33　夢の家　家の夢　＜１＞

あなたの住まう
その町から
その時代から
遠く遠く離れて
かつて大地が平板で
地の果てが存在すると思われていた時代に
生きている
と想像しよう

なんとその地の果てまで
わずか2キロほどの場所に
あなたは土地を購入して
あー
　地の果てまでたったの２キロ
　などという広告に踊らされて
これから夢の家を建てようとしている

ここまでどうやって来たのか
ここからどうやって帰るのか
ここでどうやって暮らすのか
不動産会社の担当者が立ち去った後の
『地の果て１番地』で
それでもそんなことを考えることすらできずに
ただ憧れの場所を手に入れたという高揚感の中
二人は幸福であった

「本当に地の果てに来たね」
夫の夢見心地の言葉など妻には何も届いていない

低い価格からは想像もできない
広大な土地の上に
架空のワイヤーフレームを立ち上げて
どんな間取りにするか
脳内モデリングの真っ最中なのだ
*
つづく

＜じゅんぺい＞

Website→ http://sowzow.com/