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「ゆれる防衛本能」(2)

ナマグサイ朝

 先日の朝。起きて寝室を出て、リビングのドアを開けると部屋中が「何だかナマ臭い」。後から部屋に入ってきた妻も入るなり「ナマ臭〜い」という。

 「まさか床の下でネズミや野良猫なんかがお亡くなりになっているんではないだろうね」

 などと夫婦でおののきながら探すもののどこをどう探しても「生臭さ」の原因がわからない。どうも床下や天井裏など局所的でない、なにか部屋全体にほのかに漂っているというぐあいで、首をかしげながらコーヒーを入れ、ヨーグルトを出そうと冷蔵庫を開けてわかりました。

 どうやら数日前に作った「アヒージョ」(魚介類などのニンニクオイル煮)が犯人で、残ったニンニクオイルをボウルに入れ、ラップして冷蔵庫の棚に置いたもの、これがどうやら何かの拍子にこぼれて棚の上に広がっていたらしい。

 このオイルにはたっぷりと「アンチョビ」が入っていて(コイツだ)、同じ棚に置いてあったジャムやヨーグルトの瓶の底にこのオイルが付いて、それを出して常温の部屋に置いた結果、アンチョビの生臭さが広がったというわけです。

 気づくのに小一時間かかったものの、オイルを別容器に密封して棚板は出して洗い、オイルが付着したと思しい箇所を布で拭いた結果、匂いは消えました。

 「臭い匂いは元から断たなきゃダメ」
ってヤツですか。朝から大汗かきましたが。

 この「匂い」。食べ物が危険な状態になっていることを知らせるだけじゃなくて「事件」や「事故」を察知するためにも役立ちます。「ガス漏れ」、「石油漏れ」、あるいは「ビニールが焼けるような匂い」なんかがしたらどこかで漏電や電気機器がショートしている可能性がある。日常生活は元より車の運転中なら「ゴムの焦げる匂い」がしたらどこかで異常な発熱が起こっている証拠だし、街なかを歩いているときなら火事が起きていることだってあるかもしれない。

 ひょっとしたらたとえば「戦争状態」にある国に住む人達なら「硝薬の匂い」なんかに身の危険を覚えることもあるだろうから、匂いの種類によってはある意味「獲得形質」という側面もあるのだろうと推測するけれど、いずれにせよ「匂い」に敏感なことは「自らの生命を守る」という意味において、「動物」としての人間に備わった防衛能力のひとつといっていいと思う。

 僕も個人的にはわりと匂いには敏感な方で、空気中に「雨の匂い」を感じて「雨が降るかも」というとかなりの確率であたります。妻からは「犬みたい」とか言われますが、たいていそういう時って外にいると十中八九傘を持っていないから、ぜんぜん役に立たないんだよね。そうして我が家に500円(最近は300円)の傘が増えるわけだ。
<つづく>

「ゆれる防衛本能」
(5)
見ざる聞かざる嗅がざる

「ゆれる防衛本能」
(4)
「無音」の恐怖

「ゆれる防衛本能」
(3)
音は知らせる

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