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Vol.5 マンガ「カイジ」がハンパじゃなく面白い


<明日からがんばるんじゃない…今日…今日だけがんばるんだっ…!
今日をがんばった者…今日をがんばり始めた者にのみ…明日が来るんだよ…>
賭博破戒録カイジ 1巻より


 「賭博黙示録カイジ」
 このマンガを知っている人は多いだろう。

 2000年、ヤングマガジンに連載を開始した後、爆発的な人気を誇り続けている福本伸行氏の代表的作品である。07年にはアニメ化、その2年後の09年には藤原竜也を主演に映画化されている。その他、パチスロ機やゲームにもなっているが、やはりマンガが一番面白い。

 僕はむかしからマンガが好きで、今でも、風呂でゆっくり浸かりたいときには、”風呂で読む用”のマンガをわざわざ買ってきたりする。つい数日前、それ用のマンガを買うためにコンビニに寄ったら、「カイジ・チンチロ編」が目に飛び込んできたのである。それを買ってしまったらもうダメ、、、とたんに中毒のようになってしまって、1巻から買いなおして、暇さえあれば読んでいる。

 このマンガのストーリはいたって単純だ。
 自堕落な生活を送っていた青年カイジは、知人の借金の保証人になってしまったことを機に、裏ギャンブルを主催する巨大消費者金融グループ「帝愛グループ」にかかわる羽目になってしまう。借金を返すために、カイジは仕方なく(…というか進んで…)グループとの勝負を続けるというもの。

 その裏ギャンブルというのがまたオリジナリティーにあふれてる。
 船の中での「ジャンケン」や、死と隣り合わせの「鉄骨渡り」、「ティッシュ箱くじ引き」など、一見単純そうなゲームに、”人を熱くさせる”ルールを織り込むことでストーリーを複雑化させる。
 そのルールがけっこう難解だったりして、最初は読むのが面倒になったりするのだが、一度覚えてしまえばその後はもう、パズルを解く感じというか、ミステリーを読み進めるような快感を味わえる。

 ところで、もともと放蕩生活を送っていたカイジ。
 賭ける金など持っているはずもない。
 何を賭けるかというと、若いカイジが持っているもっとも価値あるもの。
 『自由』や『健康』である。

 『自由』というのは、「強制労働施設」で働くことを意味している。
 『健康』というのは、たとえば、カイジの目、耳、指などのことを指している。
 いや、別に臓器売買をするというわけではなく、ただの帝愛グループの悪趣味なのだ。(実際、カイジの耳と指は一度切断されることになる)

 しかし、耳を削がれ、指を切断されても、ギャンブルの熱に焼かれたカイジの脳は、突き進むことを止めない。

 作中では、心理戦を通して、カイジのひりついた脳から垂れる言葉たちが溢れてくる。
 その一つひとつがまた名言なんである。
 マンガの域を悠々と超えて、とにかく読者の心を打ちまくる。

 たとえば…

「一生迷ってろ…!そして失い続けるんだ…貴重なチャンスをっ!」
賭博黙示録カイジ 7巻

「奇跡なんて望むな!『勝つ』ってことは…そんな神頼みなんかじゃなく…具体的な勝算の彼方にある…現実だ…!勝つべくして勝つ…!」
賭博破戒録カイジ 7巻

「苦しく難しい決断になると、自分で決めない…そうやって流され流され生きてきた…その弱さがこの土壇場で出た…この結果は言うならば必然…これまでのオレの人生のツケ…!」賭博黙示録カイジ 1巻

「目先を追うな!耐えることなくして勝利はないんだっ!」
賭博黙示録カイジ 2巻

「直観を信じたいっ…!直観は…オレの血肉…オレの…歴史…!」
賭博堕天録カイジ8巻


 またこの作品は、社会の構図の中で必ず存在する「貧乏人」と、その対称としての「金持ち」を直接的に対比させることによって、人間の本来的な「精神の触れ幅」がいかに大きいかを表現することに成功している。

 人間がいかに凶暴か。
 そして脆弱か。
 善意と悪意。
 良心とその裏側にある黒い何か。

 観念的な作品ですらある。

 風呂で本を読む習慣のある人は、ぜひ今夜コンビニへ。
(あ、Appstoreで1・2巻程度は無料で読めるので、iphone持ってる人はお試しダウンロードも!!)



HP「高橋大樹のマーケット放浪記」
http://hirokitakahashi.com/

連載(毎日更新)commodity-board.com
https://commodity-board.com/2011/05/post-6345.html




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