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第二回「ほっと指数」―アジアのカフェで―
「ほっ」とする場所を探して、旅に出る。
聞き流せば、そうかとおもうが
実は矛盾に満ちた行動だ。
わざわざ「ほっ」としに行かなくても、
家にいて電話とメールをシャットダウンして、
ビール1本抜けば、簡単に「ほっ」とできるではないか。
旅に出ると、めんどうくさいとことが、次々と発生する。
頼んだことができていない。
でたらめな道を教えられる。
なにかにつけ、ものを高く売りつけようとする。
数え始めたら、きりがない。
しかし不思議なもので、
人は「慣れる」という技を身につけている。
不愉快だったあの物売りがやってきて
今日も相変わらず、べらぼうな値段をふっかけ、
同じ口調で、説明する。
翌日も、翌々日も。
4日も同じ場所で会っていると
不快だった物売りは、いつのまにか、
時間つぶしの話し相手になっている。
奴がたまに来ない日があると、
裏路地からひょっこりあらわれないか
チャイをすすりながら、目線で探している。
翌日、なにもなかったように姿を現した。
「昨日はどうしていた」
「家にいた」
「稼がなくていいのか」
「holiday」
その意外な言葉にちょっと「ほっと」しながら
奴の口上をBGMに、今日も甘いチャイをすする。 |
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