茶柱横町 茶柱横町入口へ
 
 
プロフィールを見る
前を見る 次を見る

021 『世間でスピリチュアルはブームなの?』

 こないだ、知人に誘われてとある講演会に行った。
 その講演会自体はどうってことないものだったのだが、終わった後に、参加者の自己紹介があり、「食べるものを変えたらアトピーが治って10キロ痩せた」という人がいた。
 最近、私は体に蕁麻疹が出て悩んでおり、それに痩せたいとも思ってたので、すかさずその人に「どういう食事を食べてるのか教えて欲しい」
と話しかけに行った。

 後日、その人から「詳しく説明したいから直接会いたい」と連絡がきた。
 会って説明を聞くとその食事法というのは「マクロビオティック」という玄米や有機野菜を中心に食べる食事法で、マドンナやトムクルーズも実践してる食事法らしい。世間で流行ってるロハスに通じる感じだ。

 体にもよさそうでしかも痩せるというので、さっそく実践してみたら2週間で2キロ痩せた(それ以上は痩せてないけど)。しかし肝心の蕁麻疹は、まだ治んない。
 「マクロビオティック」自体は別にあやしげでもなんでもないのだが、そのマクロビオティックの料理教室で知りあったMさんが、私のまわりにはいないスピリチュアル系の人だった。

 私は、その料理教室は一人で参加してたので、たまたまとなりに座ったMさんと話してて仲良くなった。そのMさんが帰りに「ヒーリング」を受けに行くという。

「ヒーリングって何?」
「う〜んうまく口では説明できないわ。とりあえず、初回5分タダというのを受けてみる? とってもすてきなマンションの一室で、私はヒーリングを受けてアトピーも治って、運もよくなって結婚できて、体調悪いときは電話で遠隔で受けることもあるの」
 と言う。
 えっ? 運が良くなって電話で遠隔でも受けれる?

 なんだかイイコトづくめですご〜くあやしい。
 あやしいものは、私は首をつっこまずにはいられないので、とりあえずタダということだしどんなものかMさんについていくことにした。


 連れて行かれたのは品川の駅のすぐ近くの高層マンションの1室。看板も出てない普通の部屋。
 中は小奇麗なインテリアでそこのソファに座らされてハーブティを飲みながら説明を聞く。
 ここのヒーリングについて紹介された女性誌や、ヒーリングを受けて痩せてアトピーが治った人の施行前、施行後の写真が並んでいる。
 うん? なんかマクロビオティックと売りが似てるな? ただ違うのは、ヒーリングを受けると運がよくなったり、性格がよくなったりお金が貯まるという。

 はぁ〜どういうこと?

 説明してくれる人いわく、「宇宙のエネルギーを、施術者というフィルターを通して送り込む」のだそうだ。
「とりあえず受けてみてください」
 と別室に連れて行かれて、ソファに座らされる。
 施術者は少し離れて向かい合って座り
「リラックスしてくださいね。では、はじめます」
 といきなり手をかざすような感じの動作をして目をつぶる。
 いったい、何が行われてるのか見てるだけではよくわかんない。宇宙の気を送られてるということなのだろうか?

 でも、不思議なことに足がトクントクンと低周波にあたってるような脈打つ感じ。これは、まさに気のせい?
 5分間はあっと言う間に終り、また元の部屋に案内され、ハーブティを勧められる。他にもお客さんが来ていてけっこう繁盛してる感じ。
 通常は20分、3000円なんだそうだ。結構高い。
 連れてきてくれたMさんは毎週通ってるという。
 そこで売られてる「お金」「恋愛」「運が良くなる」など言葉が書かれてる500mlの水は、その言葉の波動が込められてるということで1本1800円もする。びっくり!!。
 その水は飲んだり化粧水として使えば込められた波動が得られ、ヒーリングを受けたのと同じような効果があるという。
 ますますあやしい〜。もっと受けたら実感できるのだろうか?


 ヒーリングを受けて、Mさんと駅に向う途中に 「私が飲んでるお茶をあげる。「買ってはいけない」の著者も飲んでる体にいい安全なお茶なのよ」
 とハーブティのティーパックとそのお茶についての記事のコピーを渡された。
 家に帰ってその記事のコピーを読んでみると、そのハーブティーは「ジェイソン・ウィンターズ・ティー」というらしい。
 癌になって医者にも見放され余命1年と宣告されたジェイソン・ウィンターズさんと言う人が、聖書にも書かれてるハーブを世界各地探し求めて見つけた3つのハーブを配合して飲み続け、癌を治したという奇跡のハーブティーなんだそうだ。

 そのハーブ自体は特にめずらしい物でなく、レッドクローバとインディアンセージとハーバリアン。
 なんでもその3種類のハーブをブレンドすることによって、それぞれの持つ力を最大限に引き出し、その相乗効果を高めるそうだ。
 でも、ハーブに癌を治す効果なんかあるのかな?
 とにかくハーブで癌が治ったというウワサを聞きつけ、大勢の人がジェイソン・ウィンターズさん家に押し寄せた。それで、あまりにも大勢の人がお茶を求めて来るので、販売することになって今では世界72カ国、6500万人以上の人が飲んでいるという。

