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Vol.22
『世界は偏愛で出来ている【岡村靖幸】』

◆評価経済社会の中、僕らはどこに向かうのか?

 最近は、インターネット上にエンターテイメントや情報がたくさんあるし、テレビもあるし、Fuluなどの動画配信サービスでは何千本の映画が見放題一ヶ月980円だし、Sony musicのMusic UnlimitedでもFuluとほぼ同額で数百万曲が聞き放題。
 ラジオもポッドキャストが無料で楽しめるし、ニコ生も月額約500円みたいな時代だ。
 ファッションでも、ファストファッションと言われるForever21、ZARA、ユニクロなどが台頭。

 これって何十年前とかの話ではなくて、たった数年で起こったすごい産業の変化だ。
 まぁでも、みんな面白がったりしてるけど、満足がったりしてるけど、基本的に、そういうところで安く売られてるものって、つまらないんだよね。
 ただ、消費がかっこいい、っていう風潮も、もうずいぶん昔になくなっているのも事実だ。
 今はフェラーリやロレックスよりも、募金やボランティアの方に価値観の比重が移っている。
 そしてSNS時代の台頭とともに、他人もしくはコミュニティ間の「評価」がお金に変わる(もしくは同等、それ以上の)価値を生み出している、という社会に移行している。
 こういったことに関しては、岡田としおの【評価経済社会】に詳しい。



評価経済社会って、最初は岡田さんが言っていただけだったけど、もう社会通念になりつつある。
(下記参考) http://blogos.com/tag/評価経済社会/

 お金の価値が変わらないけれど、お金に変わる価値がやってくるというこの社会の中でいきる僕ら。
 そこで考えてみる。

 これから、人は「お金」や「時間」、「愛情」、「感情」など、限りある資源を、一体なにに使うようになるのだろうか。
 ぼくはやっぱり、偏愛やこだわり、そして、個人が持っている情熱のようなものとか、よく分からない期待、見た ことのないものをみたいという原初的な好奇心、とかがいつだってキーワードになるのだろうと思う。
 ぼくらは、少なくとも僕個人は、情熱を持って一生懸命自分のことを真摯にやっている人を応援したいという気持ちにあらがうことができないのだ。

◆シャブで3回掴まったって -【期待】が消えないアーティスト-

 最近、というかここ数年、ずっと僕は特に岡村靖幸が好きだ。
 岡村ちゃんこと岡村靖幸は80年代にデビューしたシンガーソングライターで、踊りも顔もキモカッコイイ、昔から今に至るまで熱烈なファンを持つオンリーワンなアーティストだ。
(詳しくはこちら↓)
http://ja.wikipedia.org/wiki/岡村靖幸


 田代まさしよろしくシャブで3回も掴まって、プレスリーよろしく激太りしたりしながらも、今も現役で音楽活動を続けている。
 とにかく、音楽に対する真摯な情熱がすごい。
 ずっと昔から、プロデュース、作詞作曲、楽器演奏、もちろん歌、踊り、全部自分でやっている。
 そしてそのクオリティたるや最強だ。

岡村靖幸「ぶーしゃかLOOP」
http://www.youtube.com/watch?v=sTC65iC3oqI


岡村靖幸「ぶーしゃかLOOP」LIVE
http://www.youtube.com/watch?v=d-XBrHzEYyU

※この楽曲に関しては、坂本龍一教授も大絶賛!

 ユリイカの今年7月臨時増刊号は、まるまる280ページ弱、岡村ちゃん特集で、都築響一、湯浅学、松尾スズキ、浜崎貴司、坂本龍一、サエキけんぞう、茂木健一郎などをはじめとする「岡村ちゃんフリーク」の著名人、文化人たちが熱っぽく語っていてとても楽しい。
 ぼくが最も感動したのが、そのユリイカの分厚い特集の最後、「岡村靖幸全作品解説」という記事の一番最後の文章だ。
――ユリイカ2013年7月号 P276から抜粋――

 「では(岡村靖幸は)何を象徴しているか。
 それはもうはっきりと、今まで聴いたことのないすごい音楽が聴ける、今まで見たことのないすごいものが見られる、そういう見えない【期待】としか言いようがない。
 期待できる相手、というのが世の中は減っているからだ。
  宇多田ヒカルもかつてはそういう対象だったが、海外進出に失敗したことで【いい曲をうまく歌う安定して質の高いアーティスト】 に落ち着いたと思う。
 もちろん岡村も何度もプレッシャーに負けて失敗している。
 けれども、なぜか期待が消えていない。
 これは岡村に海外進出してほしいとか、何千万枚も売れてほしいとか、そういう世界的ビッグスターへの期待ではなく、あくまで創作物とパフォーマンスで自分たちを魅了してくれることへの期待からだろう。
 前例主義のカバーソングと、間違ってはいないが面白みに欠ける感謝系ソングで溢れた2000年代、テクニックの情報共有速度が上がり質は高いが感動はしない音楽ファイルでハードディスクが埋められていく2010年代。
 どぉなっちゃってんだよ、無難なロックじゃ楽しくない!
 そう思ってしまった人が、岡村靖幸を求めるのだ。
 そうだろ?

 ほんと、その通りだ。

 今度、岡村ちゃんのこの間の全国ツアー「むこうみずでいじらしくて」映像化ライブDVDが出る。こういう「こだわりと期待の詰まったコンテンツ」には、絶対にある一定の人が、金を出す。(ぼくもその1人だ)
 全てがフリー化(無料化)していく世界の中、人が持つ「愛」という有益な資源は、常に向かう先を探しいている。
 つまり、そう言うことなんだと思う。

高橋 大樹



HP「高橋大樹のマーケット放浪記」
http://hirokitakahashi.com/

連載(毎日更新)commodity-board.com
https://commodity-board.com/2011/05/post-6345.html


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『世界は偏愛で出来ている
【岡村靖幸】』

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