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あきら「茶柱句会 第三部 第51回茶柱ツイッタ−句会」

謹賀新年
2014(平成26)年 甲牛 元旦
茶柱句会主宰 あきら


─俳句なう─
「第51回茶柱ツイッタ−句会(初句会)参加作一覧」
(着信順 投句のまま)
一人六句まで(1ツイ−ト3句以内x2)
12月8日〜12月22日締切り
兼題 初詣 御慶 初富士
あるいは自由題(当季 新年・暮)



初詣大神さまに御酒の縁

横町の大木戸開き述ぶ御慶

初富士や夫婦岩から二人して

初景色明石大門を跨ぐ橋

宝船阪神港のファルセット

三が日せめて七施の二つ三つ
(以上六句 大阪市 あきら)



氏宮の隣りに住んで初詣

御節には日陰の蔓飾らばや

御前酒の帯封を解く御慶かな
(以上三句 加古郡 はつを)


ご神体の石拝みけり初詣

寺の子の御慶やふかぶか頭さげ

初富士や詩歌うるはし大和なる

冬帽子ピエロの語る神話かな

寝酒して矢数俳句に親しまむ

冬の日やひらく奥の細道新書版
(以上六句  寝屋川市 いさむ)


初詣等間隔に善き男女

初富士の鋭き姿一富岳

初富士にジグザグ道を描く群れ

初富士や甲府の人も拝まれむ
(以上四句  横浜市 兎巣)


枯芝のぽっかり浮かぶ三笠山

一日にひとつ楽しみ冬来る

手毬歌メタセコイアの並木道
(以上三句 奈良市 ゆたか)初参加



字句補足説明
初詣 御慶 初富士は兼題で新年の季語
初景色 宝船 三が日と新年の季語
<大神さま>は大和国一の宮の三輪明神 大神(おほみわ)神社のこと
ご祭神は大巳貴神(おほあなむちのかみ)
倭大物主櫛賑魂命(やまとおほものぬしくしみたまのみこと)つまり大国主神
天の香具山をご神体とする古代からの原初の神祀りの姿を留む
僕はそのような由緒を知る前から神社としての佇まいに建築的な興味を持ち
折にふれて参拝していた
やがてお酒の神様らしいと知り<御酒のご縁>としてお参りするようになった
近年は足が遠のいていたが年に一度 初詣をと思い立った
<初富士>元旦に見る富士山のこと
伊勢・二見が浦の夫婦岩の間から天候が良ければ物理的には見えるはず
空気がきれいだった昔は見えたという話もある
伊勢土産で有名な赤福餅の包装紙にも書いてある
<明石大門(あかしおほと)>は明石海峡のこと
現在はそこに明石大橋が架橋されている(大阪の南港からも眺められる)
<阪神港>大阪港と神戸港その間の小さな港を一体的に機能させる
ス−パ−港 中国の上海や韓国の釜山港に互するために構想された
正月に見る大小の貨物船はみな宝船といっても過言ではない
<ファルセット(falsetto)>仮声 
高音域に対応するための声色そのための発声法
裏声とも訳されるが別物のようだ
港には船の汽笛や警笛など高音が飛び交っている それを表現
古代 船で西から大和を目指すと明石海峡が入り口となるところから
<明石大門>あるいは<明石の門(と)>と呼ばれていた
万葉集巻3─254に柿本人麻呂(660頃〜720頃)の歌
<燈火(ともしび)の明石大門に入らむ日や漕ぎ別れなむ家のあたり見ず>
また同巻3─255にも人麻呂の<天離る(あまさかる)鄙の
長道(ながち)ゆ恋来れば明石の門より大和島見ゆ> 
<三が日>正月の一日 二日 三日のこと(いずれも新年の季語)
仏教には財施・法施・無畏施など三つの布施の教えがある
地位や財産がなくてもできる布施<無財の七施(しちせ)>は
雑宝蔵経に述べられる七種の因縁のこと すなはち
眼施(慈眼施)・和顔施(和顔悦色施)・愛語施(言辞施)・身施(捨身施)・
心施(心慮施)・牀座施・房舎施の七つの行為
せめて二つでも三つでも実行したいという思い
和顔・愛語に眼施で三つならどうだろう 心掛け次第で実行できそう

はつをさんの句
初詣 御慶は兼題の新年の季語
二句目<御節(おせち)>は季語ではなく
(正月や五節句の飾りや祝い料理のこと)
<日陰の蔓(ひかげのかずら)>が仲冬の季語
ヒカゲノカズラ科のツル性のシダの一種(巨大な苔を連想させる)
山野に自生する
日陰草 美しい常緑で変色しないので古来宮中の神事に用いられた
一句目はつをさんは神社のすぐ隣りにお住まいなのでこの通りの初詣
三句目は<あきらさんよりお酒を頂く>との添え書きがあったが
投句欄では前書きや添え書きは掲載していないので割愛
このお酒は 
はつをさんが所属される古志の結社誌に巻頭句として掲載された
お祝いとしてお届けしたもの
巻頭句というのはその号の投句の一番の句ということで俳歴に残る快挙
その句は<強さうな茄子を選んで馬ひとつ>

