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道草其の三十九
みらい -16-

「向こうは朝で こっちは夜?」

少年が驚いてそう聞くと
リトマは楽しそうに言った

「ふふ すごいだろ バットは光が大好物なんだ」



リトマ マルコ コルネ ネルタと
少年を乗せた大きなコウモリは
光を食べて闇を作りながら
大空を飛んでいく

「これはママから聞いた話だけど
 ずっと ずーっと昔はね この世界は闇だけでできていたんだよ
 ところがある日 ちっちゃな点のような何かが大爆発をおこして
 光の世界がうまれたんだ
 光はこの世界に満ちて次々と闇を殺していった
 僕らの種族はあわてて光の届かない
 闇だけの世界へ逃げ込んで
 今も生き続けているんだ」

「光の中にいくと死んでしまうの?」
「うん あっと言う間にね
 あっ そうだ 忘れないうちにこれを渡しておくよ
 ほらっ」

そう言ってリトマが少年に差し出したのは
小さな紙の箱だった

「これをこうやって開けると
 中に小さな棒がたくさん入っているだろ
 その棒を1本とりだして
 頭の黒い部分を箱の横にこすりつけると
 見て! 小さな闇が棒の先に現れるんだ」

「すごい!」



「工場に着いたらそれで君とはお別れだけど
 困ったときは箱を開けて
 今僕がやったみたいに闇を作ったら
 闇に向かって
 僕らの名前を呼んで
 どんなに遠く離れていても
 その声ははっきり聞こえるから
 バットに乗って君のところにゆくよ」

「…ありがとう」

少年は呟くようにリトマにお礼を言った
その時マルコが叫んだ

「工場だ! 工場に着いたよ!」


<つづく>

<じゅんぺい>

谷口純平想像力工房
http://sowzow.com/

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