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其の四十五 ヘビの抜け殻




ヘビの抜け殻を拾った。
家に戻る山坂の途中、草むらの上に「フワリ」「ながなが」と
脱いだばかりのそれがあったのだ。
白々うっすらと半透明で頼りないゴムホースのような抜け殻。
近寄ってみると、口から頭のあたりは脱ぎ捨てた
とっくりセエタアのようにくしゅくしゅと縮まっている。
拾い上げるとしっとりしていた。

ああ。つい今しがた脱ぎ捨ててするすると草むらを抜けて行ったのだな。
くしゅくしゅを丁寧に広げてみたら、
透明な目のかたちもすっかりそのままであった。
しっぽの先端まで整っているので嬉しくなって持って帰った。
140センチメートルはあるように思う。

なぜだか知らないけど。
ヘビの抜け殻が好きで集めているのである。
誰も羨ましがらないけれども、あと三本ほども持っているのである。

一本は岩手で台所の流し台の上に落ちていた。
一本は娘の友達が田舎で拾ったものを持ってきてくれた。
そこまで私の「ヘビの抜け殻好き」は広まっていたようでありがたく頂戴した。
一本は今回拾った坂道から少し下ったあたりの草むらで数年前に拾った。
残念なことにそれは上下に千切れていた。そして今回のより若干細くて小型。

あ。
今回の抜け殻はあのときのセパレート抜け殻を置いていったヤツが成長して
再び脱ぎ捨てたものかもしれない。
なるほどそうに違いないそうであったかと旧知の間柄のように親しみが湧く。
何であれ命あるものが成長しているらしいことは喜ばしい。
会った事はないが彼がいつまでも健やかに暮らせる山でありますようにと祈る。

其の七十二
十分にご注意ください

其の七十一
一本木

其の七十
ダイヤと法灯

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