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第98稿 春は三月、落花の季節

 合否電報「桜咲く」「桜散る」と、今も学生さんは小遣い稼ぎをしているので有ろうか。
 先般鬼籍に入られた、桂米朝さん「地獄八景亡者戯」閻魔さんは言う「一芸あるもの前へ出て参れ」ある亡者が閻魔さんの前で芸を披露する。シラミをひねり潰して「春は三月、落花の季節」・・・。ついぞ高座で聞くことは出来無かった。カセットそしてCDと幾つかのバージョンで今も時々聞いている。
 それはさておき、聞くところ今年の花見は各地ドチラモ雨に邪魔されたそうである。



 拙寺にも桜は、四本生えている。表では無く裏に生えている。満開前から雨、そして雨。風に舞いハラハラと散るのでは無く、真下に向かって今年は散った。
 毎年、離れの窓を額縁代わりに散りゆく桜を眺めているのであるが、見ることは無かった。もう少し、風情を楽しむ情緒を持てばと今更想う。

 良寛さんの歌に「今日も 咲け咲け 明日も咲け」と有るが「咲け」ではなく「酒」の洒落であろうか。当時は、この時期を過ぎれば今と違って酒も酸化してしまう。桜をアテに飲める内に飲んでおこうと言うことか。

 此の手記は5月8日あたりに公開される。旧暦の3月20日である。「春は三月、落花の季節」に符合する。見方を置き換えれば、咲く花より散る花の方に日本人は風情の本質を見いだしていたことになる。
 一芸と言われ出てきた落語家に閻魔は「長年召使い居る鬼共、一度も笑ろうた事を見たことが無い。此の様な鬼共も笑うか」「造作も無いこと」鬼の耳元でささやくと鬼が笑う「オイ、赤鬼何がそんなに面白い」「来年のことばかり言いよる」笑われてもかまわない来年も雨を願うとするか。何が何でも来年も生きていなくては・・・




 入試入社試験に奮闘する方々には「今日は 散り散り 明日は咲け」とでもしておくか。

大門 合掌

―第118稿―
「張暑飽閉」の「春夏秋冬」

―第117稿―
春のお便り

―第116稿―
「正月」と「障月」

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