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「肥大する過去ログ」(3)

肥大する過去ログ
 ここで唐突だが2013年に「ローマ法王即位」の報を伝えた1枚の画像に驚いた話に移る。
 かの新法王「フランチェスコ1世」がバルコニーに現れた瞬間、群衆がこぞってスマートフォンを法王に向けて掲げる様子を後ろから撮影したもので、まるでコンサート会場で観客がライターの火を灯しているかのように液晶の白い光がサン・ピエトロ広場を埋め尽くしている写真についてである。前回の法王選出の報を伝えた「液晶光なし」の画像と並べられて印象深かった。


<法王即位のphoto>

 まぁこの光景は「法王の即位」に限ったことではないだろう。今という時代はどこでも、いつでも、たとえそれが何かの「歴史的瞬間」でなくとも、誰もが携帯で、スマートフォンで、デジタルカメラでその映像を記録する時代である。静止画像ばかりではない。動画もある。以前報道されたロシアに落下した隕石の映像は車載カメラで撮影された動画だったし、このところの地震の様子を伝える映像も視聴者がスマートフォンで撮影したものが多かった。

 これはそれなりに性能のよい記録装置と記録媒体が簡単に入手でき、しかもそれが普及していることの証左だろう。そして、今はまだその解像度や映像の画質がそれほど高くない場合も多いけれど、どちらもこれからどんどん改善されて行くであろう事、またその開発速度も加速するであろう事は容易に予測できる。ということは。

 今、この瞬間も世界中で膨大な映像と画像が記録、保存され続けているということ、そしてこれからさらにその質と量は加速度的に進化・肥大していくということである。その記録される画像と映像の総量は、想像するだけでも気が遠くなりそうで、これはいささか文学的にすぎる感想かもしれないが、なにやら空恐ろしくなってくる。そこでスティーグリッツの時代を考えるのだ。

「ゆれる防衛本能」
(5)
見ざる聞かざる嗅がざる

「ゆれる防衛本能」
(4)
「無音」の恐怖

「ゆれる防衛本能」
(3)
音は知らせる

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