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第6回:「Hezkou zábavu!:お楽しみください!」

チェコは映画が豊かな文化をもっていると思う。
テレビはあまり観ないという人もいるし、
肝心のテレビもつけると映画をやっていたりする。

日本には短編アニメーションがいくつかあわせて上映されているがそれ以外にも、
ヌーヴェル・ヴァーグとよばれる時代の長編チェコ映画も、
映画通なら知っていてもおかしくない。

いま日本で手に入るチェコの実写映画のイチオシは
「レモネード・ジョー あるいはホースオペラ」である。
なんといえばいいか、チェコ版西部劇である。
レモネード・ジョーはチェコ語読みすると
「リモナードヴェー・ヨエ」という。ちょっとハマっていない。
そして、アリゾナが舞台らしいのだが、
出てくる善良なおじさんが「グッドマン」、出てくる悪玉が「バッドマン」。
なんて単純な。
しかし、チェコ語しかわからない当時のチェコ人なら
何も知らずに聞いていただろう。

レモネードとは、コカコーラを想起させる炭酸飲料のことである。
その営業マンともいうべき、ウエスタン風ファッションの男性ジョーが
風紀の乱れたアリゾナへ行き、アルコールではなくレモネードを飲むことで
平和をもたらすが、
ジョーのために仕事をなくしたバーの店主らは復讐を考える……
というあらすじだが、このエンディングがおそろしいほどにチェコらしい。
ぜひ見て、「そんな映画を作っていいのか!」と思ってほしい。

そして、今年10月に「2007チェコ映画祭 in Yokohama」が行われる。
チェコ映画祭という、実写チェコ映画に日本語字幕をつけて上映する
小さな映画祭が2003年から少しずつ行われていて、私も通っていた。
チェコの映画はとてもおもしろい。
チェコらしければチェコらしいほどおもしろい。

今年の春先にプラハにいたときに見た「バカンス」が
今年のチェコ映画祭で上映される。
この映画はミハル・ヴィーヴェグという
チェコの有名な作家の原作を映画化したもの。

内陸国チェコの人々がバスツアーでヤドランというクロアチアの海まで行く物語。
そこで「夏」だからこその経験をしようとする、
チェコ人を描いたコミカルなヒューマンドラマだ。
独身の女性とその父母。父母がまた仲が悪いのだ。
女の子二人組、オタク青年、歌手らしい男性、
ハンサムなゲイ、おばあさんとその連れ。
チェコの映画は世代で区切られない。
どの年齢もどの性別もみんなが揃っているのがいい。

この「バカンス」を見たあとに、
「これが日本で見られたらなあ」と本気で思った。
実際に見られるチャンスが10月に来る。
退屈な日々や「何かないかな」と思っている人に見てほしい。
クロアチアの海も、取り忘れた夏休みにオススメである。

そして、プラハで「バカンス」を見たとき、入場券をきりながら
映画館で働くチェコ人は私にこう言った。
「Hezkou zábavu!(ヘスコウ・ザーバヴ!)」

すてきな楽しみを!という意味だ。
日本の映画館ではなかなかこういう言いまわしがないのだが
ディズニーランドのアトラクションで「行ってらっしゃい!」と
言われたときのような気持ちになる。

第八回
Váoce:
クリスマス

第七回
Praha a Čechy:
プラハとボヘミア

第六回
Hezkou zábavu!:
お楽しみください!

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