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どこでもドアなんて いらない

夏休みですね。長いお休み。

旅行に行く人もいるでしょう。田舎に帰る人も。
時間もかかるし、お金だってかかる。
こんな時、どこでもドアがあったなら。
夏休み「国民が選ぶ“ドラえもんの道具”の中で欲しいもの」
ダントツ一位は「どこでもドア」だと思うんだな、私としては。

2ヶ月前の事。
10年ぶりに昔の友人と会った。
新幹線なら２時間で行き来できる距離。
その２時間分の距離が、ワタシ達を10年間引き離したワケだ。
どこでもドアがあったなら、
きっとひと月にいっぺんくらいは会ったんじゃないか、とも思うのに。

久しぶりに、顔を合わせて話して笑って。
でも、楽しく朗らかな時間はあっという間に過ぎていく。

「また会おうね！」
そうは言ってみたものの。
こんどいつ会えるのか。
果たして会えないかもしれない。
その心もとなさ。

別れた後、一人になった車内で。
さっきまでの時間を、心の中で何度も転がしてみる。
とうに、溶けてなくなったアメ玉の、
舌に残る甘さを名残惜しく味わうように。

こういう感覚は、「どこでもドア」があったら味わえないよね。

人と人というのは、何かしらで切り裂かれるものだ。
距離や気持ち、それから生き死に。
だからこそ、繋がってることを大切に思い、慈しむ。
細い糸が切れぬように。

物理的な労力を厭わず、距離を飛び越える。
離れて暮らす人の顔を見に、はるばると。
それこそが人との関係をくっきりと際立たせる、
そのシルシとなるような気がしてならないのです。

やっぱり、「どこでもドア」はいらないや。

イラストレーター●タカタカヲリ
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