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その9 秋の入り口

秋になり涼やかな夜になると、鮮やかな夢や深い思い出が、こころの中を駆け巡ります。真夏には「アサーティブネス発見の夢」を見ました。それはアサーティブネスの12の権利がストーンヘンジのような巨石に刻まれたり、深山で踊る12の小さい人になって現れたりする夢でした。イギリスで系統立てられたアサーティブネストレーニングを、日本で広めようとしている私の試みが、夢に現れたのでした。私は夢の続きを少しずつ見ています。

「テトリス」のゲームのように天から降ってきて、最初に大地に着地した石柱には
<1>私には、日常的な役割から自立した一人の人間として、自分で物事の優先順位を決める権利がある
と刻まれていました。私は心底揺さぶられました。

以前気に入りの「わたし」という絵本があって、それにはページを繰るたびに他者との相対的な立場で「わたし」が説明されていました。たとえば「わたし、お医者さんから見れば患者さん」「わたし、八百屋さんから見ればお客さん」「わたし、お兄ちゃんから見れば妹」といったように。私は読みながら、心が落ち着いたのでした。なぜなら「私」って何?という問いには、「社会的な役割や立場」を当てはめておくのが一番妥当だったからです。「わたし、子供のお母さん、夫の妻、母の娘、障害を持つ友人のボランティア、地場野菜の会の会員……」。

しかし、石柱の文言を目にしてから、私はそわそわし始めました。「わたし、あるときは外国人、あるときは弱者、あるときは権力者、あるときは、あるときは……」数えれば数えるほど、自分が散り散りになっていきます。相手次第で私の規範が変わり、態度も行動も変化し、限りなく相対的な立場に身をおくことになる自分に目が廻ったのです。

「ストップ!ストップ! 一体私って、誰! 何!」。平安が不安に、納得がいたたまれなさに、秘密の欲求が隠しきれないちからと一緒に、噴出しました。それは大人になってうまく自分の中にしまい込んだはずの「私というもの」が、ちからを盛り返して立ち上がろうとする揺れでした。

以来「私というもの」は悠然と存在し、散り散りになりそうな「社会的な自己」を統括し、自由に遊ばせるようになりました。「私というもの」があるから、私は役割を尊重し、選択し、愛して遂行し、あるときはそれを手放すのだということが、分かってきました。それが、石柱の「役割から自立した一人の人間として」という文言に重なりました。「個」「主体」という表現は石柱らしいですが、私が感じているのは、どの役割にも浸透しているような、スポンジに充満している水のような、役割の中から染みでてくる「私らしさ」です。
アサーティブネスは「自己尊重」のワークです。それは「権利」の実現です。

「12の権利」*********************************************************
<1>私には、日常的な役割から自立した一人の人間として、自分で物事の優先順位を決める権利がある
<2>私には、賢くて能力のある対等な人間として、敬意を持って扱われる権利がある
<3>私には、自分の感情を言葉で表す権利がある
<4>私には、自分の意見と価値観を延べる権利がある
<5>私には、「イエス」、「ノー」を自分自身で決めていう権利がある
<6>私には、間違う権利がある
<7>私には、考えを変える権利がある
<8>私には、「わかりません」という権利がある
<9>私には、欲しいものを欲しいと言い、したいことをしたいという権利がある
<10>私には、人の悩みの種を自分の責任にしなくてよい権利がある
<11>私には、周囲の人から認められることを当てにしないで、人と接する権利がある
<12>私には、アサーティブでない自分を選択する権利がある

「こころのちからメッセージ」**********************************************
<1>私は、私が何をするか、どれから始めるかを自分で選んで決めていい
<2>私は、自分の良いところや能力を、ちゃんと認めてもらっていい
<3>私は、自分に素直になって、人に感情を伝えていい
<4>私は、自分の意見や価値観を、正直に相手に伝えていい
<5>私は、他の人の気持ちにではなく、自分のきもちにそって、「はい」、「いいえ」を言っていい
<6>私は、まちがえてもいい
<7>私は、きもちや考えが変わったら、無理にがまんせずに、決めたことを変えていい
<8>私は、わからないことがあったら、教えてもらっていい
<9>私は、自分の一番の希望を、いつでも相手に伝えていい
<10>私は、人の悩みを、自分のことのように背負わなくていい
<11>私は、周りの評価を気にせずに、自分の考えややり方を伝えていい
<12>私は、私のままでいい

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