茶柱横町 茶柱横町入口へ
 
 
プロフィールを見る
前を見る 次を見る

井上あきら習作篇 その四十八 当季雑詠


「雪吊」
初明りビルの隙間の自然体


小さきもの立ちて嬉しき福茶かな


書初や金釘流のパステルの


日だまりに展げし反古や雪野原


どやどやと湯気立ちゐたり寒九かな


雪催軋む孤舟の観覧車


寒茜無言のビルを燃して消ゆ


雪吊や今宵治部煮といたすべく




<字句補足説明>
【本稿の季語の説明についてはその多くを
インタ−ネット歳時記「季語と歳時記 5000語検索サイト」
http://kigosai.sub.jp/ に掲載された内容を参照しています
旧暦関係の説明には畏友・松村賢治編著「和のくらし・旧暦入門」
(洋泉社MOOK)にその多くをよっています
広辞苑によるものは 末尾に(広辞苑)と表示しています】

本日 一月二十二日は奈良若草山山焼き

今回の主題は「雪吊」(ゆきつり)
雪折れを防ぐために 庭木などの枝を支柱から縄でつり上げること(広辞苑)
金沢 兼六園の雪吊りがことに有名

「初明り」(はつあかり)が新年の季語
元日のあけぼのの光(広辞苑)「初日」は元日の朝日そのもの
その朝日の光がもたらす明かり
ビルとビルとの隙間にも入り込んでいる
ビルは大なり小なり情念の産物
その隙間は巧まずしてできたボイド(空間)で自然体

「福茶」(福茶)が新年の季語 
昆布 黒豆 山椒 梅干などを入れた茶
大晦日 正月 節分などに縁起を祝って飲む(広辞苑)
母が健在のころ正月に祝った
昆布と小梅だけの質素なものだが 湯飲みは九谷の年代物だった
茶葉は玉露と番茶の中間の煎茶
小さきものとは 小さな茶柱
茶柱が立てば縁起がいいと喜んだ

「書初」(かきぞめ)が新年の季語
金釘流(かなくぎりう)は筆跡のへたなのを流派のように言ってあざける語
(広辞苑)今年から 電子書籍向けに自句を自筆することにした
書となると一行ではさまにならないので
昔のように分かち書きにする
自画自賛すれば榊莫山(1926〜2010)風
自嘲すれば金釘流
毛筆は離れて半世紀も経つので断念 パステルにした
パステルで描いてフィキサチ−フで定着する
こんど キャンソンに木炭も試してみようと思う

「雪野原」(ゆきのはら)が冬の季語
自句自筆を始めたために 早速 反古(ほご)が発生
日向に展(ひろ)げた反古は皺くちゃで雪原のように見える

「寒九」が冬の季語
今年は一月六日が小寒(せうかん)寒の入り
数えて九日目が寒九とよばれる一月十四日
大阪の四天王寺では 新年に始まった修正会の結願
近郷の農民や漁民が結願を祝ったのが起源の
「どやどや」とよばれる裸祭りの習俗
熱気で汗やぶっかけられた力水が湯気になる
西高東低の典型的な冬型気圧配置
温暖化なにするものぞと
よく冷えた寒の内
十日戎(宵戎 本戎 終ひ福の三日間)も納め
かくて今年も淡々と進行中

「雪催」(ゆきもよひ)が冬の季語
いまにも雪が降りそうな鬱陶しい空模様
孤舟(こしう)は 渡辺淳一さんの近作の題名「孤舟」(集英社)
人間一人ひとりを孤独な舟に例えた命名
大手広告代理店を定年退職した男の孤独を描く
観覧車は社会のように一つの円環を成しているが
軋むゴンドラの一つひとつもまた孤独な舟

「寒茜」(かんあかね)が冬の季語
冬の夕焼け 冬夕焼 冬茜(ふゆあかね)
夕焼けだけだと夏の季語だが
サディスティックな女のような冬の夕焼けは 
無言のままビルの窓を炎上させて さっと消える

