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其の四 火鉢<2>

毎朝、炭を熾した火鉢の五徳には大きな鉄瓶が乗っていて、終日、湯が沸いていた。百日紅の巨木の根本部分を輪切りにし、中身をくり抜いて作った半畳もあろうかという巨大な火鉢は、祖母の自慢の品だった。

池上で町工場をしていた時分、近所に住むクロダコウシャクが屋敷を整理することになり、どうした話の流れだかわからないが、祖母は使用人を連れて屋敷に出向き、さまざまな世帯道具を買い付けたという。その中の、この火鉢は目玉だったのだ。

猩々の様に紅い木肌の百日紅は表面が艶々に輝いていた。一面に大小奇妙な瘤が凸凹と複雑に重なり合い、火鉢は巨大な人面楚の館のようでもあった。恐ろしい大きな顔があり、小さい優しげな瘤もあり。

 私が生まれたときに、この火鉢があまりに大きくて、よちよち歩きの子どもに危険をもたらすのではないかと若い夫婦は不安になり、処分してしまおうか、あるいは物置き部屋に入れてしまおうかと思案した。

 しかし、子どもは大概のことに慣れてしまう生き物である。火鉢の瘤にぶつけて自前の瘤を作りながら巨大な火鉢とは仲良くすごしていた。私もそうであり、六歳下の妹も同じであった。 そして祖母はいつも火鉢の前に座っていた。

其の三十八
太田道灌

其の三十七
子 供

其の三十六
御小遣い

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