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あきら「茶柱句会 第三部 第29回茶柱ツイッタ−句会」

─俳句なう─
「第29回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」

(着信順 投句のまま)
一人六句まで(1ツイ−ト3句以内 2ツイ−トまで)
2月8日〜2月22日締切り
兼題は節分 立春 余寒 冴返る 海苔 梅
あるいは当季(冬 早春)


恐竜の重心に脚ユリカモメ

梅林の勢ひぱきぱき瑞枝伸ぶ

冴返るドナ−カ−ドにする署名

みちのくに一点の瑕疵冴返る

針魚の下顎の尖初音ミク

遍路傘サンティアゴ・デ・コンポステ−ラ
(以上六句  大阪市 あきら)


節分や鬼となりたる生き仏

立春や古事記と接す時と空

薬飲む良きも悪きも余寒なほ

墓の裏念仏ひとつ冴返る

ひと口を味はう海苔の数多かな

鮮やかも色褪せもあり梅日和
(以上六句  西条市 真鍋稲穂)


観梅の薄手のコ−ト浅葱色

古りし海苔炙れば春の香り立ち

節分や子供の声を遠く聞く
(以上三句  横浜市 兎巣)


被災子の詠みし俳句の余寒かな

立春や瑞穂の国の凍て厳し

おにやらひ孫の鬼の絵届きけり
(以上三句  加古郡 はつを)


おしろいの首筋ふたつ玉椿

拝啓でペンが進まず山笑ふ

ひび割れの焼芋の声夢うつつ

寒鴉ものを見る目に曇りなし

雪の下一途な紅の蕾かな

お弁当温めますかと春の星
(以上六句  鈴鹿市 天白)

字句補足説明
順番に
ユリカモメは冬の季語
梅林 冴返る 針魚(はりうを=さより) 遍路傘 立春 余寒 海苔 
梅日和と春の季語
初音ミク 2007年ヤマハが開発した音声合成システムによる
バ−チャル・アイドル・シンガ−のキャラクタ−名 
ソフトウエア製品の商品名でもある
サンティアゴ・デ・コンポステ−ラ キリスト教の三大聖地の一 
聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)を埋葬した
教会への巡礼路(世界遺産登録)
稲穂さんの二句目 古事記(712年編)は今年1300年紀に改めて紐解かれた
おにやらひ 節分の追難(ついな)の傍題で冬の季語


<同人欄>

「風信子」あきら(代表同人)vol.17


熱燗や手酌に似合ふ備前焼

貌背く霧氷の女靡く髪

雄叫びやラガ−の青きマウスピ−ス

冬木の芽魂語るヴォーカリスト

料峭の監視カメラや逃避行

梅が香に不意打食らふねねの寺

夭逝の詩人のアジト風信子(ヒヤシンス)

字句補足説明
順番に
熱燗 霧氷 ラガ− 冬木の芽(冬萌えの傍題)が冬の季語
料峭(れうせう) 梅が香 風信子(ヒヤシンス)が春の季語
ねねの寺は京都東山 高台寺の愛称
ヒヤシンス(hyacinth)に風信子(ふうしんし)と漢字をあてた昔の人は凄い
地中海沿岸原産 ユリ科の楚々とした花 江戸末期に渡来
夭逝(えうせい)の詩人とは立原道造(1914〜1939)
建築家丹下健三(1913〜2006)と同級生
建築科の学生の頃から既に詩人としてデビュ−
亡くなる少し前に
ヒヤシンスハウスは当時浦和(現さいたま市)の別所沼に
自邸(書斎)として構想され2004年にその構想のスケッチをもとに施工された
自邸といっても小屋のような大きさ(詩作上のアジト)


「二月」真鍋稲穂(同人)vol.13

二月やまたも突き出す秒の針

早春や走馬灯には白き線

春炬燵零れ落ちたる粉薬

耳掻きをながながなと春炬燵

淡雪や笑顔のままに夜となる

百均の魅力たつぷり春帽子

百歳を墓に納めて百千鳥

古井戸の奈落へ落ちる余寒かな

字句補足説明
順番に
二月(にぐわつ きさらぎ)早春 春炬燵(はるごたつ)
百千鳥(ももちどり)余寒が春の季語
淡雪(あはゆき)は春の雪の傍題 降るそばから消えてゆく 明るく軽快
百千鳥は囀り(さへづり)の傍題 実際にはもう少し先の様相を先取り
二句目 走馬灯は回り灯篭と同じで夏の季語だが 切れ字の前の早春が主
同人欄では早春の季感でまとめられた