いさむさんの句
順番に初詣 御慶 初富士と兼題で新年の季語
冬帽子 寝酒 冬の日と冬の季語
今回はやさしく詠まれたので 字句補足も不要かと思われるが
五句目<矢数(やかず)俳句>について若干の補足説明を
昔 <矢数俳諧>興行というのがあった
京都・三十三間堂の矢数(通し矢)の競技に模して
一昼夜・24時間以内にできるだけ多くの句を詠み
その数を競った その俳諧のことをいう(その記録はなんと23,500句とか)
寝酒は眠るために飲む酒のことだから 数は多いが退屈でつまらない句
を読んで眠ろうとする作者がみえてきて可笑しい
また二句目にはいさむさんの日常が垣間見える
ご紹介すると いさむさんは天台宗のお寺のご住職
<冬帽子ピエロの語る神話かな>このピエロ ホスピタルクラウンだろうか
クリスマスの病室で過ごす子供たちに神話を物語っている図が浮かぶ

兎巣さんの句
順番に初詣 初富士が兼題で新年の季語
初詣の人が等間隔に歩いているという兎巣さんの観察が一句になった
下五<善き男女>は信仰心の厚い善男善女のこと
初富士の三句
それぞれに兎巣さんらしい着眼点がある
たとえば<富士の鋭き姿>の措辞 雪を冠った頂だろうか
そこから四方へ傾斜が広がる独立峰の美<一富岳>とした下五が効いている
<富岳>は富士山の意の漢語的表現
<富嶽三十六景>といえば江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎(1760〜1849)の世界的名作
兎巣さんは<一富岳>と控えめに表現されたが これも立派な富嶽図
世界遺産に認定されて一段とご来光を拝む大勢の人の列が
山頂までジグザグと続く
<初富士>はこちら側だけでなく
きっと反対側(神奈川県からみた山梨県にかぎらず)の人も
拝んでおられるだろうという推測の助動詞<拝まれむ>の下五の措辞が
余情を生んだ このような言外の趣が短い詩型では効果的
自分だけがこの世に生きているのではない
近頃は他者に思いを馳せる想像力が欠如した人が多い
せめて俳句を詠む人は他者への心慮を忘れないでもらいたい
兎巣さんの句からそのような思いが伝わってくる

初参加の奈良市のゆたかさんの句
順番に枯芝(冬) 冬来る(初冬) 手毬唄(新年)
初参加で戸惑いもあられたようだが初句会へのご参加
「ようこそ」(あきら)
初句会の句揃いとはならなかったが
一句目<三笠山>は奈良の若草山の異称
枯芝の趣とよく呼応している(緑の芝生なら若草山だろうが)
この枯芝 やがて山焼きで古都奈良の夜空を染める
枯芝だが新年の行事を待ち望む余韻が言外に現れている
これも広い意味で新年を期待する句といえる
二句目<一日にひとつ楽しみ>の措辞にゆたかさんの謙虚な姿勢が現れて
好感がもてる<冬来る>の下五もいい
嫌われ者の冬だがこうして待っている人もいると思えば楽しい
<手毬唄>の句は<メタセコイアの並木道>とのとり合わせの句
シュ−ルな取り合わせだが新年の句としても通用する
これを機縁に参加を継続されることを期待したい


