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地上最後の楽園は、今日も微笑んでくれるかな
<3>いしゅらむの国。ひんじゅうの国。


出発まではまだ、1時間ある。
待合室には誰もいなかった。頭が痛い。足はむくんでいる。
日本から持ってきた市販の風邪薬を葛根湯内服液で飲む。
決められた用法を無視して飲む。
副作用で意識朦朧、今日一日体はもつだろうか。
うとうととしていると、背後からまたあの大阪弁がやってきた。

おばはん「ここでええのっ」
おっさん「知らん」
おばはん「こんなんやったら、こんかったのに」
おばはん「ここで待っとったら、同じツアーのひとが来るさかい、
     うしろついていったらええんや」

相変わらずうるさい夫婦。
ボロブドールは単独ツアーが基本で、
見知らぬ人とのグループ行動はないはずだが、
「大阪弁」はどんな、ツアーなのだろう。

そうこうしている間に、一組、二組、日本人観光客がやって来た。
もしかして、ボロブドールって、日本人にしか人気がないのか??
それとも2日前の火山噴火を知らないのは、日本人だけ?
結局、小さな機内の半分は日本人で埋まった。

初めてのガルーダインドネシア航空。
シートは国際線並の広さ。キャビンアテンダントは上戸彩似のかわいさ。
やるじゃんGA!。体調不良も一瞬忘れさせてくれる。
JALばかり乗っていると、JAL以外のクオリティが、
ぐんぐん上がっている気がする。もっとがんばれJAL!

1時間ほどでジャワ島ジョグジャカルタに到着。
着陸寸前、火山から白い煙が上がっているのが確認できたし、
機内の新聞には赤々と溶岩を吹き出す写真が一面に掲載されていた。
火山が噴火したのはデマではなかった。
クレジットカード自動付帯の保険は
自然災害でも降りるのか、少し不安になる。

ゲートを出ると、ネームカードを持ったガイド
「ラシーンくん」が待っていた。
ラシーンくん曰く、ボロブドールと火山は23km離れているし、
アスラの日(ジャワカレンダーで定めた日)にお供え物をして
火山を沈静化させるので大丈夫という。ほんとかよ〜。

ジョグジャカルタの街を抜け、ボロブドール遺跡へと向かう。
途中、ジョグジャの説明をしてくれる。

「ジャワ島は、いしゅらむ教が多いので家に門がありません。」
「バリ島は、ひんじゅう教なので家に門があります。」
「ジョグジャは昔インドネシアの都がありました(自慢)」

初めて見る街は、それだけでおもしろい。
いろいろ質問してみる。
「あの分譲物件はいくらくらいするの?」
「あれはエリートの家だから3億ルピア(3000万円)ね」
「普通の人の家はいくらくらい」
「普通の人は3000万ルピアくらいからあります」
アバウト300万円。バリより高い。
都会だから? なんといってもインドネシア第二の都市。
しかし、バリ島より赤道に近い分だけ、長く住むには暑すぎる。

市街地を抜けると、川で砂利をすくっている人をよく見かけるようになった。
トラック1杯運んで15万ルピアになるとか。
男も女も、関係なく運んでいる。
大変だが15万ルピアが魅力で、多くの人が従事しているそうだ。

車は1時間弱で地球最南端の仏教遺跡ボロブドール遺跡の入口へ到着した。
8〜9世紀に造られたといわれている。
ボロブドールそのものが巨大な曼荼羅になっていて、
5つの方形の基壇の上に3つの円形基壇が載る
須弥山のようなピラミッド構造をしている。

写真を撮ろうとすると、
「ここより最後の場所のほうが、きれいに撮れる」と教えてくれた。
これぞ、ガイド効果!



下の基壇から上へ煩悩、色、解脱の順に上がっていく。
回廊の壁面には仏陀が生まれ出家し、
悟りを開くまでの人生がレリーフに描かれている。壮大なストーリーだ。
仏陀の一生については、手塚治虫の「ブッダ」を読んで
あらすじ程度は覚えている。
須弥山の階層についても
本宮ひろしの漫画で読んだ気がして、なじみやすい。
日常で宗教を意識する時はほとんどないが、
こういう場所で、過去の記憶と重なることがあると、
「仏教徒皆兄弟」のようなつながりを感じるんだな。

ガイドのラシーンくんは、覚えきれないほどの解説をしてくれるが、
日本語があいまいで、ほとんど頭には入ってこない。

最上段まで登り、休憩をとる。なんせ暑い。その上、体調最悪。
コンディションが良いときに来ていたらもっと説明が理解できたのにと、
軽く後悔していると、
近くにとても理解しやすい日本語で説明するガイドがやって来た。
ラシーンもおなじようなこと言っていたが、ガイドが違うと、
脳みそにするする入ってくる。

そうか! ガイドのレベルが微妙なツアー金額の差だったのか。
これからツアーを申し込むときには、
ガイドの日本語レベルを確認した方がよさそうだ。
ただラシーンも悪い奴じゃないし、一生懸命なので許してやろう。

ゆっくり休憩していると、なんとあの大阪弁がまたまた、やってきた。
たしかに、8名ほどで団体行動をしている。
ツアーのロゴにはあのHで始まる格安旅行代理店の名前が。
そうか、日本から「H」で申し込むと混載ツアーになってしまうのか。
なんとなくナットク。しかも、現地ツアーより遙かに高い金額をはらっている。
大阪弁ご一行も休憩時間となり、
なぜか自分の近くに座り相変わらず大きな声でしゃべっている。

おばはん「にいちゃんはどこからきたん」
おばはん「海外旅行は何回目? ふ〜ん。はじめてなん」
おばはん「うちらもう、何回もいっとるさかい、なんちゅうことあれへんけどな」
おばはん「ほなバリに戻ってから一緒にどこそこでも案内しょうか」

朝、空港で超弱気な会話をくり広げていたおばはんは、
同じ日本人の初心者がいると、態度一変、
強気のベテラン気取りでその場を仕切っていた。
恐るべし、大阪おばはんパワー。

しだいにうるさくなったため、
この場を切り上げて次の場所へ向かうことにした。
(つづく)

<6>
1日4000円以下!
激安車チャーター車の実情。

<5>
バリ島のキャッチセールスに
キャッチされてみました。

<4>
日本人を知り尽くした、
日本語ツアーの醍醐味。

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