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第五話 始まりの場所、アラスカ



始まりのアラスカ

アラスカ。

その響きは、私の中にいつも特別な気持ちを起こさせる。
何故ならアラスカは、私のはじまりの地。
1997年から1998年にかけて
高校最後の年を過ごした場所。

アラスカに留学していた、というと
だいたい同じような反応が返ってくる。
「え、なんでまたそんなところに」から始まり、
犬ぞりに乗っていたのか、とか(乗りましたが)
アザラシやトナカイを食べていたのか、とか(食べましたが)
そういうのはまだ良い方で
アラスカってどこにあるの?(カナダの上のあたりです)
何語なの?(アメリカの州の1つなので、英語です。)
え、人住んでるの?(・・・)
というような感想も実際、多い。
知っている人も行った事がある人も数多くいるけれど
イメージだけ先行していて、まだあまり知られていないんだなと思う。

もちろん私だって行ってみるまで本当はどんなところかなんて
さっぱり分からなかった。
その時の私にとっては英単語や年号以上に大切なことなんてなくて
周りに流されて
けれどそれをごまかして
自分を甘やかしていた。
何を探しているのか分からないくせに
何かを探しているようなつもりになって
何かを変えたいと思っていたのに
何から変えたらいいのか分からなかった。

イヌイットの民族美術が好きで
星野道夫さんの本が好きで
クジラとムースとオーロラに恋焦がれていた。

そしてある時、アラスカに呼ばれたような気がしたのでした。
高校3年生の夏、私は必死で続けた受験勉強を突然に放棄して
今思えば何か大きな力に導かれるように アラスカの大地に立つ事となりました。

住んだのはアラスカ州で一番大きな都市、アンカレッジ。
ではなく、そこから更に車で40分くらい郊外に行ったところにある、イーグルリバー。最近でこそウォルマートも出来たけれど、私が行ったその頃は、地味なモールが、ひとつ。小さな映画館が、ひとつ。街の人全員がそこで買い物しているんじゃないかっていうくらいの大きなスーパーマーケットが、ひとつ。10月にはもう真っ白な雪景色となり、長く暗い冬の気温は信じられないくらい低くて、近所に出かけるのも一仕事。観光でははまず絶対に行かないであろう、小さな小さな街。
そんなところに私はアラスカの家族と共に1年間暮らしました。

冷たい自然の中で温かい人々と過ごした時間は、考えていたよりもはるかに大きな変化を私にもたらし、結局アラスカにはその後も何回も訪れる事になる。
「デナリ」という私の絵描きとしての名前もイヌイット語で、
アラスカにある山の名前、マッキンレー山の別名に由来しています。
そういうわけでこれまでも旅の話をしてきましたが
ここからしばらく アラスカという場所について、記憶を手繰りよせながら書いてみたいと思います。
どうぞ、お付き合いください。

*こちらでもお知らせさせて頂いていた、私の初めての個展「TADA-IMA」は多くの方にお出かけ頂いて、無事に終了することが出来ました。来て下さった方、本当にありがとうございました!!

2009年
ゆっくりと

AIR MAIL
from LONDON

第九話
空とび猫 デナリの物語<1>

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