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あきら「茶柱句会 第三部 第36回茶柱ツイッタ−句会」
及び「2012年度 第2回立柱賞」作品発表

─俳句なう─
「第36回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」
(着信順 投句のまま)
9月8日〜9月22日締切り
一人六句まで(1ツイ−ト3句以内×2ツイ−トまで)
兼題  なし 自由題(当季 秋)




丹波霧皹ぜて落ちたる早生の毬

懸崖の波浪は高し菊の尖

月影の揺れて吊り橋けもの道

自在への道は冷まじ阿修羅の目

洋梨の香り置たる銀器かな

皺のなきテーブルクロス海は霧
(以上六句  大阪市 あきら)


方丈の弾かぬ琵琶きく秋初め

初秋や護符書く神子の筆づかひ

初秋や河合神社で受ける護符

初秋や瀬見の小川の石の橋

鴨川の流れは絶へず霧の径

仲秋や水欲しげなる野菜どち
(以上六句  加古郡 はつを)(代ツ)


ゆるゆるとわが子に文を長き夜
(以上一句  鈴鹿市 天白)


新しきしめ縄を綯う秋祭

色なき風嗅ぎ行く犬の不安顔

山粧う夢に太りし獣かな

なにもかも忘れて秋のプ−ルかな

金盥漣立ちて冷まじき

虫の音や未だに居場所定まらず
(以上 六句  横浜市 兎巣)


字句補足説明
順番に 霧 菊 月影 冷まじ 梨 霧と秋の季語
丹波桐は丹波の早生(わせ)栗(丹沢)が皹(は)ぜる合図 
関西では栗といえば丹波
関東ならさしずめ長野県の小布施といったところだろうか
どちらも標高200〜300mに位置する
懸崖(けんがい)は切り立った崖のこと
盆栽では根元より下方に枝や葉をたれ下げて作ること
菊作りでは懸崖菊が腕の見せ所 菊は日本の国花
月影は月の光のこと(雅語)月の光に映し出された人や物のこと
冷まじ 晩秋の頃に急に迫る冷やかさ 「凄まじい」とは異なるが
語感の中に同様の厳しさを含む
自在は 自由自在のこと 
阿修羅 釈迦の親衛隊 八部衆(鬼神)の一員 興福寺の阿修羅像は若き姿
その目が澄んで美しい(像は三つの顔と三対の手を持つ)
インドの古代神話では悪神の戦闘の神 後 釈迦と出会い善神へ変身
洋梨は ラ・フランセが有名 味はもとより香りが芳醇
歳時記では梨が秋の季語

はつをさんの句
秋初め 初秋 霧 仲秋が秋の季語
前回の<方丈の庵の琵琶や秋初め>の推敲句として断り書きをもって
投句された このように推敲を続けることも稽古の内
神子(みこ)は神 神社に仕える未婚の女性 ほぼ同義の巫女はもうすこし
呪術的な行為をするときに用いる
河合社 下鴨神社にある鴨長明所縁の神社
瀬見(せみ)山形県最上町にある瀬見温泉郷のこと
芭蕉追慕の旅で立ち寄られることが多いのだろうか
<鴨川の流れは絶へず>は方丈記の冒頭を引用
第6句目<野菜どち>の<どち>は同士とか達の意の雅語 

天白さんの句
長き夜(夜長)が秋の季語
ようやく落ち着かれたご様子 母子ともに元気で出産されることを祈念します
<ゆるゆると>という措辞に現在の心境がよく表現された秀句 
<ゆるゆるとわが子に文を/長き夜>と切レを入れて読むと味わい深い

兎巣さんの句
順番に秋祭 色なき風 山粧う 夜長 冷まじきが秋の季語
綯う(なう)しめ縄などを拠り合わせて作ること ここでは秋祭の準備
色なき風 夏と較べて ことに空気の澄んだ秋の風にたいする表現
山粧う(やまよそおう)秋の山が色づく様子
獣(けもの)野生動物などの夢が膨らんでいるようだと作者は想像
秋のプ−ルに入るには少々覚悟がいる
秋ももっと深まってくると 虫たちも定位置をみつけるのだろうが──


