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其の五十五 落語家
そんなことが許されるのかは
置いておいて、
お婆さんになったらやりたいことの一つに
落語家に弟子入りしたい。
私は物事全般に緩い考え方の人間だと思うのだが
落語家は男がいいと思っている。
女相撲でも女歌舞伎でも甲子園でも男宝塚でも男オバさんでも
どちらでも好きなようにやればいいのである、
と思っているのだけれども。
落語だけは矢張り男がいいのです。
女の落語家で面白い人や達者な人がいるのは承知だけれど。
なんだかここだけは「蜂が苦手」なのと同じ
強情な番人がいて譲れない気がしている。
お婆さんは女ぢやないから
習うつもりなのかと言われたら、それは違う。
お婆さんとは言え女は女。
水分油分が飛んで密度は逆に濃いかもしれない。
唯、来世で男に生まれたときのために練習
をしておきたいのである。
生まれ変わったら記憶なんて
綺麗さっぱり忘れているぞと脅されても構わない。
したいからしとくだけのことだ。
しかも弟子入りする師匠はもう決めている。
喬太郎師匠だ。
年齢がほぼ同い年なのが気掛かりだが仕方ない。
現存する当代一の名人だと思い決めているのだから仕方ない。
それまでお互い死にませんように。
南無阿弥陀南無阿弥陀。
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