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エグザイル

人が国をつくろうとするとき、かならず異分子が生まれ出ます。
人間の歴史は、治める人々と、主義を違える民が織りあげたタペストリーのような気がしています。
一枚の歴史絵巻の織目には、いくつもの「被征服民」という「文様」がかくされています。
いままで彷徨った旅先で見聞きした、歴史の影に追いやられた人々の異聞伝承。
それらから、「まつろわぬ人々」という横糸をほぐし出し、
あらたなタペストリーを織り出してみたいと思っています。
エグザイル。
直訳すると「亡命・流浪・流刑・国外追放」です。
その言葉に、勝手ながら「辺境に追いやられながらも、立つ意志を持つ人々」という意味を与えてみました。
様々な史実に沈殿したエグザイルな人々。
私の心の中に滴り落ちてやまないエグザイルエッセンス。
これは、そんなエッセンスをもとに創りあげた異境世界イメージボード集です。


Board-2


■場所/宿場にて
■花謳う月、満月まで二日


男は客引きを一瞥をくれながら、旅人に部屋の同宿を持ちかける。
ちょっと戸惑いながらも同意する旅人。
男が客引きにひとこと。
「二人で五十。それでいかがかな?」
気圧された客引き。苦笑いしながら、諦めたように肩をすくめる。





■登場人物#2 僧兵。
-顔の入れ墨から察するに、高い位のようだ。
何度戦地をくぐり抜けてきたのか、楯の傷が生々しい。





船着き場を後に、崖沿いにへばりつくような家々を横目に、
宿へ向かう三人。
思いのほか口調が柔らかい僧兵。旅人にどこからきたのか尋ねている。
「昨日までいた町は、南に三つ岬を越えた町です…。」
口数少なく答える旅人。
客引きが、ちらちらと後を振り返る。
僧兵が気にかかるようだ。





宿に着く。
客引きが扉を開け中にいざない、大声で中に怒鳴る。
「客ば連れて来たぞ!一番いい部屋さ、通してさしあげろぉ!」
客引きと思っていた男はどうやら宿の主人らしい。
間髪おかずに中から返事が。
「どこの部屋もおんなじだ!」





ドアをくぐると、テーブルが置かれた食堂に女が一人。
声の主だ。
足が悪いのか、左足を引きずりながら桶に水を運んでいる。






「部屋は階段のぼって右側一つ目!
扉の取っ手、壊れかけてっから気ぃつけてよ!
鍵はねぇよ!連れ込みはお断りだがらね!」
階段の上を指さし叫ぶと、女は仕事に戻りかける。
と、階段を上る二人の背中を追いかけるように、夕食の時間を告げる。
どこかに翳がある。





荷物を下ろし、窓の外に目をやると、日が暮れかけている。
部屋の円窓から船着き場が見える。
旅人が乗ってきた船から、灯が消えている。
どうやら、錨をおろしたようだ。





夕食の時間、階下に降り古びたテーブルに席をとる二人。
客は僧兵と旅人だけだ。
出された食事はシチュウらしき皿一枚と、
傍らのカゴに入った、何かを練って焼いただけのもの。
器を匙でかき混ぜながら、僧兵が口をひらく。
「ウサギ肉と蕎麦がこれだけとは、なんとも貧しい土地だね。
ところで名前をまだ聞いていなかったね。私は、クナイ・ムンディ。
見ての通り僧兵でね……。
僧兵なんていうと、このご時世罰当たりだな。
見方によっちゃ用心棒といわれてもうなずくしかないがね……。」
「僕はルクス。ルクス・ジョード。
パイプ吹いて、お金もらってあちこち流れてる。
この半月、かせぎもさっぱりさ。
僕が吹く曲、聴いているあいだは、皆、満足そうなんだけどね。」
旅人が笑いながら答える。
夕食を済ませ、酒を手に徐々に打ち解ける旅人ルクスと僧兵クナイ。
クナイの口調は、強面の表情からは想像できないほど静かだ。





「ドラムリン」という言葉が二人の間を行き交う。
どうやら国名らしい。
「兵」という言葉が、ところどころに差し挟まれる。
宿の主人と女は、二人を気にかけつつも後片づけに忙しい。
片づけながら、二人の会話にまゆをひそめる女。
夜が更け、クナイとルクスは部屋へと戻る。






突然飛び起きるルクス。
遥かからくぐもった地響きが朝の空気を震わせている。
円窓には剣を手にした僧兵が、すでに身を寄せている。
後ろ姿から立ちのぼるぴんと張りつめた、気。





窓の外、村外れから続く道の向う、
徐々に土煙の中、シルエットがせり上がる。
近寄るルクスにクナイが、ぼそりつぶやいた。
「竜騎兵三騎。ドラムリンだ…」

◆ギャラリーサイト
http://www.termnet.co.jp/furuyama/
◆創作雑記ブログ
http://trumpet-tugboat.seesaa.net/

2009年謹賀新年
-前回までのあらすじ-

Board-7
■場所/廃虚
■花謳う月、
満月まで二日・夕刻間近

Board-5
+
Board-6

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