<第一席:遊び方>
投扇興は、老若男女、多くの方々が気軽に楽しむことのできる遊びです。世間一般ではまだまだ珍しい遊びのひとつですが、友人・知人、あるいは親戚などが集まった時などの、余興や時間つぶしに投扇興はいかがでしょうか?ちょっとした話題づくりにもなりますし、年末・年始の集まりなどにももってこいです。
本格的に取り組むとなると、実際には細かな決まり事がたくさんあるわけですが、ここでは私が普段遊んでいる形式を基に、簡単にポイントをご紹介して行きます
【「席」の配置】
試合を行う場所を「席」と呼びます。
投扇興の試合は1対1の対面形式で行われます。
さらに、対戦する投者2名の他に、得点を決める「銘定行司(めいていぎょうじ)」、落ちた的や扇子を片付ける「字扇取役(じせんとりやく)」、点数を記録する「記録取役」の3名が加わり、計5名で行います。人数が少ない場合には、行司が字扇取役も兼ねることで4名で行うこともできます。
試合の様子
図1
投者の座る座布団の縁から、的の台までの距離は、約160cmです。(図1参照)
初心者や子供の場合は、その距離を短くしてあげるとよいでしょう。
【投げる時の姿勢・構え方】
扇子の持ち方には厳密な決まりはありませんが、投げる際の『姿勢』には以下の決まりがあります。
座布団に正座して、
その1) ヒザが座布団の縁より前に出てはいけない。
その2) 上半身は前屈みになっても良いが、お尻が浮いてはいけない。つまり、投げる前も後もお尻は踵(かかと)についていなければならず、決して立て膝のようになってはいけないという事です。
その3) 扇子を持つ手と反対側の手は、ヒザか腿の上に置く。投げる前も後も、もう一方の手は床や座布団についてはいけません。
以上の3点さえ守っていれば、どんなに前傾姿勢をして腕を目一杯伸ばしても構わないわけです。 当然、的までの距離は短い方が当てやすいので、できるだけ扇子を前に出すような構えの方がお得です。
【得点方法】
実は投扇興の面白さの一番の特色がその得点方法にあります。
投扇興は、同じ「投擲遊び」ということで、よくダーツと比較される事が多いのですが、ダーツの得点方法は、投げた矢が刺さったポイントの数字がそのまま点数となるのに対して、投扇興の場合は、投げた扇が的に当たった後に、(床に)落ちた時の「扇と的と台の“状態”」を数十種類ある役の図式に照らし合せることで得点が決まるという部分にあります。
ですから、ダーツでは初心者が技術に勝る上級者に試合で勝つ可能性が極めて低いのに対し、投扇興の得点は少なからず“偶発的要素”が含まれることで、初心者でも高得点の役が飛び出して有段者に勝利する「番狂わせ」が時折見られます。
当然、そうした番狂わせがその場を盛り上げる事になります。この、偶然性が適度に取り入れられている点が投扇興の楽しさの源と言っても過言ではありません。
【銘定表(めいていひょう)】
投扇興の点数表のことを銘定表と呼びます。
私が遊んでいる流派では、その役の一つひとつに源氏物語の54帖の銘が付けられており、0点から50点まで約40種類の役があります。
各銘は、(前述のように)落ちた的と扇子を、月、雲、花や虫などに見立てて、源氏物語各巻のエピソードや名前にちなんだものが付けられています。
試合では、行司が1投ごとにその状態を見て“銘”を定め、「桐壺につき20点」などと点数を読み上げます。
【試合の終了】
2名の投者が各10投ずつ投げ終わったら、行司は「これにて一席万投」と言い、記録取役が「○○殿 30点、××殿 25点」と言うように両者の点数を読み上げますj?。それを受けた行司が「○○殿、相勝ち候!」と勝者の名を読み上げ、全員で礼をして試合終了となります。
銘定行司が上級者であれば、試合の流れが滞ることなく、ほとんど瞬時に銘が決まりますから、1試合の所要時間はほんの5〜6分ほどです。
いかがでしたでしょうか。
言葉で説明しようとすると、なかなか難しいものがありますが、機会がありましたら是非一度体験していただきたいと思います。 |