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其の五十六 九州人
テレビを見ていたら
九州出身のタモリが
「九州の人は必ず『我家の祖先は平家の落武者だ』と言う」
と言っていたので、思わず笑ってしまった。
もう先に亡くなった私の父が九州人であった。
父の生まれた家は九州の山奥にあった。
父は「うちの先祖は平家の落武者であった。
だから代々白い餅は食べないのである」と確かに言っていた。
とはいえ先祖に義理立てするわけでもなく
正月には普通に白い餅を食べていたように思うのだが。
「誰も彼も真に平家の武者なら夥しい数になる。
こんなに武者がいて何故源氏に負けたのか」
とタモリは笑っていた。
さて、母も九州人だが
此方は倒幕の時に京都から落ちてきた人々の
係わりだという話であった。
母の母である私の祖母は
「自分は元々は京都の名字帯刀が許された家の出身である」
ということを誇っていた。
残っている古い写真の中の祖母は、
裾を絡げて頬を赤く染めて宴で「おてもやん」を踊っている。
何やら矢鱈と楽しそうである。
悲哀を持ち越さない人達の
子孫に生まれてありがたいことだ。
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