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あきら「茶柱句会 第三部 第16回茶柱ツイッタ−句会」

─俳句を遊ぼ─
「第16回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」

(着信順 投句のまま)
5月22日募集〜5月29日締め切り分
一人三句まで(1ツイ−ト3句以内)
兼題なし(当季・仲夏)


ラムネ干す青い記憶のグラデ−ション

温室に高き一画青芭蕉

花菖蒲江戸紫は母の色
(以上三句 大阪市 あきら)


心太夫婦別れし宿と聞く

噴水を止めて仕舞ひし水の町

滝の水髪の薄さを暴きけり
(以上三句 西条市 田所良雄)


金閣といふ牡丹咲く狭庭かな

夏場所や魁皇勝つた右上手

半夏生思ひ悩むな陽は昇る
(以上三句 加古郡 はつを)(代ツ)


山深きバス停の薔薇咲きにけり

たくさんの鳩と目があふ木下闇

帰る子ににぎり飯二個夏の朝
(以上三句 鈴鹿市 yambuo )


詠まれた当季の季語
順番に 
ラムネ 青芭蕉(あをばせう)花菖蒲(はなしやうぶ)
心太(ところてん)噴水 滝 牡丹 
夏場所 半夏生(はんげしやう) 薔薇 
木下闇(こしたやみ)夏の朝



<同人欄>
「鮎の宿」 あきら(代表同人)vol.4
黒南風や雲母刷りの粋写楽なう

樽眠る竹林はやも梅雨に入る

ソーダ−ファウンテン青き時代のモダニズム 
 
常若と無常のことや合歓の花

紫陽花や新陰流の師範代

鮎の宿自慢の花のオムニバス

明易し公転自転恙無く

マントルの緑の炎夏木立

字句補足説明
順番に
黒南風(くろはえ)梅雨に入る ソーダ− 合歓の花(ねむのはな)
紫陽花(あぢさゐ)鮎の宿(あゆのやど)明易し(あけやすし)
夏木立(なつこだち)が夏の季語
「黒南風」は梅雨期の初めに吹く南風(広辞苑)(季語歳)ではくどくなるが
暗くどんよりとした梅雨の長雨が続く時期に吹く湿った南風(はえ)のこと 
雨が続いて憂鬱な気持ちと このころの空の色を重ねて「黒」となった
「雲母刷り」(きらずり)は雲母の粉を篩にかけて振る技法 
写楽の役者絵の背景などに用いられた 
黒雲母刷り(くろきらずり)を筆頭に多くの技法がある 
雲母(うんも)の粉を振ることで 輝きが生まれ 暗い画面も粋で華やかに
最後の「なう」はツイッタ−用語の応用
「樽眠る」はサントリ−山崎醸造所 大山崎の竹林の中にある
「ソ−ダ−ファウンテン(soda fountein)」はアメリカで生れた 
清涼飲料水を供給する簡易な装置と場所のこと 
後にアイスクリ−ムや軽食も出すようになった 
日本では1902年(明治35年)銀座の資生堂(現資生堂パ−ラ−)に
作られたのが初め 
ある時期 格式の高いホテルではSFがあるのが常識となっていた
「常若」(とこわか)はいつも若々しいこと 神道の基本精神
「無常」(むじやう)一切の物は生滅・変化して常住でないこと 仏教の教え
「紫陽花」(あぢさゐ)は青から赤紫へ色が変化するところから
「七変化」ともいう 新陰流の創始者 上泉信綱に「無刀取り」の
公案を命じられた柳生宗巌(石舟斎)が開祖の「柳生新陰流」 
息子の宗矩(むねのり)は徳川幕府兵法師範として有名 
小説や映画では誠に格好いいのだが 
実際にはできるだけ戦わないことを第一義においているので 
素人目にはせこい印象を受ける 稽古は 独特の袋竹刀を用いる 
そこで紫陽花と取り合わせた次第
僕の畏友に柳生の芳徳寺で目録を受けた師範代がいる
その縁で尾張柳生21世宗家 柳生延春(厳道)(1818〜2007)さんに
十年ほど前にお目にかかったこともある 上品な内科医のような方だった
鮎の宿 鮎釣り客のための宿であったり 
鮎料理を供する料理旅館をいう場合もある 
釣り人の多く集る宿では夜な夜な自慢話がくり広げられているだろう
オムニバス(omunibus) もとラテン語で「万人向き」の意 乗合バス 
映画などでいくつかの独立した短編を並べて一つの作品としたもの 
俳句でいえば句集や当同人欄のようなものも この範疇といえるだろうか
明易し 夏になって夜の明けるのが早いこと 夏至前後の短い夜(広辞苑)
公転は太陽の周囲を周る運動 自転は自分で回転する運動 
これらの総合バランスと地軸の傾きが恙無(つつがな)ければ 
四季が生じ 朝と夜が生れる 
夏木立 一本だけだと夏木 それが数本なら夏木立という
マントル(mantle)地球の地殻と核との間の層 
地球の体積の80%以上を占める(広辞苑)旺盛な夏木立は 
そこに根差して緑の炎(ほむら)の如く茂る


