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其の五十八 車内アナウンス
これは意味があるのだろうか、と甚だ疑問な事柄がある。
電車に乗っていてふと耳にしたアナウンスのことである。
「押し合わず順序よくお降りください」と云ふ。
「おお!そうか、それは知らなかった。押さずに順番を待とう」
と、誰かが気付き、一人のマナーがよくなる。
日々の積み重ねで皆の理解が進み数年の後、
全体の乗降がスムーズになるのだろうか?
言っていることは至極まともで当たり前のことであるが
今更言われたところで皆大人であるから
その程度はわかっているのではないか。
わかっていても、其れは其れ此れは此れ、
と頭の手前で門前払いにあっている。
聞こえてはいるけれども
敢えて「聞く」迄に辿り着かない気がするのである。
駅名、行先、遅れの原因などには
耳をそばだてるがそれ以外の車内アナウンスは、
走行音と同じく脳にも耳にも入っていかないのではないか。
または全くの通り抜けだ。
さて、ではどうするのが良いか。
「皆様、二十人が一斉に出口に殺到した場合と、
譲り合って出口を出た場合とを比較すると
殺到した場合よりも譲り合った方が
4.8秒ほど早く全員が出ることができます」
とでも言ってみると効果的なのかも知れない。
データ作戦と雖も繰り返し流れてきた日には
矢張り耳が慣れてしまうのかしらん。
因みに上記データは出鱈目である。
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