「雪吊」(ゆきつり)が冬の季語
天を指す支柱と縄による円錐形の姿が
兼六園の冬の風物詩
樹木や庭の景観を損なうこともない
雪吊りを作る作業中も絵になる
縄を操る植木職人の巧みの技
治部煮(じぶに)は加賀料理の一つで 鴨の煮込みのこと
醤油味に山葵を添えた和風
雪吊りのころの治部煮はまさにどんぴしゃ
(324句目)

<お知らせ>
一億人の俳句という向きもありますが 話半分 五千万人の俳句
俳句は日本語の国民的文芸の一形式 <読めれば詠める─俳句を遊ぼ─>
2010年(平成22年)10月から
twitter上に五千万人の「─俳句を遊ぼ─茶柱ツイッタ−句会」を開始
http://twitter.com/haijin575 から投句できます
@haijin575へのダイレクトメッセ−ジからの参加でも構いません

ハガキに句を書いて投句する方法は いまも全国的な俳句結社で実践中
もとはといえば 明治時代に新しくできた郵便制度を一早く取り入れた
正岡子規のアイデア「郵便俳句」
その進取の気風に倣い ツイッタ−時代の全国句会「茶柱ツイッタ−句会」
ささやかな参加人数ながら 愛媛県 兵庫県 大阪府 愛知県 神奈川県 
東京都など全国からご参加いただいて 今回は「第七回」目
誰でも 何時でも 何処からでも 気軽に参加できる句会です
参加費用は無料です
俳句の優劣を競うコンク−ルの場ではありませんので
審査員も選者もいません 投句されたまま掲載されます
順位をつけたり 特別な賞を授与することもありません(添削もしません)
俳句は生活に「張合い」をもたらしてくれます
もっと大袈裟にいえば「生き甲斐」にすらなり得ます
(俳句の基本ル−ルだけ守り)上手 下手はさておき
俳句を日常生活のレベルで詠んだり・読んだりして─俳句を遊ぼ─
読む(鑑賞)だけでも立派な参加者 ツイッタ−でご感想をお知らせ下さい
今年から 読み手の感想(鑑賞文)欄を設けます
ル−ルは運営しながら随時定めてゆきますが
ル−ルがあるから 皆が共通に楽しめる(遊べる)
楽しむために 俳句といえる基本的ル−ルとして ただ一点

<五七五 十七音の中に(主たる)季語を一つ入れること>と定めます

ツイッタ−に不慣れな家族 友人 知人の依頼による代筆ならぬ
「代ツイッタ−」は(代ツ)と末尾に書き添えていただければ可とします

季語の判定については
インタ−ネット歳時記の
「季語と歳時記 5000語検索サイト」掲載の解釈を基本とします
http://kigosai.sub.jp/

「茶柱ツイッタ−句会」参加者で ご希望があれば その力量に応じて
「個人・茶柱ツイッタ−句作展」(不定期)を開催することも検討中 
主宰にお気軽にご相談下さいませ

将来 投句作品の全句集を印刷冊子化あるいは
電子書籍化することもあり得ますので
作品の著作権は主催者に帰属することをご承諾いただきます 以上


─俳句を遊ぼ─
「第七回茶柱ツイッタ−句会参加作一覧」(着信順 投句のまま)
2011年1月1日募集〜1月15日締め切り 2011年1月22日掲載
一人三句まで(1ツイ−ト3句まで)
兼題「元旦」「正月」「初春」「新年」「去年今年」「初空」「初日」
「初景色」「初富士」「初詣」「鏡餅」「書初」「門松」「注連縄」
「雑煮」「屠蘇」「自由題(当季・新年)」



境目はテレビの時報去年今年 (大阪市 あきら)

初棋戦はや秒読みの持ち時間 (大阪市 あきら)

ジグザグと白味噌雑煮妻の味 (大阪市 あきら)

解きやすし紐の具合も初荷かな (横浜市 十巣)

初景色ちひさきものはちさきまゝ (横浜市 十巣)

