第95稿　地球という名の墓場

　ま、大概はどの様な話であっても結局は私的な話である。それに乗っかるか乗っからないか人それぞれ。で、愚息の話。

　その前に、私の話。
　大学と言うところを大概の学生は四年で卒業する。普通に過ごせば嫌が応にも知識やそれなりの学力が単位として消化されていく、中には８年間在籍している学生さんも居る。私がご厄介になった京都に有る花園大学という処は、今はその辺の事はどうかは知らない。約４０年前入学した当時８回生までずらりと揃っていた、他の大学のことは知らない。１回生の時から茶道部に在籍し普通に４年で卒業した。　其の茶道部には入部時総ての学年が揃っていた。茶道部と言うと文化系のサークルと思いきや、体育系サークルとの付き合いばかりで結構上下の関係が存在していた様に記憶している。学生のことである、何かにつけては酒を飲んでいた。
　「茶道部」では無く「酒道部」と揶揄される様な酒飲みのクラブ活動で有ったことは間違いない。花園大学は臨済宗宗門教学機関として其の端を発する。

　細かい話を出すと、臨済宗は禅宗になるが、禅宗という宗派は無い。日本には、曹洞宗、黄檗宗、臨済宗の三派（他もあります）をひっくるめて禅宗と言っている。ひっくるめて言うならば「仏心宗或は達磨宗」と言うのが良いとは想うが余計にややこしくなるので後は割愛。元々は坊さんばかりの教育機関で有った、開校以来百年を過ぎ男女共学となっている今日も禅宗としての教学精神はしっかりと残っている。言うに及ばぬが、当時５回生以上はほぼ寺院の子息子女である。

　さて、愚息の話。
　４年で卒業してくれれば良いものを、１年休学して此の四月から五回生として復学する。一年間は道場にご厄介になっていた。当然、下宿を探さねば困ることになる。道場では定期的に「弁事（べんじ・私用の外出）」を許される。生活用品を買いに行く者、サウナに行く者、常日頃口にしない物を食べに行ったりと様々。の、最中であろう「下宿」と言う電話が掛かってきた。一応の希望を聞き調べていくと他と内容的に同じで半額以下の部屋が有った。安い方が此方も大変助かる。早速電話を掛け現在問い合わせている。余りに安いので聞いた「事故物件か？」「築３０年経っておりますので・・・」とのこと・・・

　そこで、事故物件とは興味があればネットでお調べ願います。不動産取り引きでは特に建物内での自損死他損死全般関係を指す言葉であるが、全く気にもしない。子どもはどう思っているか知らぬ。此の部屋で人が息を絶えた、で人を不安にあおり立て・・・アレヤコレヤと言う話でアル。では、病院のベットは？　如何なものか。
　私ども亦多くの生命が宿って来た地球はどうであろうか、有史以来動植物の死骸は石炭石油に成った。そんなこと気にしながら使用している人を聞いたことがない。ホモサピエンスの死だけがそれらの話になるというのは甚だバカげた話でアル。ホモサピエンス「知恵のある人」と訳されるそうであるが、本当に知恵があるのであろうか、何の知恵であろうか「考えることをしない、知恵のある人」と言うことか。
　地上で生まれた生命は総て地上で命を終えている。海や湖や川で生まれた生命は総てその中で命を終えている。私どもは、夥しい屍の上で生きている。地球という名前の墓場の上に総ての生き物がひしめき合って生きている。

　蛇足
　此処ではこんな事があった。と聞かされれば確かに、ソワソワした気分になることは誰しも同じである。唯、通知事項として不動産の購入や賃借の場合、事故が有っての後には其の説明をしなくては「不告知」として宅建業法上の告知義務責任を問われるが、其の次の人には「不告知」と成らない。と言う様な貸し手にとって都合の良いシステムになっている。
　つまり、一度誰かが購入若しくは賃貸をし短期ではない？生活をしていたという一定期間？を過ぎれば事故物件では無いと言うことになる。そこらに目をつけた「知恵のある人」は結構な差額収入にありつける。ま、後々恨まれない様に一生懸命営業活動を・・・

大門　合掌