道草其の三十二
みらい -9-
「ほら、見て!」
スコピィが一枚の絵を差し出した
「僕の家さ! すごいだろ!」
手作りのケーキと
温かなココアをごちそうになった後
少年はスコピィに導かれて
彼の部屋に行った
窓が部屋のぐるりを囲んでいる
窓の外は海で
たくさんの魚たちが行きかっている
「この家はね、僕のお父さんがぜーんぶ作ったんだ」
「お父さんて、何?」
少年は聞いた
「お父さんて、お父さんに決まってるじゃないか!
おかしな事、聞かないでよ
お父さんとお母さんがいて、僕が生まれたんだよ」
少年は黙っていた
ふと、絵を見ると
魚の形をした乗り物に
誰かが乗っている事に気付き
聞いた
「これが、お父さん?」
スコピィは少し間をおいて
答えた
「そうだよ」
そう言うと、ひったくるように
少年から絵を取り上げると
背を向けて小さな声でポツリとつぶやいた
「今はいないけどね」
<つづく>
<じゅんぺい>
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