初春に顔を引き立つ着物かな (西条市 田所良雄)

初春や幾年までも父の顔 (西条市 田所良雄)

空青く水を浴びるや初鴉 (西条市 田所良雄)

柊の花の香りをつれ帰り (加古郡 はつを)(代ツ)

薄雪を被衣初めたる水菜かな (加古郡 はつを)(代ツ)

豆引くや地球の皮を剥ぐごとく (加古郡 はつを)(代ツ)

帆を立てていざ行け吾の宝船 (一宮市 俳句(ry )


<鑑賞(読者の欄)>

「茶柱句会」読んでいて難しいと思いながら、
ふと「茶柱ツイッタ−句会」というところまできて
<石蕗の花中島みゆきならファイト>これは面白い。
次は<明智越え命を浸ける柚子湯かな>これもいけると思って
右の作者のところを眺めたら、何と(あきら)とあるではありませんか。
道理で主宰なら上手いのも当たり前。
「ファイト」の旋律が頭に浮び、年末の慌しさの中、
一時楽しくさせてくれました。
今年も「茶柱横町」を送り続けて下さってとても勉強になりました。
来年も頑張って下さい。(伊賀上野 輝雄)2010.12.25.

<総評>

─俳句を遊ぼ─「茶柱ツイッタ−句会」主宰  あきら
新年の季語と寒中の季語とが入り交じる 清新な気が漲った一月らしい
句会となりました そこが俳句という詩のいいところ
僕にとっても句会の運営は「自己点検」の場となる貴重な機会です 
今年も共に研鑽して参りたいと思います よろしくお願いします
今年から始めた<鑑賞(読者の欄)>詠み手(作者)と読み手(読者)の交歓
ことに 読み手は何を読んでおられるのかを
確認させていただく機会になればと考えています 
伊賀上野に伊州窯を持つ輝雄さんに感謝いたします
今回の参加者は5名(32)投句数12句(86)でした( )内の数字は累計
幸先よく全員<俳句の部>での出発

横浜市の十巣さんは 「初荷」と「初景色」の二句での参加 
新年の凛とした様相を繊細な感性でクリアに詠まれた
西条市の田所良雄さんは「初春」の二句と初鴉(はつがらす)の句を詠まれた
ふつうの烏も良雄さんに初鴉と詠まれると趣が一変 風景の主役に
加古郡のはつをさんは 本格的に畑仕事をやっておられる方ならではの二句と
「柊の花」(冬の季語)の銀木犀に似た芳香の句 
「豆引く」は晩秋の季語 「季語歳」でも確認できる 
豆は根こそぎ引き抜くのでこの表現になる 
昨年は都合で初冬の収穫になられた「被衣初めし」は(かづきそめし)と読む 
薄雪(冬の季語)を被った水菜のはかなさが伝わってくる 
一宮市の俳句(ryさんは「宝船」の一句での参加 連続参加は途切れず継続中


「第八回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
1月22日募集〜1月29日締め切り 2月8日発表
兼題は「大寒」「冬の朝」「凍る」「雪催(ゆきもよひ)」「雪」
「寒卵(かんたまご)」「雑炊」「粕汁」「寄鍋」「おでん」「榾(ほた)」
「障子」「息白し」「悴む(かじかむ)」「日向(ひなた)ぼこ」
「臘梅(らふばい)」「枯葉」「水仙」「竜の玉」「枯芝」
いずれも当季(冬)の季語ですので一句に一つを選んで詠みこんで下さい
あるいは「自由題(当季)」で詠まれても結構です
投句はお一人三句まで(1ツイ−ト3句まで)1月29日当日着信可
ふるってご参加下さい



Let's Tweet
haijin575をフォローしましょう
井上 明関連サイトリンク
暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

第60回
茶柱ツイッタ−句会

第59回
茶柱ツイッタ−句会

第58回
茶柱ツイッタ−句会

バックナンバーINDEX
前を見る 次を見る
| 著作権について | このページのトップへ | 茶柱横町入口へ |