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あきら「茶柱句会 第三部 第54回茶柱ツイッタ−句会」

─俳句なう─
「第54回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」
(着信順 投句のまま)
一人六句まで(1ツイ−ト3句以内x2)
3月8日〜3月22日締切り
兼題 <彼岸>
あるいは自由題(当季 仲春・晩春・春)



中日の入り日に直り日想観

円空が刻める佛山笑ふ

中華街に盛唐の詩句桃華園

ボーダレスにP・M2.5涅槃西風

門前の老舗の暖簾木の芽漬

白木蓮陸奥のこと忘れまじ
(以上六句 大阪市 あきら)


此の分ではつばめ帰らず彼岸寒

母逝きて六十五年彼岸道

姉の経ようやくすんで彼岸餅
(以上三句 加古郡 はつを)


入学の大志消え去ることはなし

春の水掬ひて今昔物語

山の端の吸いゆく月のおぼろなる

水取や大和心をはこびくる

夜の帳いでて三色三鬼の忌
(以上五句  寝屋川市 いさむ)


雛に似る人銀盤におごそかに

許すまじと問い詰める顔をんな雛

薄目開け菜の花まみれ道祖神

マンホ−ルそこに咲くのかスミレ草

陽だまりの家はやばやと子持ち猫

花衣母の小さき足偲ぶ
(以上六句 横浜市 兎巣)



字句補足説明
順番に
中日(ちゅうにち)(仲春) 山笑ふ(春) 桃園(晩春)
涅槃西風(ねはんにし)(仲春) 木の芽漬(仲春) 白木蓮(仲春)と季語 
<中日>は彼岸中日のこと 季語としては彼岸の傍題の季語
3月18日に彼岸入り3月24日に彼岸明け ちょど中日(なかび)にあたる
春分の日の祝日にして弘法大師の生誕の日という目出度き日3月21日
日は真東から出て真西に沈む 真西には西方浄土(涅槃)があるとされるので
<日想観(にっそうかん)>は日の入る真西を向いて行われる
日想観は座禅などをして精神の集中を図り自己の心性に宿る仏性に
思いを至らす観法の一つ
大阪では西に海があり一心寺や夕陽丘一帯で行われてきた歴史がある
それに阿倍野ハルカスの展望台が最近加わった
<円空>円空(1632〜1695)江戸時代前期の遊行僧
全国に独特の作風の仏像(円空仏)を数多く残した
心の趣くままに刻んだひょうきんなものからシリアスなものまで
どれも見る者の心を和ませる<山笑ふ>はこじ付けともいえない
円空仏の前では山も笑ふ
中華街の店名は出所が詩的
例えばこの<桃華園>李白(701〜762)作
<春夜宴桃華園>「春夜に従弟の桃華園に宴する序」
<天地者 万物之逆旅>「天地は万物の逆旅(げきりょ)」逆旅は旅館のこと
<光陰者 百代之過客也>「光陰は百代の過客」
から得られた 店主の得意顔が目に浮かぶ
芭蕉は杜甫や李白ら盛唐の詩人に憧れた
奥の細道の冒頭「月日は百代の過客──」はまるで小保方博士のコピペばり
<コピペ>はコピ−アンドペ−ストの略 つまり電子的剽窃
<P・M2.5>parculate matter直径2.5マイクロメ−トル以下の超微粒子
肺の毛細血管にも入り込み肺癌の原因にもなるといわれる
厄介な物質にはボ−ダレスな国境
<涅槃西風>が黄砂のみを運びくるのは止むを得ないとしても
涅槃西風は釈迦入滅の涅槃会(陰暦2月25日ごろ)に吹く西風
黄砂にも付着してくるとなると<春霞>をのんびり眺めてもおれまい
<門前>山椒の香りが漂う鞍馬寺の門前 佃煮を商う数軒の老舗が軒を連ねる
木の芽は主に山椒のこと<木の芽漬>は
山椒の新芽と昆布を醤油で長時間煮詰めて作られる
<白木蓮>葉に先駆けて白い花が咲く
その白色は純白よりも黄色味を帯びた絹の趣がある
白い花はやはり鎮魂の花<陸奥忘れまじ>と思ってしまう

はつをさんの句
順番に彼岸寒(仲春)彼岸道(仲春)彼岸餅(仲春)の季語
一句目には<中国の宣明暦では春分の初候を
玄鳥至(げんちょういたる)というが>
という前書きがあたがこの欄では前書きを認めていないのでここに記す 
彼岸に関する句を三つ揃えられた
二句目 <母逝きて六十五年彼岸道>はご母堂追慕の愛惜の心情身につまされる
三句目<彼岸餅>春は「牡丹餅(ぼたもち)」秋には「お萩」と呼ばれる
供養を終えてほっと一息

