ワタクシがここで書き連ねる「東京俺好」。「トウキョウオレスキー」と、発音しますが、東京の中のワタクシの「好き」な所、それは店であったり場所であったりするのですが、そんな好きな場所を「適当」にご紹介する、という文章です。基本が「適当」なので詳しい場所とか書きません。気になったら皆さんも「適当」に散策して、出向いたりしていただければいいかな、と思っているのです。東京に生まれて50年少々、曾爺の代か江戸東京と永く住んできたこの街の「俺の」スキなところを勝手適当に書き連ねる「東京俺好」(トウキョウオレスキー)。よろしければ皆さまもテキトーに楽しんでいただければ、と思います。
その11 【東京俺好番外編】
ヨコハマオレスキー『正しい「怪しいアジア」』
というわけで、今回は番外編。
横浜に出かけた時に邂逅した不思議な場所、すなわち「ヨコハマオレスキー」なのであります。
いやはや。
さて過日、所要で横浜に出かけたです。
いえね、中国服とか人民服とか、そんなのを買おうと思って出向いたわけなんですが、中国モノならやはり中華街。色々なものがそろっておりますな。服だけでなく雑貨や料理道具、食器。もちろんたくさんの料理店。店頭では肉まんや甘栗を作って売ってるので、街の中がとてもイイ香りです。
中華街と言うのはなんというか、あらゆるものが過剰な感じがして、いいですねえ。食べ物であれ、店の装飾であれ、ネオンサインもこれでもか!と言うくらい。買って買って買って、観て観て観てーという押しつけがましさが、街を面白くしているんだと思うのですがさてしかし、そんな過剰な街でひと通り用事が済み、そろそろ帰ろうかと思い始める夕暮れは逢う魔が刻。徐々に暗くなる空を背景に、中華街の外れにそれはいきなり現れたです。
寂れた色合いのタイルに包まれたその建物は、最初観た時は廃屋かと思いましたよ。夕暮れなのに人気はないし、中に灯がつくわけでもない。しかし入り口は寂れたなりに掃除されているようだし、窓なんかも開け閉めしている形跡がある。入り口には古めかしいアーチ型のボロボロのテントが貼ってあり、そこには「旅館 オリエンタルホテル 中華街南門通」と、懐かしい感じのフォントで書かれている。
うむ〜、味わい深いなと思っていた刹那、どう見ても貧相な身なりの、腰の曲がったオバサンが、扉を「ギイ」と開けて中に入ってゆくではありませんか!
扉が開いた隙にちらっと中を見たけど、薄暗くてなんだかよくわかんない。
うわっ、怪しい、超怪しい。
もう建物自体がすでにアヤしいのに、なんか胡散臭そうなオバサンまで入って行くし。いやあ、中を覗きたい衝動に駆られたけれど、何かよくないことがおきそうなのでグッと我慢。だってコワいもん。
昭和、それも30年代から40年代前半っぽい雰囲気を持つオリエンタルホテル、和製のギャング映画に出てきそうな印象が本当にグッときます。ひと目でオレスキーですよ。あ、映画と言っても日活の派手で無国籍で荒唐無稽なアクションではなく、大映のちょっと暗い感じのギャング映画的、と言えばいいのかどうか。出演者も宍戸錠や小林旭ではなく、天地茂や田宮二郎のように陰気でニヒルなイメージの役者が階段の蔭に潜んでいそうな、そんな感じ。いやあ、アブない、ちょうアブない。
ともあれ21世紀にもなってこんなホテルが残っているのには驚きました。というよりもマジすごい。調べてみたらココは現役。素泊まり3500円で泊まれるそうです。ってことでさらにびっくりでありました。
例によってテキトーな案内。
みなとみらい線「元町中華街」駅からおおむね2分くらい。
中華街の中のかなり端っこの方にポツンと建っております。3階建てっぽいけど、屋上にバラックのようなペントハウスがあるので4階かも。鳩小屋的なものも見えますがよく解らんです。
周りが明々とした中華街の店店なので、ホテル前の暗さは何となく昭和的。きっと昔は大映映画に出てくるような洋行の船員さんやギャングさんたちが泊まったんでしょうね。
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懐中雑誌「ぱなし」のWebサイト。通販でも買えます
http://panassy.p1.bindsite.jp/
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まつばらあつし
matsubara atsushi
1960年 東京都葛飾区生まれ
お絵描き屋さん&文字書きやさん、時々ガッコの先生
映画TV技術協会会員・ナショナルジオグラフィック協会会員
TSUTAYA会員
http://atts60.blogspot.com/
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