其の十九
理由
自分の前世が犬ではないかと考える理由を
思いついたので挙げてみることしにした。
一、顔が犬に似ている。自分では全く似ていないと思うのだが
「似ている」と言われる。
二、目の前にある食べ物を食べ尽くしたい欲求が強い。
犬は群れで大きな獲物を狩って食べていたという。
猫は身近に居る小型の獲物を食事の度に
捕って食べればいいのであるから、食に対して卑しくない。
しかし、犬は獲物が大型なため、次にいつ捕れるかわからない。
あるだけ食べ尽くしてしまうのが掟だという。
三、副乳がある。
四、「犬歯が尖り過ぎていて危ないから」と
歯医者に両犬歯を削られたことがある。
前世が犬だと決めたら、今さらながら業腹である。
五、足の裏を全て地面につけてしゃがむことが出来ない。
しゃがむと踵が自然に浮いてしまう。
犬の足も猫の足も爪先だけで接地しているじゃあないか。
六、鼻の中が乾燥するとむずむずする。気になって仕方ない。
七、お産が軽かった。陣痛がよくわからず、
腰が重いと思ったのだが陣痛だったようだ。
痛みに対して鈍感なので注意したほうがいいと医者に言われた。
参加
白山羊でも黒山羊でもないが参加してみようと思う。
私の育った家では、出かける前に急遽、
着たまま繕わねばならぬ箇所を見つけると
「タビノコロモヲヌウトキハキテイテヌウゾヌウゾメデタイ
旅の衣を縫う時は着ていて縫うぞ縫うぞ目出度い」と唱えながら、
服の釦やらスカートの裾やらに針を動かしていた。 |