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其の四十九 山登り

山なぞ生涯登りはしないだろうと高を括っていたのだが、
何故だか登るようになってしまった。
先導する友人は
「いやいや是は山登りとは謂わずハイキングである」と謂う。
別段、山登りに拘りはないので、ではハイキングかもしれない。
山に登るとスッとするとか頂ですこぶるいい気分だとか謂う人もいるが
私は気も晴れないし心持ちも楽しくない。
「疲れた」と言って水を飲み持って来たお菓子や弁当を喰う。
何より高いところと斜面が怖いので
途中も頂上も見晴らしなど殆ど楽しまない。
アリバイのような記念写真を撮影し出来るだけ早く下山する。
当然、下山中も周囲を眺めない。
じゃあ何が楽しくて山に登るのかと訊かれるが
何も楽しくないが登るのである。
しかも何度も登る。
登ってみるとやっぱり怖い。
「次のこの一歩は、この地べたで大丈夫なのだろうか」
「次の一踏みで転がり墜ちるかもしれないな」
どの山のどの斜面もそんな事を考えながら一歩ずつ足を運ぶ。
三メートル先しか見ていないのだが何やらそのうちに登頂する。
なんとか持ち堪えて慌てて下山である。

どの程度の高さが怖いのか判らないので、

一昨年、昨年と立て続けに富士山にも登ってみた。
登ってみるとやっぱり怖い。
斜面も岩場も低山と変わらず怖くてちっとも楽しくない。
山頂で御来光を拝むという決りらしいので
八合目で仮眠して深夜に登頂である。
周囲は当然真っ暗闇であって何も見えず此処は少しラクをした。
しかし下山の長い長いガラガラとした礫の斜面はまた苦行である。
バスに揺られ電車を乗り継ぎ家に到着してほっとする。
やっぱり山は怖い楽しくないと確信したものである。
「阿呆登山」と名付けてみた。

其の七十二
十分にご注意ください

其の七十一
一本木

其の七十
ダイヤと法灯

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