<同人欄>

「夜会草」あきら(代表同人)vol.24

朝昼夜夕顔のみがウリ科なる

朝顔や朝の来ぬ日はなかりしと

朝顔や七十五日目の律儀

ハマヒルガオ醒めたる色にかかる砂

夜会草鼻腔に甘きフランス語

字句補足説明
朝顔 夕顔 夜顔がヒルガオ科で秋の季語
夕顔だけはウリ科で瓢箪が成る
表題の夜会草は夜顔の異称
昼顔だけが夏の季語
カトリ−ヌドヌ−ヴ主演「昼顔」
(原題 Belle de jour「日中の美女」)
1967年(昭和42年)仏伊合作映画 ルイス ヴェニ−ル監督
第28回ヴェネチュア国際映画祭 金獅子賞受賞
内面に淫らな妄想を抱く 医師の妻セヴェリェ−ヌが 
上流階級の婦人たちが客をとる売春宿の話を聞き
「昼顔」という名で昼間だけの娼婦になる というスト−リ−
僕は この頃流行語になった
「アンニュイ(jonnui)」という言葉を初めて
知った 「気だるそう」とか「退屈そう」という意味 
なお 続編として「夜顔」(原題 Blle loujoure「つねに美女」)が
40年後 第63回ヴェネチュア国際映画祭で上映 
監督はマノエル・デ・オリヴェイラ(96歳)
今回の句は これらのことを思いつつ詠んだもの 
朝顔は夏に咲く印象だが歳時記では秋の季語
七十五日は人の噂が忘れられるといわれる日数
<朝顔について以下 2009.9.7.讀賣新聞サイエンス欄による>
朝顔は日本固有の園芸品種 江戸時代に千を超える品種が生まれた
英名はJapanese morning glory(日本の朝の輝く顔)
古くは奈良時代に中国から薬草として伝わったもの
夜会草は南米原産 明治時代に渡来 芳醇な甘い香りを放つ


「月」はつを(同人)vol.22

仁和寺の線香の佳き香望の月

衣被山ほど育て今日の月

月清し池畔にあそぶ五位の声

名月や桐の枝葉を切り払ひ

妻出でて御簾巻き上げる良夜かな

字句補足説明
表題の月 望の月 今日の月 五位 名月 良夜(りやうや)と秋の季語
望の月は陰暦十五日の夜の満月のこと 十五夜
仁和寺(にんなじ)真言宗御室派総本山 開基は宇多天皇 仁和4年(888年)
皇室と縁の深い門跡寺院 金堂は旧紫宸殿 世界遺産登録
衣被(きぬかつぎ)サトイモの子 皮付のまま茹でる 月見のお供えに不可欠
今日の月はたんに今日の月ではなく 今月今夜の名月ということ
五位(ごゐ)は五位鷺の異称 細い脚で池畔に佇む様は秋の「あはれ」を誘う
名月は古来より観賞する習慣のある特に陰暦8月15夜 9月13夜の月を指す
良夜は特には仲秋の名月の夜を指す 一般的には月の明るい夜のこと
一連の句は見事に名月の様相を詠まれた  
なお 今年の十五夜は9月30日 十三夜は10月27日(月日は毎年変わる)
掲載日は十五夜の後ゆえ 片見の月になるが せめて十三夜だけでもご覧あれ