いさむさんの句
順番に入学(晩春) 春の水(春) おぼろ(春) 
水取(仲春) 三鬼の忌(晩春)が季語
二句目<今昔物語>平安時代の1120年〜1449年ごろに成立したとされる説話集
白河法皇・鳥羽法皇の院政期に成立したとみられている(wikipedia)
「今ハ昔」という書き出しで始まることから「今昔物語」と呼ばれる
「説話」というのは民間に語り伝えられた物語・神話・伝説・童話などの総称
よってこの作者は不詳とされるが宇治大納言隆国という説もある
大きくは三部構成になっている
すなはち天竺(インド)震旦(中国)本朝(日本)
仏教関連(法華経)の説話も多いところから いさむさんの座右にあるようだ
句としては<春の水>と<今昔物語>との取り合わせの句
三句目<山の端の吸ひゆく月のおぼろなる>情感豊かな(一物仕立て)の秀句
朧月が昇る直前の情景描写<山の端の吸ひゆく月>とはなかなか詠めない

四句目<水取りや>東大寺二月堂で営まれる国家安泰を祈願する修二会
陰暦二月(今では三月)十二日深夜・十三日未明に堂前の若狭井から水を汲み
本尊の十一面観音立像に供える「観音悔過(けか)」
名に反して堂内の実態は錬行衆による壮絶な悔過(ひたすら罪を悔い詫びる)
外見上は錬行衆参堂の足元を照らす籠松明の灯りを見るばかり
季語としては<お水取り>というのが一般的<水取り>は傍題の季語
五句目<三鬼の忌>新興俳句の旗手として活躍した
俳人西東三鬼(1900〜1962)の忌日
(1962(昭和37)年4月1日)岡山県津山市出身
1948(昭和23)年「天狼」を山口誓子(1901〜1994)と共に創刊
1928(昭和4)年シンガポ−ルで歯科医院開業
艶福家でハイカラでダンディだったと伝わる
三鬼に<おそるべき君等の乳房夏来る>の句がある
俳句界でも面倒見のよかった三鬼の死を悼む句が寄せられた
三鬼の訃報に石田波郷(1913〜1969)は
すかさず<万愚節半日あまし三鬼逝く>
渡辺白泉(1913〜1969)は<万愚節明けて三鬼の死を報ず>と詠んだ
白泉には他に1939(昭和14)年<戦争が廊下の奥に立ってゐた>という
無季の反戦句があり官憲に睨まれた経緯があった
このように西東三鬼についての予備知識がなければ<三鬼の忌>といっても
なんの感慨も浮かぶわけがない
「○○忌」という俳人や著名人の忌日を詠む句は よくみかけるが仲間内の隠語
のようなもので一般の読者に十分届くとはいえないので注意したい

兎巣さんの句
順番に雛(仲春)女雛(仲春)スミレ草(春)
菜の花(晩春)子持ち猫(晩春)花衣(春)
一句目 フィギアスケ−トの浅田真央さんや安藤美姫さんの顔が浮かぶ
二句目 <をんな雛>何事も度を超すとその見返りは己にくると思うのだが
このをんな雛には容赦というものがない
四句目 <菜の花まみれ>が一面の菜の花畑の中の道祖神をよく表している
六句目 <花衣>は花見に行く女性が着る晴れ着のこと
ご母堂の形見だろうか 足袋を合わすと小さくて思わず母を偲ぶ
花衣は綺麗な季語 元禄時代のあでやかな小袖が思い浮かぶ


<同人欄>

「遍路」あきら(代表同人)vol.42

七○歳の七五○ccでうつ遍路かな

遍路笠サンティアゴ・デ・コンポステ−ラ

リハビリの同行二人遍路杖

人生の初期化をせむと遍路かな

海峡を帰還したらしてふと逢ふ

字句補足説明
表題の遍路(春)以下探梅(晩冬)・梅が香(初春)
梅暦(初春)なども傍題の季語
一句目<七○歳の七五○cc>は<ナナマルのナナハン>と読む
<七○歳(ナナマル)>は女優の夏木マリさんが<六○歳>になられた時
六十歳とも還暦といわず<ロクマル>と宣言されたことに感じ入って
僕は七十歳になったら古希ではなく<ナナマル>宣言しようと思ったことによる
<サンティアゴ・デ・コンポステ−ラ>santiago de compostela
フリ−百科事典Wikipediaの詳しい解説をご覧になると楽しい
ロ−マ(バチカン)とエルサレムに並ぶキリスト教の三大聖地の一つ
スペインの北西部に位置する聖ヤコブ(san Roque)の
遺骸が祀られている大聖堂
を目指す巡礼路を多くの信者が歩く 四国遍路のもっと国際版のようなもの
サンティアゴを目指していろんな巡礼路があるようだ
かつて雑誌の写真でみたバルの片隅に置忘れられた日本の遍路笠の思い出
西国八十八ケ所を巡礼した人はさらにここにも脚をのばしたくなるらしい
<人生の初期化>細胞の初期化といえば今や流行語
初期化とは初めの状態に戻す(リセットする)ことをいう
つまり長年にわたってこびり付いた灰汁を落とすこととでもいおうか
遍路や巡礼にはそのような効用があるようだ 
<海峡を帰還したらしてふに逢ふ>
エスプリヌ−ボ−を推進した詩人・安西冬衛(1898〜1965)の一行詩「春」
(1929(昭和4)年)がかねてより心に残っていた
昨今のロシアとウクライナのクリミア問題に関連して改めて想起
<てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った>
韃靼海峡(だったんかいきょう)日本では間宮海峡として知られている(はず)
その名が示すように江戸時代後期の
探検家で測量家の間宮林蔵(1780〜1844)が
地理上の謎とされた樺太が島であることを海峡の発見によって証明してみせた所
(北方領土とは本来この千島・樺太を含む広大なもので
矮小化された四島ではない)
当時モンゴル帝国の遊牧民全体がヨ−ロッパではタルタル
(タタ−ル)中国では韃靼
と呼称されていた クリミアにはクリミア・タタ−ルがいた
<海峡を帰還したらしてふ(蝶)に逢ふ>は春の幻想である


