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第二回:「Děkuji, pokojská:ありがとう 部屋係より」


ヴルタヴァ(モルダウ)川。橋がかかっていて、
城のあるエリアと市街をむすぶ。


はじめてチェコに行ったとき、チェコ語を習って2年が経っていた。
20歳だった。

チップとか海外の旅行のマナーもわからなかった。
初めて買ったスーツケース。
10年ちょっと前だった。

チップは料金の1割。ホテルの枕元に置き、
掃除係のサービスに対してチップを払う。
そんなこともドキドキしながら、ガイドブックを手放せずに旅行した。
言葉はあんまりわからないのが本当のところだったが、宿をとろうとした。
まだインターネットが普及する前で大学の先輩の家のFAXを借りた。
返事がこなかったので、予約できているのかわからずに、
心配なわたしたちは大学の生協の電話を借りて国際電話をかけた。

数字だけわかれば事は足りた。
最初の2泊はとれているけど、残りは無理
といわれたみたいだった。


チェコは、質素でとても機能的なホテルが多いように思う。

初めて泊まった宿。チェコ人に道をきいて夜遅くに宿につくと
何もいわずに宿の主は私たちを2階の部屋に案内した。
「どうしてわかったんだろうね」

それはいまならわかるけど、日本人のお客なんて、めったにいなかったのだ。
その日、そのドアを叩く東洋人の女の子2人組なんて、ほかにいない。

2泊しているあいだに、残りの日程での宿をとらなくてはならなかった。
当時まだ外国人のチェコ旅行の案内をしてくれていた
「チェドック」という旅行会社に行って新市街の宿をとった。
言葉も満足にできずにいたし、そこで初めて知る単語も多かったが、
それでも宿はとれた。

2軒目の宿は少し大きめで立派なホテルだった。
チップを置くのも緊張した。が、うまいぐあいに、
チップに適当なコインがなかった。
同行していた友達と財布をみせあって、小さいお金をかきあつめて、
適当だと思われる額をテーブルに置いた。
その下に紙を置いて「Děkuji za uklizeni(お掃除、ありがとう)」と書いた。
そうしないと、チップだってわかってもらえない気がしたから。


チェコの横断歩道。ボタンを押すと
「お待ちください」とランプがつく。


観光を終えて部屋に戻ると
チップがあった場所に、新しい紙が置いてあり、
「Děkuji, pokojská(ありがとう、部屋係より)」と書いてあった。

なんだか感動した。pokojskáがわからなくて、一生懸命会話帳で調べた。
「掃除係」と書いてあった。友達と顔を見合わせて、
あーーって声をあげて笑った。

知らないチェコ人だけれど、
私たちがチップをあげたいと思ったことと
それをわかってほしいと思ったことが、実現したのがうれしかった。

第八回
Váoce:
クリスマス

第七回
Praha a Čechy:
プラハとボヘミア

第六回
Hezkou zábavu!:
お楽しみください!

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