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其の五十 赤鬼茶屋
「泣いた赤鬼」という有名な童話がある。
有名だと思うのだが「どんな話か知らない」という人がいる。
「では話の筋を説明してあげよう」として
途中から泣いてしまって説明にならなかったことが二度ある。
その人にとっては面前で泣かれるは、話の筋もわからないは、
で、いい迷惑である。
だから最近は「そんな話は聞いたことがない」という人がいても
極力話さないのである。
さて泣いているのが赤鬼なのか自分なのか朦朧としてくるこの話。
気に入っている箇所は赤鬼が山に一人で住んでいるというところである。
遠い山に一人で住んでいる青鬼とは時折交流があるらしい。
鬼は山に一人の存在であるから近場で親しむことはできないのである。
山に一人の鬼は尊く切ない。
其れに引き換え村人は村にわらわらと住んでいる。
遠巻きにして鬼を怖がったり噂したり覗き見たり
逃げ出したりするだけである。
気になるのは
赤鬼を怖がって近寄らない村人に対して
何故赤鬼は茶飲みに来て欲しいのか。
判らない。
何故赤鬼は村人と仲良くしたいのか。
判らない。
村人など喰ってしまうのでもなければ放って置けば良い。
寂しければ雀に餌でも撒いてやれば良いのである。
私は自分が鬼だと思っている。
そして誰かに対して村人だ。
赤鬼茶屋に行ってみたい。
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