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その2

雨降りです。
どうどうと真っ直ぐ降り、ここは滝の中のようです。
掘炬燵は、部屋に滝壺のように雨を集めている様に見えます。
穴はその暗がりのせいで、部屋に涼を持ち込みます。

蒸し暑い夏のある日、息子が赤ん坊を抱いてフラリとやってきました。
ここ数ヶ月連絡もなかったので、突然の来訪に少し戸惑い、
どうしたのだろう、何かあったかと心配が頭をもたげ、
あれこれ聞きたい気もしながら、 一方で汗を吹きだした顔に、
麦茶だ扇風機だとあわてているうち、 それもどうでもよくなっていきました。

父親に張り付いて様子をうかがっていた赤ん坊も、
次第に部屋の中をよちよち歩き、
飾ってある自分の写真を見つけて「あ、あー」と声を上げ、
その度ジジババは訳もなく手を打って笑い、
空気は赤ん坊色に染まっていきました。

ざるうどんを食べ散らかしたと思うや昼寝となり、
座布団に寝かされ、炬燵の脇に置かれました。

この時の穴は、危険きわまりない崖っぷちです。

息子はそおっと、2つに折った座布団を穴のヘリに差し挟み、
自分もゴロリとなりました。
六畳の部屋では、掘り炬燵を置くと二畳幅は一辺しかなく、
そこは南で暑苦しくて寝られません。
陽を避けると、一畳ずつに挟まる格好になり、
二人は直角に頭を合わせる様子になります。

赤ん坊は眠りながらも沸々と汗を吹き、蒸された餅のようです。
穴が塞がれたせいで、風通しが悪いのです。
子供の寝息を頭にした息子は、実家といえど、
すでに自分の領分ではなくなった空間で、硬い背中をしています。

やがて「おうちにかえる」二人を見送ると、
ジジババは満足とも空っぽともいえないため息を吐きます。

夜、散らかっていた赤ん坊の気配が畳の上を這い、穴の中に集まります。
そこに座ると再びため息が洩れます。何のため息だか。
それも足をつたって穴に沈み、またその暗がりが深くなるようです。

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