「梅」兎巣(同人)vol.12

観梅や欲深き人も無き人も

白梅に頬寄す女修羅の眉

山里の梅の古木や夢に精

字句補足説明─鑑賞の手引─
順番に
観梅(初春) 白梅(初春) 梅(初春)が季語
<訂正とお詫び>
前々回の投句欄にになされていましたが
僕の不注意で掲載ができませんでした
ここにお詫びして掲載させていただきます

二句目それにしても<修羅の眉>とはそら恐ろしい
修羅は阿修羅の略<妄執>やむことない執念と白梅の対比
美しい花に顔を近づける恐れを知らぬご婦人方ならよく見かけるが─
兎巣さんの新境地?


「春の水」はつを(同人)vol.40

春の水飲んで跳ねたるフラミンゴ

春の水八百八橋にことごとく

菜をつつき金糸雀春の水を飲む

魯山人粘土こねたる春の水

淡海に日輪いこふ春の水

字句補足説明─鑑賞の手引─
表題の春の水から全てが同じ春の季語
<春の水>は生命賛歌の瑞々しい季語の三句
一句目の<フラミンゴ>がそれを象徴
三句目 金糸雀(カナリア)は昔の人の言い得て妙のじつに上手い宛て字
<魯山人(ろさんじん)>北大路魯山人(1883〜1959)
美食家としてもよく知られるが
芸術全般に一家言をもち 陶芸にも造詣が深く作品も残す
毀誉褒貶も多いが堂々たる人生だったといえる
<淡海(あはうみ)>は淡水の海→近江→湖水→琵琶湖を指す
<日輪いこふ>と表現されて具体的な景が立ち上る


<講評>茶柱句会主宰 あきら(代表同人)
関西の言い伝えなど─
暑さ寒さも彼岸まで
春はセンバツから
お水取りの頃に最も冷え込んで
終われば春が来る
荒れる大阪場所(春場所)
綱取り鶴竜の優勝
先物取引の発祥の地
デリバティブの大阪取引所開所(3月24日)

参加者数4名(312名) 参加句数20句(809句)()内は累計数
同人のはつをさんはコンスタントに投句欄と同人欄に無欠席継続中
同人の兎巣さんは前回も参加だったので連続参加継続中
前回は参加されていたのに不注意で欠席としてしまいお詫びして訂正します
今回から<字句補足説明>を<字句補足説明─鑑賞の手引き─>とした
理由は詠み手(俳句を作る人)同士の俳句結社の蛸壺俳句ではなく
他の文学作品(川柳や小説や詩など)のように現代社会のど真ん中に提示して
俳句を詠まずに読むだけの読者にも門戸を開くという意志を鮮明にするため
多くの俳句は俳句を詠む仲間内で理解しあう約束事(隠語)で成立しており
鑑賞の手引きがないと一般の読者には真に伝えたいことが理解されにくい
読む人(読者)が俳句を読む楽しみを味わえるようにすることが
当句会が当初から心掛けてきた
どなたの至言か失念したが
<書かれた言葉は「読まれることによって」実在となる>
「言葉」を「句」に置き換えれば俳句批判になる─心したい─
こんな批判に晒されることによって俳句の社会性が磨かれてゆく
2月末の読売新聞でノーベル物理学賞(1973年)の江崎玲於奈(1925〜)さん
「ノーベル賞を取るには<してはいけない5ケ条>」
<俳人のための心得>とも読めるので以下に転載
1.しがらみにとらわれてはならない
2.大先生を尊敬しても のめりこまない
3.無用な情報を抱えこまない
4.主張を貫くために戦うことを避けてはならない
5.初々しい感性と好奇心を失わない
僕は氏の言葉<真空管をいくら研究してもトランジスタは生まれない>が好きだ
茶柱句会が茶柱横町という場を借りて俳句を発信し続ける理由の一つは
まさに上記<5ケ条>の<5>の故である
フランス文学者・桑原武夫(1904〜1983)の
「俳句第二芸術論」(1946(昭和21)年雑誌「世界」)に
与する気はさらさらないが
現代俳句界とそれに連なる蛸壺俳人らの勘違いだけは正したいと思っている
形骸化した俳句結社には未来はない

─俳句なう─「第55回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
4月8日〜4月22日締切り 2014年5月8日掲載予定
一人6句まで(1ツイ−ト3句以内×2ツイ−ト)
兼題は<桜>
あるいは自由題(当季 春)でも構いません)


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