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其の四十七 ねずみ模様のパジャマ

もう何年も、いやもっと昔の十何年も前の話になるけれども
ねずみ模様のパジャマを着ていた。
何が面白いのか解らないが一面ねずみの顔だらけである。
黒い耳をしたねずみの顔を全身に纏って一日が終わるのである。
白い顔に黒い目と黒い鼻をした
不思議なねずみの顔に包まれて眠りに入るのである。

そのパジャマは揃いであって
私と連れ合いと未だ幼かった娘二人の家族四人で着ていた。
我が家は夜が更けるとねずみの顔だらけであった。
そのパジャマは私が買い求めて家族に着せていたのだ。
きっと、どうかしていたに違いない。
家族全員がねずみの顔を纏っているだけで満足な夜があったのだ。

そのパジャマは何年かすると当然乍ら古びて、
子供等の成長に伴い着られなくなり、何処かに行ってしまった。
その後にはそんな奇天烈な揃いのパジャマなど、
誰も買おうとはしなかった。

そういえばもう十年以上も
ネズミーランドに行っていないではないか。
昔は子供を連れてよく行ったものである。
せがまれてガラスの靴を買い与えたり
巨大なねずみと写真に納まったりしたことがつい先日のようだ。
そういえば隣にネズミーシーなるものも出来たそうだが、
あれとて行っていないではないか。
次に私がネズミーランドに行くときは孫と行くのだろう。
孫とお揃いのねずみのパジャマを買おう。
そう決めて私は眠りにつく。
龍年だから龍をテーマに何か書こうと思ったのだが
全く的外れもいいところである。
今年の臍も曲がった儘だ。

其の七十二
十分にご注意ください

其の七十一
一本木

其の七十
ダイヤと法灯

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