茶柱横町 茶柱横町入口へ
 
 
プロフィールを見る
前を見る 次を見る

「追憶のナイアガラ」(2)

『時代と音楽の蜜月』
 小学生時代後半から中学生になる頃の「音源」というと、まだレコードプレーヤーは手元にないので、やはりラジオかテレビである。テレビは「ビート・ポップス」に「ヤング720」、ラジオならFEN(現AFN)の「アメリカントップ40」や、民放局の数少ない洋楽番組から流れる主にイギリスとアメリカからのポップスで、この頃の洋楽と言えばこの辺りからしか聴く機会はなかったといっていいだろう。

 あとは2つ年上の姉が買う「ミュージックライフ」などの音楽雑誌で読むことのできる文字と、たいていスキャンダラスだったりおもしろおかしく撮影された写真が主な情報源で、雑誌からは音が聞こえてこないから、ミュージシャンについての知識は想像と妄想がない交ぜになってすごいことになっていた記憶がある。

 その頃聴いていたミュージシャンをざっと思い出して並べてみる。

 ザ・モンキーズ、デイブ・ディー・グループ、ルー・クリスティー、シュープリームス、アーチーズ、アニマルズ、P・F・スローン、グレン・キャンベル、オハイオ・エクスプレス、ルル、ペトゥラ・クラーク、メアリー・ホプキン、バッド・フィン ガー、ホリーズ、ハーマンズ・ハーミッツ、アソシエイション、ハミルトン・ジョー・フランク&レイノルズ、トミー・ジェイムス、ボビー・シャーマン……キリがないのでやめるけれど、いわゆる「ポップス黄金時代」だ。

 こうして眺めると玉石混淆、ホリーズやアソシエイションなどの本寸法のバンドも、オハイオ・エクスプレス、アーチーズといったいわゆるノベルティもののバンドもすべてがメルティング・ポットのようになっていておもしろい。

 そして、当時のヒット・チャートを見て気がつくのはこれら「ポップスの王道」、あるいは「ロックの萌芽」のような音楽と共に、先に書いた「ビリー・ヴォーン」のようなイージーリスニング曲が入っている(まぁ映画のテーマ曲だったりするんだけ ど)ことで、さらにたとえば1966年の年間チャートを見ると、「サンシャイン・スーパーマン(ドノヴァン)」や「19回目の神経衰弱(ザ・ローリング・ストーンズ)」と並んで、なんとフランク・シナトラの「夜のストレンジャー」がランクインしてい たりしていることにあらためて驚くのだ。

 そんな事実に出会うと、あらためて今のように流行っている楽曲の傾向が均一化することなく、幅広い種類の人達が上下に広い年齢層に亘って音楽が聴かれていたこの時代は、人々と音楽の「蜜月時代」といってもいいような気がしてくる。

シナトラ
https://www.youtube.com/watch?v=SF09jJlJCU0

ドノヴァン
https://www.youtube.com/watch?v=U9zxj4RE0O8

ストーンズ
https://www.youtube.com/watch?v=wU1kTuVSUOw

 そして高校生になって「ビートルズ解散」を経験し、僕の「ポップスとの蜜月時代」も終了し、オールマン・ブラザース・バンドとの出会いをきっかけに「ロック」へと住民票を移すのである。

<つづく>

「ゆれる防衛本能」
(5)
見ざる聞かざる嗅がざる

「ゆれる防衛本能」
(4)
「無音」の恐怖

「ゆれる防衛本能」
(3)
音は知らせる

バックナンバーiNDEX
前を見る 次を見る
| 著作権について | このページのトップへ | 茶柱横町入口へ |