「余寒」兎巣(同人)vol.2

枯芝や啄ばむ鳩の一家族

冴返る朝をぬくめて包むチョコ

襟巻の尻尾の記憶余寒かな

字句補足説明
順番に
枯芝が冬の季語 冴返る 余寒は春の季語


「寒牡丹」はつを(同人)vol.15

藁苞をめぐりめぐりて寒牡丹

藁苞にどの姫おわす寒牡丹

紅映えて青葉の少し寒牡丹

鐘の音に一片散れり寒牡丹

お疲れの飛鳥大仏女正月

字句補足説明
寒牡丹(かんぼたん)が冬の季語 牡丹だけだと夏の季語になる
女正月(めしやうぐわつ)は新年の季語
藁苞(わらづと)藁を束ねて物を包んだもの あらまきや納豆の藁包みなど
ここでは牡丹を風や寒さから守る役割
作者の補足説明 
奈良葛城市染野の「石光寺(しゃっこうじ)」は寒牡丹の名所
寒牡丹と冬牡丹の違い 寒牡丹は殆ど葉がついてないのに 
冬牡丹は葉が多い(石光寺住職の話)
二上山の麓のこの辺り 当麻寺をはじめ天平時代の中将姫伝説の地 
作者は牡丹を鑑賞しながら中将姫の姿を探し求める


「横浜」天白(同人)vol.3

横浜は坂道多し寒茜

富士山に寝転がりたし春の空

船室の花嫁の父冬菫

菜の花に白波上がる海辺かな

大寺の木札新し節分会

水汲みの男来たりて水温む

字句補足説明
順番に

寒茜(かんあかね)は冬の夕焼の傍題 冬菫 
節分は冬の季語 春の空 菜の花 水温むは春の季語


<講評>
茶柱句会主宰あきら(茶柱ツイッタ−句会代表同人)
参加者は5名(226名)参加句数24句(392句)( )内は累計
同人5名の句会になった
<薬飲む良きも悪きも余寒なほ>いまは規則正しく薬を飲む生活の稲穂さん
だが暗さは微塵もない 同人欄<春炬燵零れ落ちたる粉薬>
薬を飲むことさえ句にする これこそ芭蕉のいう「かるみ」の心境か
あるいは子規のいついかなるときも「平気」でいる心境か
兎巣さん 俳句に迷いが生じ まとまりきらない状況
ただ<観梅の薄手のコ−ト/浅黄色>浅黄色(あさぎいろ)なら
観梅の邪魔にならないし 一句としてもセンスが佳い
はつをさんの同人欄「寒牡丹」は石光寺(せっこうじ)で詠まれた佳句
二上山山麓のこの界隈 天平時代の中将姫伝説の地 
句の随所に伝説の姫の姿を求めて彷徨される様子がうかがえる
コンスタントに参加の天白さん<お弁当温めますかと春の星>は等身大の句
一方 同人欄<水汲みの男来たりて水温む>は神話的 この男は神だろう
天白さんには不思議な闇がある そこが個性的で魅力
ひとつの工夫<お弁当温(あたた)めますか/春の星>と<と>を省略して
「切る」と また違った味になる
次回 自然体の俳句の勉強の成果 楽しみにしています
この時期
冬の中に兆す春
春の中に残る冬
が交錯
それを<五七五 十七音の定型に主たる季語一つ>
有季定型という範疇で表現するのが俳句
なにをどう詠むかは作者次第
範疇を逸脱して作るのも勝手
だが 最早それは俳句ではない
れっきとした一編の詩ならば──
俳句である必要などありはしない
ゆえに <自由律の俳句>という
呼び方には違和感を覚える

レベルは変わるが
俳句になりきらないのは
たんなる勉強不足
型を味方につければ百人力
説明のための散文との決定的な相違は
一本の「句中の切れ」の存在

<切れ>がいまひとつ理解できない人は 中公文庫 外山滋比古著
「省略の詩学」600円に触れられるといい
著者は英文学者 俳人の俳論より明快 もっと早く読むべきだった


─俳句なう─
「第30回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ 3月8日〜3月22日締切り 4月8日掲載予定 一人六句以内(1ツイ−ト3句以内×2ツイ−ツまで)とします
兼題は彼岸 弥生 麗か 朧 春の宵 雪解(ゆきどけ ゆきげ) あるいは自由題(当季 春)でご参加下さい



「2007年(平成19年)2月25日」 あきら
表題の年月日は俳人飯田龍太(1920〜2007)の忌日
僕は龍太とは縁も所縁もない
つまり謦咳に触れたこともなければ 師系にも全くつらならない
一介のファンにすぎない
ただ 五年前のこの二月 俳句を志して古志に入会したばかり
新聞 俳句雑誌で その訃報が大きく報じられていて
俳句村の狼狽ぶりが 門外漢だった僕にはとても奇異に思えた
手元に角川の俳句五月号が残る 保存版追悼大特集「飯田龍太の生涯と仕事」
しばらくして 思潮社から「飯田龍太の時代 山蘆永訣」が出て座右の書に
この辺りの俳句近現代史が 僕の基準点になった
大げさにいえば 五年間俳句を継続できたのは龍太俳句のお蔭
この季節の句として 1975年(昭和50年)立風社刊「山の木」所蔵
<白梅のあと紅梅の深空あり>1973年(昭和48年)作が著名
この一文を書き記すのはそのため
偶然といえば 古志大阪句会に初参加した際 隣席で手ほどきを受けたのが
現・古志同人で「もちの木句会」主宰の田宮尚樹さん
尚樹さんの句 師の一周忌の法要に参列する途次に詠まれた
<はくれんを浜松に見て旅半ば>に感銘を受けた
こうしてみると 全く関係のないことなどないのが分かる
袖振り合うも多生の縁──俳句は人生に似ている



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