道草其の三十六
みらい -13-
「どうして黙っているの?」
スコピィの潜水艇が
青い海の中を進んでゆく
少年は初めて見る海中の世界に心をときめかしながらも
潜水艇に乗り込んでから一言も喋っていない
スコピィの事が気がかりになっていた
「うん」
少年の問いに
スコピィは重い口を開いた
「母さんがね
何故怒らなかったんだろうって
ずっと考えていたんだ」
「怒らなかった?」
「いつもの母さんなら
潜水艇に乗って出かけようとすると
ものすごく怒って
出かけるのを止(や)めさせようとするんだけど」
「僕がいたから……」
「……
君の父さんと母さんを捜しに行くって言った時の
母さんの目は
怒っている時の目じゃなくて
悲しいのか嬉しいのかわからない目をしていた
母さんは
母さんはいくら怒っても
僕がいつか一人で父さんを捜しに行くって
わかっているよって
……」
突然スコピィの目が輝き始めた
「ほら トシだよ」
二人の前に巨大な建物の一群が姿を現した
<つづく>
<じゅんぺい>
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