 飲んでみると、癖のない飲みやすい味のお茶だった。貰ったティーバックは5パックだったのですぐになくなった。体にいいのだったらもっと飲んでみようかな〜どこで売ってるのかな? とネットで検索すると、なんと一箱6300円もすると出てきた。高い!!
 1箱30パックだから、1パックあたり200円もするの? ちょっと高すぎだわ、と思ってたらMさんから連絡があった。
「私が入ってる会に入るとお茶を安く買えるよ。お茶仲間に田中さんのことを話したら是非逢いたいというので、会わない?」という。
安く買えるならいいかな? とまた誘われるままひょこひょこと神楽坂の高級マンションの最上階のミーティングルームに連れて行かれる。

 その部屋は、マンションの住人の共同施設らしい。予約して住人なら誰でも使えるようだ。
 眺めも良く、広々としていた。
 部屋に置かれた大きなソファには、すでに4人の人が座ってた。
 えっ、いったい何? よくよく話を聞いてみると、このお茶を安く手に入れられる会というのは、ネットワークビジネスのことだった。
 説明によるとアムウェイとかと違って、自分で商品を買い込むのではなく、このビジネスは毎月2箱お茶を買い、そういう人を自分以外にあと2人見つければいいのだという。
 でも、それってねずみ講じゃないの?  説明してくれた女性は超ミニスカートをはいたイケイケの感じの38歳の女性で、今そのビジネスの収入で月50万円もあるという。
 なんかミニすぎてパンティーが見えて、同性ながら気になって仕方なかった。
 横に座って説明を補足してた男性は、以前は「みずほ銀行」にお勤めだったのを辞めて、それからニュースキンというネットワークビジネスをやっていたけど、今はこのビジネスをやってるそうだ。彼はまだ初めて日が浅いので、月15万位の収入という。でも、このその男性が、家族とともにこのすてきなマンションに住んでるそうだ。
 銀行員のときに稼いだお金のせいだろうか?

 いろいろ説明を受け、ネットワークビジネスは友達をなくしそうで怖いが、そんなにリスクもなくお金もうけをできるのは少し魅力的かも?
 でも、なんか説明してくれた女の人が攻撃的で怖いし、そんなことするよりまじめに働いたほうがきっといいなだろうな〜とぼんやり思う。

 みずほ銀行を辞めた人は、べつにこのビジネスを始めたから会社を辞めた訳でなく「本田 健」と言う人の『ユダヤ人大富豪の教え』という本を読んで、普通に働くのが馬鹿らしくなって辞めたという。
 本田 健? なんか最近よく聞く名前だ。

 さっそく家に帰る前に、本屋さんによってその本を探してみる。文庫化された本を見つけた。
 読んでみると、働き続けてたとえ社長になったとしても本当のお金持ちではなく、本当のお金持ちは株や不動産さん特許など不労所得で潤ってる人たちだということが書かれていた。
 いろいろネットとかで調べてると本田 健は実際にビジネスを起こして、今は育児でセミリタイアしてアメリカのボストンの豪邸で悠々自適に暮らしているらしい。
 ネットワークビジネスより、本田 健に興味を持ち、知り合いに「最近、本田 健を読んでおもしろかった」と話したら「今度、本田 健の講演会があるから
行ってみたら」と教えられた。

 さっそく申し込みをする。
 場所は、東陽町のホテルのホール。日にちは月曜日の12時半から17時半までという平日の昼間なのに、1000人以上のスーツを着たビジネスマンが会場を埋めていた。

 まず、講演会で最初に話をしたのは東証1部上場してる会社である(株)船井総合研究所の創業者の船井幸雄。なんか経営コンサルタントの会社らしい。
 私は全然知らなかったが船井幸雄という人はすごく有名な人らしく、著書も300冊を越えてるそうだ。本田 健もこの船井さんを尊敬してるらしい。
 しかし、船井さんの話の内容というのが宇宙のことや、この水を飲むとエネルギーを得られるとか、これを川に流すと水が浄化されるので飲むといいとか商品の説明ばかりで、しかも、しまいには「僕は困ったことがあると、自分のガイド(守護霊)にお願いする」といいだすしまつ。


 若い女の子や江原啓之が守護霊がどうのこうのいうのは最近よく聞くが、こんな1部上場の立派な会社の創業者で74歳のいい大人が、そんなこと言うなんてと、びっくり。
 そんなスピリチュアル系の話なのに、講演を聞いてるビジネスマンは、うんうんとうなづきながらメモを取ってる。

 みんな、引かないの?

 しかも、休憩時間は会場で売られてる波動がどうのことか、体にいい水とか、あやしげな物が飛ぶように売れていた。
 2000円もするオーラの写真にも、長蛇の列ができていた。

 えっ〜みんな本当に信じてるの?

 期待していた本田健の話もビジネスの話というよりは、自分が住んでるボストンの豪邸の自慢。プールもある馬鹿でかい家は隣の家がまるで見えないほど敷地が広く、庭の芝生の手入れには大勢の人を頼まないといけないほど。庭には鹿がやってきたりするほど、自然に満ちていて、ご近所はみんなお金持ちでとっても知的レベルも高く安全だ、という話だった。
 ビジネスの話もしたが、「人に喜ばれる企業が伸びる」という具体性にかける話だった。それでも、なんか笑顔がさわやかで感じのいい人だった。
 しかし、この講演会にいってスピリチュアルにはまってる人の多さには、ホント驚いた。私もあやしいと言ってないで、もしかして積極的に波動だとかガイドとか取り入れたら本が売れるのかなぁ〜と、少し思ってしまったほどだ。

068
『豊橋ハリストス正教会』

067
『大好き!着物』

066
『仏像に変身した私』

バックナンバーINDEX
前を見る 次を見る
| 著作権について | このページのトップへ | 茶柱横町入口へ |