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エグザイル

人が国をつくろうとするとき、かならず異分子が生まれ出ます。
人間の歴史は、治める人々と、主義を違える民が織りあげたタペストリーのような気がしています。
一枚の歴史絵巻の織目には、いくつもの「被征服民」という「文様」がかくされています。
いままで彷徨った旅先で見聞きした、歴史の影に追いやられた人々の異聞伝承。
それらから、「まつろわぬ人々」という横糸をほぐし出し、
あらたなタペストリーを織り出してみたいと思っています。
エグザイル。
直訳すると「亡命・流浪・流刑・国外追放」です。
その言葉に、勝手ながら「辺境に追いやられながらも、立つ意志を持つ人々」という意味を与えてみました。
様々な史実に沈殿したエグザイルな人々。
私の心の中に滴り落ちてやまないエグザイルエッセンス。
これは、そんなエッセンスをもとに創りあげた異境世界イメージボード集です。


Board-3


■場所/まちはずれ・旅籠前
■花謳う月、満月まで二日・朝



竜騎兵、旅籠の前に、竜を止める。
外には旅籠の女。
傾きかけた標識が、
その場所が町のはずれであることを物語っている。
降り立つ騎兵。


騎兵、女の方へ向かい歩き始める。
他の二騎の兵士は、竜から降りる気配はない。
後方を護るように竜を歩かせている。
掃除の手を止め、近づく騎兵を見やる女。
射るような視線だ。


■登場人物#3 旅籠の女。

年のころは二十歳前といったところか。
部族独特の縫い合わせられた衣服が、
この地に生まれたことを示している。



女の前で立ち止まる騎兵、兜を脱ぐ。
顔の傷跡がひどい。隻眼だ。
生死の境をさまよったに違いない大きな刀傷が、
左頬から左目をかけあがり、頂頭部まで続いている。
右頬も肉がそげ、ひきつったような表情だ。
圧する気は発していないが、一部の隙も、ない。
後を行き来する二騎は部下らしい。
がしゃがしゃという帷子の音が、
朝の光と不釣り合いな緊張した空気を醸している。


■登場人物#4 ドラムリンの竜騎兵/イメージラフスケッチ。

顔の傷跡で表情が読みにくい。
背面、外套の下に楯、腰に剣、
ライフルのような、長剣のような武器を持つ。
鎧は金属のリサイクルで作られているようす。



対峙する二人。
女が口をひらく。

「こりゃあ、ドルメン騎甲長閣下、
こんな朝はやくから、いそがしいこったね。
朝めしなら町なかの旅籠の方が、あんたらの口にあうもの出してくれるはずだよ」

「あいかわらずだな、我がうるわしのパミーラ」

ドルメン騎甲長と呼ばれた傷の男が、ニヤリとこたえる。
旅籠の女、名はパミーラというらしい。

「実はお前さんの焼くパンの大ファンなんだがね。
しってるか?俺たちの仲間にも、
蕎麦粉で作ったパンを食う物好きがいるってことを。
こんな辺鄙な属国に飛ばされたんだ。楽しみなんてなんにもない、
と思っていた矢先に知ったのが、我らがパミーラ嬢のお焼きになるパンさ。
時たま市場で手に入れるそいつでワイン。
それが駐屯地での愉しみのひとつでね。これはほんとさ。
母国ドラムリンじゃ、あの神がこねたような味わいには、
めったなことじゃ会えんからな。まあ、予約も入れずにきたんだ、
さすがに今から焼いて食わせろとは言わんよ。」

「くだくだうるさいってんだよ。
この町外れで竜から降りるなんて、なんの用さ?」

「そう目を剥くなよ、パミーラ。
ちょっとそこの板きれに貼ってもらいたいものがあってね」
ドルメンが、旅籠の傍らに立つ傾きかけた告知板を、親指で指し示す。
破れた羊皮紙の残滓が、
板に打ちこまれた何本もの釘の下にわずかに残っている。

「お前達のイクシオン公国の総代が決まった。
イクシオン公国学府長のアガザノ総長だ。」

パミーラが目を少しばかり細める。

「アガザノ?あの、公国ご用達の学者先生?」

「決まったといっても、まあ、どろどろした政治の世界だ。
ドラムリン王国のお偉方とイクシオンのお偉方、
そしてアガザノの駆け引きだろう。
アガザノが、おまえらの国の<何か>を、
うちらのお偉方に差し出したんだろうな。 そうでなけりゃ、
学者もどきが総代になれるわけがないからな。
ふん、まあ、お馬鹿な俺たち軍人のしったこっちゃないがね。」



「アガザノ、か…。」

窓際から様子を窺うクナイがつぶやく。
ドルメンが、雑嚢から一巻きの羊皮紙をつかみ出し、
パミーラの前に広げて見せる。

「そんなわけだ。ドラムリンとイクシオン両国の名においての告布状だ。



そこの告知版に打ち付けさせてもらう。」

後方で竜を降りる部下が羊皮紙を受け取り、告知板に走り寄る。
打ち付ける様子を見るパミーラ。

「お前さんのパンは、あらためて予約を入れてから伺うよ。
ドラムリンワインの手土産つきでね。」

竜にまたがるドルメンの傷顔が、一瞬笑ったかのようにひきつった。


◆ギャラリーサイト
http://www.termnet.co.jp/furuyama/
◆創作雑記ブログ
http://trumpet-tugboat.seesaa.net/

Board-7
■場所/廃虚
■花謳う月、
満月まで二日・夕刻間近

Board-5
+
Board-6

Board-4
■場所/赤の崖
■花謳う月、満月まで二日・朝

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