茶柱横町 茶柱横町入口へ
 
 
プロフィールを見る
前を見る 次を見る

Vol.10 愛おしい狂人『タップダンサー 熊谷和徳』

 六本木、ミッドタウンの最上階に位置するBillboard Tokyo。世界最高峰のミュージシャンやアーティストを見ることができるそのハコに、9月18日、タップダンサーの熊谷和徳が登場した。

 日本では、ソニー・サイバーショットのCM出演や、カヒミカリィとの結婚などで知られているようだが、世界的には、ブロードウェイの「NOISE/FUNK」のオーディションに合格し、また、権威ある米『ダンス・マガジン』において『観るべきダンサー25人』の一人に選ばれるなど、人気と実力を兼ね備えた有数のダンサーとして認知されている。

 なお同氏は、『きれいでクラシックなタップ』という既成概念の破壊者としても有名だ。DJやヒューマンビートボックス、クラシック楽団などありとあらゆるタイプのアーティストと共演するそのフットワークと挑戦心が彼のトレードマークである。

 その日のキーワード(コンセプト)は、アフリカ、ジャズ、クラシックの3つ。
舞台にはクラシックのストリングス数人に、ジャズドラム、トランペット、ピアノ、ベース、そしてコンゴ。その前には、桜材の板が置かれていた。

 演奏が始まる。リズム隊がアフリカの大地を想起させる音を奏で始めると会場はもう、すべて、飲みこまれる。タップシューズの裏側の鉄と桜の木がぶつかり合う音。静かだったり、荒々しかったり。ゆっくりと、いや高速で。すぐに、熊谷氏の肌から汗が噴き出す。

 ガラス越しに見える六本木の夜景や、高いワインを楽しむ暇など与えない。時に夢遊病者のように、時にてんかん患者のように踊る熊谷氏。トランペットと向き合い、殺意を投げ合う。エネルギーの塊がぶつかり合う。アフリカのリズムからジャズに行ったかと思うと今度はクラシック。揺れてはいるが、曲の体幹は鉄のように強く硬い。あやふやなキーワードなのに、コンセプトの強さでショーのすべてが統一されている。

 75分、あっという間であった。
 アンコールが終わった後、ぼくは感動で声も出なかった。

 何かに突き動かされて仕事をする人は、狂人のようだ。ダンサーも、演奏者も、作家も、画家も。板の上で体を震わせていた熊谷氏も、間違いなくその一人だ。洗練など無縁。ゆえに研ぎ澄まされている。他者への迎合など無縁。だからこそ、愛される。 そう、愛おしい狂人だ。

 挑戦そのもの。
 それが熊谷氏の踊り。

 彼の震える体、魂の叫びに、心が震えた。

 もうこれは、心の底から本当に、もう神に誓っておススメである。


熊谷和徳ブログ「Hoofin' Is My Music Dance 4 Freedom」より
http://tapperkaz.exblog.jp/14594408/
熊谷和徳オフィシャルサイト・スケジュールより
http://www.kazukumagai.net/information/



HP「高橋大樹のマーケット放浪記」
http://hirokitakahashi.com/

連載(毎日更新)commodity-board.com
https://commodity-board.com/2011/05/post-6345.html


Vol.24
出版させていただきました

Vol.23
ジャックバウアーが学校の
先生だったらよかったのに

Vol.22
『世界は偏愛で出来ている
【岡村靖幸】』

バックナンバーINDEX
前を見る 次を見る
| 著作権について | このページのトップへ | 茶柱横町入口へ |