「秋の夕餉」兎巣(同人)vol.6

七輪で秋刀魚焼く画の暦かな

捨て難き蜂蜜の瓶通草挿す

三陸の漁港に跳ねる秋刀魚かな

芋と葱夕餉に合わすお椀かな

字句補足説明
順番に 秋刀魚 通草(あけび) 芋が秋の季語
葱だけは冬の季語 芋を主たる季語とした

<講評>
茶柱句会主宰あきら(茶柱ツイッタ−句会代表同人)
今回の参加は4名(256名)参加句数19句(542句)( )内の数字は累計
同人の はつをさんと兎巣さんは堅調 天白さんの一句 とても貴重
稲穂さんは参加が途切れやゝ心配 お見舞い申し上げます
一句でも二句でも 気晴らしにご負担のない範囲でご参加下さい
9月22日は「茶柱ツイッタ−句会」が2年前にスタ−トした記念すべき日
投句総数はお蔭様で今回で542句(同人欄は除く)を数えました
1年前 2011年度優秀作品賞(第1回〜第26回掲載分)を制定
最優秀賞の立柱賞に はつをさん
優秀賞の奨励賞に兎巣さんと天白さん
同人賞にはつをさんが選ばれました
受賞記念の作品発表の参加作をお待ちしています
はつをさんは50句を年末か年始には発表予定
兎巣さん 天白さんは受賞記念作品(30句)ご準備あれ

「季語と歳時記の会」TOPページで長谷川櫂さん絶賛と紹介されている
正木ゆう子さんの新作 詳しくは月刊「俳句」9月号「羽羽(はは)」50句を
僕は<木賊(とくさ)折れ木賊散らばる父母の夢>に惹かれた
芸術新潮の最新号の本の広告に 写真家の篠山紀信さんの言葉として
<ハッと感じたら グッと寄って バチバチ撮れ!>が載っていた
俳句にも通じる

─俳句なう─
第37回茶柱ツイッタ−句会のご案内
10月8日〜10月22日締切 11月8日掲載予定
一人六句まで(1ツイ−ト3句以内×2ツイ−トまで)
兼題は良夜 夜長 あるいは自由題(当季 仲秋)
秋たけなわ とびきりの秋の心を表現して下さい



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2012年度(第27回〜第35回)茶柱賞発表
選者 あきら(茶柱句会主宰)
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立柱賞(最優秀作品賞) 西条市 真鍋 稲穂
★噛む数の変はらぬ刀自の花見かな(第31回)

奨励賞(優秀作品賞)  加古郡 はつを
☆桜咲く夫婦して撒く牛のふん(第31回)

奨励賞(優秀作品賞)  横浜市 兎巣
☆まだ知らぬ痛みも薔薇の術の内(第32回)

奨励賞(優秀作品賞)  鈴鹿市 天白
☆春浅し胎児の手足天を蹴り(第31回)

同人賞         加古郡 はつを 
「祇園会」(第34回) 「針江の郷」(第33回)

同人賞         横浜市 兎巣
「陸奥紀行」(第35回)

茶柱選奨 以下句会順に掲載
○まずますの形となりぬ松飾り(横浜市 兎巣)第27回
○大らかな俳句を詠まん花の春  (加古郡 はつを)第27回
◎去年今年真っ暗闇に妻の背(西条市 真鍋稲穂)☆第28回
◎去年今年灼熱の生跨ぎをり(西条市 真鍋稲穂)第28回
◎お弁当温めますか春の星(鈴鹿市 天白)第29回
◎母となる実感薄し寒戻り(鈴鹿市 天白)第30回
○お握りの四角三角春近し(鈴鹿市 天白)害30回
○てんのじさんこれはこれはのさくらかな(加古郡 はつを)第31回
◎花冷えの二河白道をめぐりけり(加古郡 はつを)第31回
★噛む数の変はらぬ刀自の花見かな(西条市 真鍋稲穂)第31回
○言い負かす女黙して花嵐(横浜市 兎巣)第.31回
◎桜咲く鼓動に耳を澄ましけり(鈴鹿市 天白)第31回
◎春浅し胎児の手足天を蹴り(鈴鹿市 天白)☆第31回
○寒戻り一進一退の悪阻かな(鈴鹿市 天白)第31回
◎花筵小さき中にも四世帯(西条市 真鍋稲穂)第31回
◎桜咲く夫婦して撒く牛のふん(加古郡 はつを)☆第31回
◎まだ知らぬ痛みも薔薇の術の内(横浜市 兎巣)☆第32回
◎葉桜に妻と語らふベンチかな(西条市 真鍋稲穂)第32回
○瀬に立てば蛙の声のまんなかに(横浜市 兎巣)第33回
○味見して鮎の醤油煮買ふ針江(加古郡 はつを)第33回
◎雲の峰翁の文字をなぞりけり(加古郡 はつを)第33回
○かき氷ついに出てこぬ女優の名(横浜市 兎巣)第34回
◎方丈の庵の琵琶や秋初め(加古郡 はつを)☆第35回
○勝ち虫と雖も淋し赤蜻蛉(横浜市 兎巣)第35回
◎新涼の水の色なる和菓子かな(横浜市 兎巣)第35回
(○入選 ◎特選 ☆奨励賞 ★立柱賞)

