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はじまり

私の住居には「掘り炬燵」があります。もちろん練炭ではなくて電気炬燵ですが、広い四角な木の天板は昔と同じです。冬に限らず年中据えられています。以前専業主婦だった頃、私の暮らしはこの炬燵の周りで過ぎていきました。子どもたちのおやつやお昼ごはんはもちろん、お絵かき、かくれんぼう、おままごとと、炬燵は格好の遊び場でした。子連れで一日過ごしにやってきた友人たちと、お茶を飲み、おしゃべりをし、時には本の勉強会なども開きました。今子どもたちは巣立ち、友人たちもそれぞれ仕事に忙しく、日中の炬燵の周りは静かです。私にしても、たまに休みに、ここで過ごすことがあるくらいです。

ところでこの度幸運なことに「茶柱横丁」に住むことになり、そろそろ通信を書こうと座ったら、改めて「ここは茶柱が似合う場所だなあ」と気づきました。折りしも西日が差しこんで畳が黄色に光り、さやあっと風が吹き抜けていきます。「あら、これが大人の幸せってもんじゃないの」とふと思います。たくさんの思い出のこもる場所、忙しい日常を終えて帰る場所、ふと佇む場所。くり返し炬燵に舞い戻って30年。それって、なんだかとても「茶柱的」な幸せが漂います。

最近の暮らしでは、正直なところあまり幸せな感じがしていません。こころがざわめき、鬱々とし、ちょっとしたことで涙がこぼれてくる……、そんなところを過ごしています。 けれどもそんなときこそ、自分の底力や人のたくましさや、出来事に表れてくる「意味」なんかにきもちを注いでみるのもいいな、と素直に思います。それでときどき炬燵で日誌を付け、「通信」に送ることにしました。幸せを思い出すため、作り出すため。

その19
虹の向こう 山の彼方 飛ぶ鳥

その18
降る花

その17
春が来た 春が来た

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