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注意 この手紙は読んでから食べること。

第六回通信 年末年始事情

拝啓
白やぎ様

新年あけましておめでとうございます。
今年が白やぎさんにとって、素敵な素敵な年になりますように。

さてさて、白やぎさんはこの年末年始をどのように過ごされましたか?
私は例のごとく、雪深い田舎に帰っておりました。
そういえば白やぎさんは2年参りってご存じ??
田舎にいた時分は特に気にかけたこともなかったのですが、
わが地元では「2年参り」が大人気なのです。

それは、大晦日もいよいよ押し詰まった元旦午前零時目前に、
神社やお寺に参詣する習わしで、ゆく年くる年を前後2年にまたいで
参詣することから、「2年参り」と呼ばれているのです。

私の地元では、なぜかこの2年参りが非常な隆盛を誇っており、
冬の日本海特有の雪や風にも負けず、老若男女がいそいそと出かけていきます。
私が毎年行っている近所のお堂は、
岬(というか崖)の上にポツンと立っているかなりのデンジャラスエリア。
近所の人間がこぞって訪れるため、2年参りの時刻には行列がひきもきらず。
寒風がビュウビュウ吹きつける殺人的な悪天候の中、
鼻水をすすり、震えながらも、自分のお参りの番がやってくるのを待ちます。
「自分は今、なぜこんなに必死な思いをしてここにいるのだろう」
という疑問が時おり頭を掠めますが、なぜか毎年やめられない。
日本人の祭りDNA、おそるべし。
ラテン人種にくらべたら地味ではにかみ屋と思われがちな日本人ですが、
立派にお祭り大好き気質だと、私は思っています。
吹雪の中、順番待ちをしながら食べる甘酒や炊き出しはおいしいですよ。
寒い寒いと言いすぎたので、白やぎさんは敬遠されるかもしれませんが、
今度ぜひ、あのお堂でいっしょに2年参りをしましょう。

敬具



黒やぎさま

あけましておめでとうございます。
あっという間に年末、そして新年を迎えましたね。
黒やぎさんにとっても、今年が素晴らしい一年になりますように。

「2年参り」って素敵なネーミングですね。
雪深い黒やぎさんの故郷で、上着を着込んだ人々が赤い頬をして
行列をつくっている姿が目に浮かぶようです。
今度ぜひ連れていってくださいな。

白やぎ家は、昔は毎年お正月を父親の実家で過ごしていたので、
年始のお参りは村の神社へ行っていました。
長い階段をのぼったところにあるお堂には、
村中の人々が持ってきたお神酒が所狭しと並び、
それを参拝者が順番に開けて盃を酌み交わすのがお正月の習わしでした。
凍りつくような寒さに震えながら、
静かなお堂でお神酒を飲む瞬間は空気がきりっとしていて、
自分も大人の仲間入りをしたような気分に
なったことを覚えています。

最近はお正月に帰省すると、地元の友だちを誘ってドライブがてら
いくつかの神社をめぐって初詣のはしごをします。
毎年かくれたテーマがあって、会社を辞めて専門学校へ行く子がいる年は
学業成就で有名な神社を回り、恋愛話で盛り上がった年は縁結びの神社をめぐり、
仕事を頑張る気になった年は商売繁盛の神社を回る……といった具合です。
そういえば、私の故郷にはみうらじゅんの『とんまつり』に登場するような
キワモノ神社も揃っていることだし、
今年はキワモノ参りとしゃれこんでみようかしら。

それでは、今年もますます黒やぎさんからのお手紙楽しみにしてます。

白やぎ 拝

第七回通信
やぎの怖いモノ

第六回通信
年末年始事情

第五回通信
ここがヘンだよやぎの家

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