<半丁の>の句、字句解説とあわせてみて、
なかなかユニ−クな句ですね。
<節分や>の句、コンビニ万能の時代、
こんどは何を売ってくれるのか。
時代を映す「流行」の一句。


─俳句を遊ぼ─
「第九回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」(着信順 投句のまま)
2月8日募集〜2月15日締め切り 2月22日発表
一人三句まで(1ツイ−ト3句まで)
兼題「襟巻」「手袋」「マスク」「熱燗」「鰭酒」「寒鰤(かんぶり)」
「暖房」「北風(きたかぜ・きた)」「豆播」「牡蠣(かき)」
「松葉蟹」「葱(ねぎ)」「大根(たいこん・だいこ)」「白菜」
「ラグビ−」「ラガ−」
あるいは自由題 当季(冬)
<と提示して募集しましたが 既に立春を過ぎており通知不徹底のままながら
自由題 当季(春)を加えました 失礼しました>



<俳句の部>

苗床や朋はブログを自慢せり(大阪市 あきら)

旧正や朋と爆竹点火なう(大阪市 あきら)

囀りや幾千万の端末機(大阪市 あきら)

白菜のとろけてをりぬ長話(横浜市 十巣)

すつぴんに葱の香しみるけものみち(横浜市 十巣)

漆黒のなか大根は肥りけり(横浜市 十巣)

白菜のみなうずくまる朝の霜(加古郡 はつを)(代ツ)

おみやげに切干大根ひとつかみ(加古郡 はつを)(代ツ)

麦踏みを習ふわらんべ醤油町(加古郡 はつを)(代ツ)
 
襟巻といふ語彙知らぬ甥子かな(神奈川 みゆき)

店先の大根の肌のつややかさ(神奈川 みゆき)

伊豆箱根富士ひろがりて春の凪(神奈川 みゆき)

春近しふと木を見れば薄ピンク(一宮市 俳句(ry )

<その他の部>

食前にキチンと揚げようカキフライ(一宮市 俳句(ry )


<総評>

─俳句を遊ぼ─「茶柱ツイッタ−句会」主宰 あきら

今回の参加者は4名(40)参加句数14句(110)でした( )内の数字は累計
九回目で累計句数110句 一里塚の百句超え
初参加は(神奈川 みゆき)さん ツイッタ−上でも句を発表中
一宮市の俳句(ryさんは飄々と連続参加継続中
西条市の田所良雄さんは久々の休会 次回のご参加に期待
今回は 立春過ぎなのに 兼題に「冬」を引きずってやや混乱
そこで冬と春の句が同居する句会に

あきらの句 「ブログ」や「ツイッタ−(囀り)」「なう」の使用に挑戦
新しい言葉を俳句に採りいれて どう活かせるかには課題が残る
横浜市の十巣さんの冬野菜との距離感
<白菜の>の句 野菜を調理する立場が垣間見える
<すつぴんに葱の香しみるけもの道>には詩人の眼差し
加古郡のはつをさんの野菜にはいつも実感がこもっている
<白菜>の句 野菜を栽培する人の眼差しが優しい
俳句に現れてくる白菜との関係も人さまざま 
<醤油町>ははつをさんのご近所の揖保郡たつの市
ヒガシマル醤油発祥の地 播州龍野はいまも醤油の産地
大豆と小麦とで作った麹と食塩水とを原料に醸造(広辞苑)
「わらんべ」は「童」のこと 踏んでいる麦は醤油の原料になる
<ひとつかみ>切干大根だから「ひと掴み」にされる
いずれもベテランの味わい深い句
初参加の神奈川のみゆきさん<襟巻き>という言葉を知らない甥への軽い驚き
<伊豆箱根>の句「春の凪」の下五でゆったりと穏やかな相模湾景を描かれた
連続参加継続中の一宮市の俳句(ryさん
<カキフライ>の句 型のうえでは俳句といえなくもないが 残念 
一茶<むまさうな雪がふうはりふはり哉>などご参考に

俳句は心の中の呟きを 端的に日本語にのせて表現するもの
あれこれ説明をせず 結論だけをズバリという
それができるようになるには 学びつつ表現する努力が必要
沢山作って沢山捨てる
でも その努力が直ぐに報われる保証はない
思いを端的な日本語で表現する努力を続けてゆくと
ある日突然 表現できるようになる
その感動の一瞬がくることを信じて
努力した人だけが 俳句という表現を自得できる


「第十回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
2月22日募集〜2月28日締め切り 3月8日発表
兼題は「弥生(やよひ)」「雛祭(ひなまつり)」
「白酒」「白魚(しろうを)」「残雪」「雪解(ゆきどけ・ゆきげ)」
「水温む(みずぬるむ)」「蕗の薹(ふきのたう)」「草餅」
いずれも当季(春)の季語ですので一句に一つを選んで詠みこんで下さい
あるいは自由題(当季・春)で詠まれても結構です
投句はお一人三句まで(1ツイ−ト3句まで)2月28日着信可
みなさん 春を先取りして ─俳句を遊ぼ─



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暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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