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「ゆれる防衛本能」(3)

音は知らせる

 いっぽう「匂い」と共に重要な防衛手段のひとつとなるのが「音」で、これも妻からは「犬みたい」といわれる理由なんだけど、睡眠中に地震が来るとその数秒前に目が覚めるという「特技」(?)がある。

 いつもの朝にゆっくりと目が覚めていくような感じではなくて、ふいの「覚醒」、それこそ「バチッ」という気分。よく映画で悪い科学者が悪い実験をしていてよくわからない不気味な機械についている高電圧のスイッチを「ガチャン!」と入れるシーンがありますよね。あんな感じ。そして「なんだなんだ」と目を覚ましてボーッとする刹那、遠くの方から「地鳴り」が聞こえたかと思うと、ひと呼吸置いて「グラッ」とくる。じっさい何度も経験してるけど地震発生までの時間が短すぎて何もできません。役にたたねー!

 強いて言えば地震発生の「瞬間」に目を覚ますよりは「若干は正確な対応ができる可能性」が高い分くらいは「得」と言えるかもしれない。でもやっぱりあまり役に立ちませんね。もうすこし早く目が覚めれば逃げたり何かできると思うけど、数秒じゃせいぜい頭を覆うくらいが関の山だ。無駄な「能力」といえば無駄である。あるけれど特に役には立っていない、いわば盲腸みたいなもんですかね。「盲腸力」とでも言うべきか。

 ところで問題はその地鳴りの音が、近隣の線路上を走る電車の音にとても似ていることで、数分身構えて、何もないとわかると「それは電車である」と判断してホッと安心して寝てしまうものの、あれには毎度慣れなくてちょっと身構えてしまうのだ。

 軌道からの距離は最短の直線でおよそ200m(Google Map調べ)。ほかに音のない深夜の時間帯でなければ気がつかないのだが、寝ているとわかる。終電の時間は夜半過ぎの1時前でちょうど蒲団に入る頃なので、寝入りばなに感じるその微少な振動と音が地震による地鳴りを思わせてとまどってしまう。

 そういえば夏場に窓を開けて寝ていたら、朝となりのアパートから聞こえてくるアラームの音で目が覚めたこともあったっけ。こいつがまたぜんぜん起きなくて延々鳴り続け、暑いから窓を閉めるわけにもいかず、しかたなくこちらが起きてしまった。

 よく映画やドラマ、あるいはコントで「水道の蛇口から出る水滴の音で眠れない」なんていう描写があるけれど、あんなのは眠れなくなること必至で絶対アウト。それほど音に敏感な質(たち)の僕があまりの無音に驚くものがある。

<つづく>

「ゆれる防衛本能」
(5)
見ざる聞かざる嗅がざる

「ゆれる防衛本能」
(4)
「無音」の恐怖

「ゆれる防衛本能」
(3)
音は知らせる

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