主宰あきら ツイッタ−投句自選三句
恐竜の脚に重心ユリカモメ(第29回)
列島に桜前線活断層(第30回)
ポンツ−ンに島弧の愉悦晩夏光(第35回)

<選評>

茶柱句会主宰 あきら(茶柱ツイッタ−句会代表同人)
立柱賞の稲穂さんの句 「刀自(とじ)」という一語で俄然深みが生まれた 
これが単に「妻」だったら句としてあまり注目に値しないかも知れない
刀自とはあまり用いられないが年配の女性に対する敬愛の念をこめた尊称
稲穂さんの発展的な人生があってこその奥様に対する深い感謝の気持ち
奥様の食べ物を噛む回数という即物的な表現がリアリティを生んだ
他にも<去年今年真つ暗闇に妻の背>にも奥様への感謝の念が現れている
同時に投稿された はつをさんの<桜咲く夫婦して撒く牛のふん>も
実践と実感に基づいた秀句
どちらも共白髪のご夫婦の気負いないところがいい
兎巣さんの<まだ知らぬ痛みも薔薇の術の内>
なにやら嘗て「明星」の女流歌人を彷彿させられるが
兎巣さんらしさが出て 途切れずに参加を継続されたことも評価に値する
天白さんの<切りがなき逆子体操残暑>はユニ−クな着想だったが
後日ヒントを提供したが 下五の字足らずが解消できず 残念ながら選外
作者の気持ちは大事だが もっと大事なのは読み手に伝わる気持ち
定型に収めて作者の気持ちも納得できるところまで推敲する気概が欲しい
そこを突破しないと進歩できない 逆子体操をして「残暑」を感じただけでは
つまらない つまらないから字足らずで不自然な終わり方になってしまう
残暑を超越するか忘却するか もう一歩踏み込んだ作者の実感を聞きたい
この困難な壁を突き抜けようとするとき 自分の言葉が生まれてくる
それこそが詩語といえる 作者のオリジン
この時期 天白さんは俳句どころではなかったことが拝察できる
が 投稿して終わりではなく なお納得できるまで推敲する粘りが欲しい
  天白さんは 自分の気持ちを優先して思考停止してしまった 
まだまだ工夫の余地のある句だけに残念だった 
まだまだ推敲のチャンスはある 今後の精進に期待したい
一連の妊娠句はとてもユニ−ク
今回は春ごろの妊娠の素直な喜びの一句を奨励賞とした 
天白さんに贈る言葉
<苦しかったこをくぐりぬけると もっと野球が好きになる>イチロ−
野球を俳句に置き換えても同じことが言える
<オチ(下げ)命の落語を目指す>六代目桂文枝(襲名披露の挨拶)
「切レ(キレ)命の俳句」と読み換えることができる
参考句
はつをさんの郷土 
稲美出身の俳人永田耕衣(1900〜1997)の
辞世の句かとも思える阪神大震災(1997年1月17日)直後に詠まれた一句
<白梅や/天没地没虚空没>
実は この句 以前友人から「この句は誰の句?」と作者名を伏せて教えられた僕は<虚空没>を見て「耕衣」と直感した
<天没 地没>は言えても<虚空没>はそう簡単には言えない
東洋的無を追求してきた俳人ならではの言葉
しかも とてつもない事象を詠みながらも句型が凛と決まって 句格が高い
<白梅や>の<白梅>という季語<や>という切レ字 五七五 十七音の定型
どこをとっても狂いがない
心したい──



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第60回
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第59回
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第58回
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