「夏少女」 良雄(同人)vol.3
句会後のまだまだ見入る花菖蒲

一列を植へて一息田植かな

ハンカチを忘れて来る少女かな

青葉風誘はれ嬉し新句会

裏川に翡翠来る片靨

五月雨に新しき傘開きけり

夏少女ピアノと踊るジャズの夜

字句補足説明
順番に
花菖蒲(はなしやうぶ) 田植 ハンカチ(ハンカチ−フ)
翡翠(かはせみ)五月雨(さみだれ)夏少女が夏の季語
片靨(かたゑくぼ)は見慣れない漢字だが笑窪(ゑくぼ)に同じ
翡翠は「空とぶ宝石」とも称される(広辞苑)
夏少女は夏そのものが季語で夏○○という組み合わせの季語
夏座敷 夏料理 夏館(なつやかた)などと用いられる
他に夏の月 月だけだと秋の季語だが 夏の月と表現すれば夏の季語


「葵祭」 はつを(同人)vol.1
地震忘れ葵祭に酔ひ賜れ

絵巻より罷り出たる祭かな

懸葵忍ぶ恋する斎王代

女人列なべて丸顔葵祭

ゆうゆうと牛車の軒の藤の花

字句補足説明
順番に
葵祭(あふひまつり)懸葵(かけあふひ)藤の花(ふぢのはな)が夏の季語
葵祭 5月15日に賀茂社で行われる例祭 
斎王代(さいわうだい)を頂点にした女人行列
(平安朝の優雅な古典行列)で知られる(詳しくはwikipedia)
因みに京都の三大祭りは他に7月の祇園祭と10月の時代祭
葵は賀茂社の神紋(賀茂葵=双葉葵)なので葵祭と呼ばれる
京都御所を出て下鴨神社(賀茂御祖神社)を経て
上賀茂神社(賀茂別雷神社)へ向かう行列 地震(なゐ)
むかしは地震のことを「なゐ」と表現した
斎王代(さいわうだい)斎王とは即位の初め 伊勢神宮や賀茂神社に奉仕した
未婚の内親王または女王のこと(いつきのみこ)(広辞苑)「代」はその代理 
京都の乙女の憧れのヒロイン 未婚の一般女性から公募される
懸葵 祭りの供奉する人の冠帽に葵桂(桂の枝に双葉葵を懸けたもの)
葵祭と呼ばれる所以のひとつ 基本となる季語は賀茂祭(かもまつり)
傍題として葵祭 北祭(南祭は石清水八幡宮)懸葵がある
例句<牛の眼のかくるるばかり懸葵 粟津松彩子>(はつをさん調べ)
牛車は「ぎうしゃ」ではなく「ぎっしゃ」と読むのが粋
俳句に用いる言葉は まずこのように詠み手がよく理解して用いることが大切
この字句補足説明は 俳句を読む方の手引きとして書いています 
一方 詠む方にもより一層深い理解を得ていただけるように提供するもの
なお賀茂祭については 季語歳にも詳しいので併せてご参照あれ

<講評>
「茶柱句会」主宰 あきら(茶柱ツイッタ−句会 代表同人)
今回の参加者は4名(76名)参加句数12句(208句)( )内は累計
同人の田所良雄さんの安定した句境 コンスタントな参加に頭が下がります
<心太>の句 なにやら意味深な物語風 
当季の季語「心太」(ところてん)はよくこんな場面に置かれる
西条市は石鎚山の伏流水が豊富な水の町 
噴水を止めたのはポンプの節電からだろうか
<噴水を止めて仕舞ひし>に市民としての無念さが表れる
同人欄「夏少女」<夏少女ピアノと踊るジャズの夜>
多才な良雄さんの洒落た一面 
良雄さんがファンだという中森明菜の少女Aの頃のような娘だろうか
同人のはつをさん<夏場所>の句 大関魁皇の大ファンとのこと 
右上手を取れば磐石 このような型を持った関取が少なくなった 
残念ながら相撲界の不祥事続きで 
本来の夏場所が無粋な「五月技量審査場所」とされた
一人横綱白鵬の優勝だったようだが 僕は積極的には見なかった 
「半夏生」夏至から11日目に当たる日 
梅雨が明け田植えの終期にあたるころ(広辞苑)
この句 いろんな人にエ−ルを贈る励ましの一句
同人欄「葵祭」初句にも<地震(なゐ)忘れ>と
阪神大震災の経験者のはつをさんならではのエ−ルが聞こえてくる
同人欄の「葵祭」<懸葵忍ぶ恋する斎王代>古希とは思えぬしなやかな色香
新人の鈴鹿市のyambuoさん 前回と比べて長足の進歩 
俳句という器に自然体で言葉を活けられた 
ことに<たくさんの鳩>の句は個性的 
句の背後に作者を感じさせるオリジナリティのある佳句
直截的ながら他の二句にも 勉強の成果が早速現れている

俳句のいい点は自得さえしてしまえば 年齢 性別 経歴に関係なく誰もが
フラットになれるところ(自得をすればという点を忘れないことが大切)
そして 俳人はなにものにも阿ることがない独立した自由人
今回は同人3名と新人1名の参加だったが 互いに遜色はない 
俳句というかけがえのない表現方法を自得するには 正しく学び・考え 
日々コツコツと作り(捨て)続けるしか術はない 
「継続は力なり」句会への参加こそがまたとない継続の機会──


茶柱句会第三部「第17回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
6月8日募集〜6月15日締め切り 6月22日掲載(予定)
兼題は特にありません 自由題(当季)でご参加下さい
1人3句まで(1ツイ−ト3句以内)

震災復旧等の影響で横町への掲載日程が
変わることもありますがご了承下さい

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