<同人欄>

「ユリカモメ」あきら(代表同人)vol.39

句帳にも良き日記買ふ葉書大

声明と祝詞の間(あはひ)聖歌隊

遠近法凍つる彼方へルミナリエ

天を突くチアの一群石蕗の花

陸奥の仮設に三度注連飾り

渡り来し生命の姿態ユリカモメ

字句補足説明
順番に日記買ふ(暮) 聖歌(冬) 凍つる(冬) 
石蕗の花(つわのはな)(冬)
注連飾り(新年) ユリカモメ(冬)が季語
<形態は常に機能に従う>(form follows function) 
(form ever follows function)米の建築家ルイス・サリヴァン
(Louis Henri Sallivan)(1856〜1924)の
近代建築思想を象徴する有名な格言
僕はある時期この言葉を念仏のように唱えながら建築に取り組んだことがある
いまは 俳句にこの精神を反映させるべく日夜研鑽している
もう一つ俳句と近代建築のテーゼの近似性を思い出す
<レス・イズ・モア(Less is more)>直訳で
<より少ないことはより豊かなこと>
さらに<神は細部に宿る(God is in the detail)>
いずれも20世紀の近代建築の四大巨匠の一人
ミースファンデルロ−エ(Ludwig Mies von der Rohe)(1886〜1969)の至言
俳句を始めて<ユリカモメ>を粒さに見たとき 
これらの言葉が咄嗟に浮かんできた
飛来してきたばかりのユリカモメの姿態こそが証明している──と
同人欄の表題にして初句会に選んだ所以
一句目<葉書大>下五に具体的な大きさを提示
この大きさなら持ち歩きも卓上用も兼用できる
<ルミナリエ>は阪神大震災1995(平成7)年1月15日の後その年の12月から
第1回が始まった<神戸ルミナリエ>2013(平成25)年は第19回目だった
僕は第1回から見ている 涙がでるほど美しい光のア−ケ−ド
その遠近法が当時の様々なことを想起させる
<声明と祝詞の間>の句は若干注釈が必要
大阪の御堂筋に面して南御堂という大きな寺院があり少しおいて難波神社がある
久しぶり訪れるとその間にキリスト教の教会が建っていた
多神教の日本ならではの光景としてクリスマスの句とした
この南御堂の向かいで芭蕉が亡くなった 
俳人にとってかけがえのない聖地でもある
この後のはつをさんの同人欄の句にも登場する


蓑虫の音」はつを(同人)vol.37

12月1日伊賀上野吟行
蓑虫も紅葉の錦まとふらん

蓑虫庵の掛け軸「蓑虫の音を聞きにこよ草の庵 芭蕉」を見て
蓑虫の音の軸見ゆる縁紅葉

独り喰ふ伊賀の牛鍋明日句会

拾ひたる芭蕉生家の竜の玉

翁難波の花屋で逝かれる
夕しぐれ見果てぬ夢や海の細道

字句補足説明
順番に蓑虫 紅葉と秋の季語
牛鍋は鋤焼の傍題の冬の季語 竜の玉 夕しぐれも冬の季語
はつをさんはある句会の吟行で伊賀上野へ行かれた
伊賀上野はいわずと知れた芭蕉の故郷
<蓑虫庵>門人の服部土芳の草庵で芭蕉五庵のうち唯一現存
芭蕉を敬愛するはつをさんは一日早く現地へ行かれた
それは三句目にみえる
そしてその目的は芭蕉ばかりでなく
伊賀の伊賀牛にもあることが牛鍋でわかる
五句目の前書<難波の花屋>は大阪・南御堂前の花屋仁右衛門の邸のこと
1693(元禄7)年10月26日 芭蕉逝去(享年51歳)
そこから天満・八軒屋まで運ばれ川舟で京・伏見まで上り
遺言通り膳所の義仲寺に埋葬された
<海の細道>についてははつをさんの芭蕉追慕の旅の補遺で触れているので
ここでは割愛する
この句 句の形としては下五が七音と異常に長い字余り
作者によれば芭蕉への憧憬の深さ故の余情残心ということだが如何
しかし<夕しぐれ見果てぬ夢や>までは秀逸で実に調べが佳い)


「大晦日」兎巣(同人)vol.11

ぢつとして充電中也日向ぼこ

底浅きをとこ風邪ひく事始め

道端の片手袋や大晦日

年惜しむ声聞く寝床暖かし

字句補足説明
順番に日向ぼこ(冬) 風邪(冬) 事始め(暮?) 
大晦日(暮) 年惜しむ(暮)が季語
一句目 日向ぼこの姿を充電中と捉えた兎巣さんの着眼点
太陽光から直に充電していると見た
このように表現すると人間は宇宙と直結していることが見えてくる
何気ない<日向ぼこ>も宇宙との交信と思えば愉快
二句目<事始>については地域によって差異があるので注意が必要
2月8日を事始にして12月8日を事納とする地域(東京・神宮館蔵版暦)
季語歳でも注釈付で暮の季語としている
この句はこのような理由で主たる季語(冬)を<風邪>とする


<講評 あきら(茶柱句会主宰)>
2014(平成26)年初句会
じゅんぺいさんの横町のご配慮を得て今年も開催することができました
ありがとうございます
参加者数5名(301名) 参加句数22句(753句)()内は累計数
今年も同人のはつをさんはコンスタントに投句欄と同人欄に無欠席継続中
いさむさんは茶柱の読者に沿った句作を発表されました
同人の兎巣さんの俳句 今年も健在
以って範とすべし
奈良市のゆたかさんが初参加されました
読者の皆様方 本年もご購読賜りますよう 宜しくお願い申し上げます

─俳句なう─「第52回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
1月1日〜1月22日締切り 2014年2月8日掲載予定
一人6句まで(1ツイ−ト3句以内×2ツイ−ト)
兼題は<左義長(さぎちやう)>あるいは<どんど><七草(ななくさ)>
あるいは自由題(当季 新年・冬) 気分を新たにしてご参加下さい


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