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35 夢の家 家の夢 <3>

<家と迷路>
対義語のように
示す内容はかけはなれているのに
その二つの言葉を
兄弟
否(いな)
姉妹のような存在だと
彼は思った

父母の部屋
妹の部屋
自分の部屋
そしてキッチンと応接間
それらを繋ぐ直線の廊下

ただこれだけの構造なのに
「一度も父母や妹に出会ったことがない」
と彼は思う
無論 意味するところは
「こころを通わせたことがない」
ということなのだろう

確かに一家団欒の記憶はあるのだが
年を重ねるにつれ
それはどこか儀式のように
繰り返されていたように思えた

十代の頃 逃げるように家から出て
早(はや)半世紀
すでに老いた彼は
たった一人住む部屋で思う
「自分だけが住む家にいても
 自分と出会えるとは限らない
 心に構築された家は
 複雑な迷路のようで
 もはや自分の所在さえ
 わからなくなってしまった」
*
つづく

<じゅんぺい>

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53
昔話<8>
<遊び場 その4>

52
昔話<7>
<遊び場 その3>

51
昔話<6>
<遊び場 その2>

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