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井上あきら習作篇 その四十六 当季雑詠


「枯木」
雪列車大聖堂に聖女めく


漂着の中文のゴミ雪繞く


悴みし遠近法のルミナリエ


ふたたびの煌く神戸枯木山


渓向かひ夜目にも白き枯木山


冬の濤活字に眠る枯木灘


冬の月レ−ルは終ひに交はらず




<字句補足説明>
【本稿の季語の説明については その多くを角川書店編
「第三版俳句歳時記 冬の部」及びインタ−ネット歳時記「季語歳」
http://cgi.geocities.jp/saijiki_09/index.html
に掲載された内容を参照しています】

十二月 極月(ごくげつ)旧暦では師走(しはす)
おし迫る2010年も最後の月
昨日十二月七日は二十四節気の大雪(たいせつ)
十二月二十二日は二十四節気最後の冬至 
無病息災を祈念して
柚子湯に入って 南瓜を食べる風習
今回の茶柱句会は忘年句会
来年一月一日の新春句会でまたお目にかかります
「茶柱句会」にお付き合いいただいた皆様
新しく始めた「茶柱ツイッタ−句会」にご参加
いただいた皆様 誠にありがとうございました

今回の主題は「枯木」(かれき)
冬になって落葉した木 けっして立ち枯れているのではなく
来年また芽を吹く 生きている冬の木のこと

「雪」(ゆき)が冬の季語  二句 
雪列車は屋根の上に雪を載せている列車
JR大阪駅は平成の大改修工事中(来春完成予定)
新しい北のビルと既存の南のビルとの間に
大屋根を架け渡した まるで大聖堂のようだ
雪を頭に載せた列車は 白いベ−ルを被った聖女が
額づくようにも見える
大阪駅の北陸線は一番天井が高い北端11番線ホーム
いまでは富山 金沢行きのサンダ−バ−ドが有名
若い頃 このホ−ムから夜行のスキ−列車
に乗った記憶が蘇る

二 中文は中国語で書かれた文字のこと
漂着物には他にもハングル(韓国文字)や英文
露文 和文などが混じり
ことに日本海は一衣帯水(いちいたいすい)
だと思い知らされる
雪繞く(ゆきしまく)は雪がまとわりつく様子
いろんな国の文字の漂着物に雪が降っている
昔の椰子の実に思う 見知らぬ南の国への憧憬とは異質な時代

「悴み」(かじかみ)が冬の季語
ルミナリエは神戸ルミナリエのこと
1995年1月15日の阪神淡路大震災の鎮魂と
復興を目指して その年の12月から始まった
光のペ−ジェント 今年は第16回目に当たる
今年のテ−マは「光の心情」だとか
第1回目は まだ道路に亀裂も入ったままの開催だった
門形のポ−ルに取り付けられたアラベスク模様の豆球が郷愁を誘う
道路に並ぶと連続したア−ケ−ドのようになり
正確な遠近法の図を見ているようだ

「枯木」(かれき)が冬の季語  二句
その神戸 復興して街に灯りが戻った時の感動
海と山とが迫った細長い神戸の街
瓦礫(がれき)から蘇り 再び煌く夜景
北野の異人館の裏の枯木山から眼下に見る
上五「ふたたびの」には現在ロードショ−中の映画
「ふたたびの─swing me again」(塩屋俊監督)を重ねた 

二 渓の向かいの山は 
初めての旅館などでよく体験する夜の眺め
葉をつけた樹木に覆われた山は光を吸収して
黒々と見えるが
枯木は月の光を返して白骨のよう

「冬」(ふゆ)が冬の季語  二句
冬の濤(なみ)
「枯木灘」(かれきなだ)は中上健次(1946〜1972)
1977年(昭和52年)の作 熊野灘の異称を題名にした
年齢が近い異能の作家とあって 
一時期 意識して作品を読み込んだ
蛇足ながら 枯木灘の「枯木」は地名のようなもので
秋田の「秋」と同じで季語にはならない

二 冬の月 
冬の月は冷気に冴え冴えと輝いている
まんじりともせず夜を明かしたものの
レ−ルは終に交わらなかった
二本のレ−ルが交わらないのは当たり前なのだが
(313句目)

<お知らせ>
一億人の俳句という向きもありますが 話半分 五千万人の俳句
俳句は日本語の国民的文芸の一形式 <読めれば詠める>
twitter上に五千万人の「茶柱ツイッタ−句会」を始めます
http://twitter.com/haijin575から投句できます
@haijin575へのダイレクトメッセ−ジからの参加も可とします

ハガキに句を書いて投句する方法は いまも全国的な俳句結社で実践中
もとはといえば明治時代に新しくできた郵便制度を
一早く取り入れた正岡子規のアイデア「郵便俳句」
その進取の気風に倣い ツイッタ−時代の全国句会「茶柱ツイッタ−句会」
ささやかな参加人数ながら 
愛媛県 兵庫県 大阪府 愛知県 神奈川県 東京都など
全国からご参加いただいて 今回は「第五回」目
誰でも 何時でも 何処からでも 気軽に参加できる句会です
参加費用は無料です
俳句の優劣を競うコンク−ルの場ではありませんので
審査員も選者もいません 投句されたまま掲載されます
順位をつけたり 特別な賞を授与することもありません(添削もしません)
俳句は生活に「張合い」をもたらしてくれます
もっと大袈裟にいえば「生き甲斐」にすらなり得ます
(俳句の基本ル−ルだけ守り)上手 下手はさておき
俳句を日常生活のレベルで詠んだり・読んだりして楽しんでみませんか

ル−ルは運営しながら随時定めてゆきますが
楽しむために 俳句といえる基本的ル−ルとして ただ一点

<五七五 十七音の中に(主たる)季語を一つ入れること>と定めます

ツイッタ−に不慣れな家族 友人 知人の依頼による代筆ならぬ
「代ツイッタ−」は(代ツ)と末尾に書き添えていただければ可とします

季語の判定については インタ−ネット上の
「季語と歳時記の会」掲載の解釈を基本とします
http://cei.geocties.jp/saijiki_09

「茶柱ツイッタ−句会」参加者で
ご希望があれば その力量に応じて
「個人・茶柱ツイッタ−句作展」を不定期に開催することも検討中 
主宰にお気軽にご相談下さいませ

将来 投句作品の全句集を印刷冊子化あるいは
電子書籍化することもあり得ますので
作品の著作権は主催者に帰属することをご承諾いただきます 以上


〈第五回 茶柱ツイッタ−句会 応募作一覧(着信順 投句のまま)〉
2010年11月22日募集〜11月29日締め切り
12月8日掲載
兼題 「七五三」「柚子湯」「初雪」「小春」(小春日)
「師走」「忘年会」「山茶花」「茶の花」「石蕗の花」
および「自由題(当季)」
一人三句以内( 一ツイ−ト三句以内)


<俳句の部>

石蕗の花中島みゆきならファイト (大阪市 あきら)

明智越え命を浸ける柚子湯かな (大阪市 あきら)

茶の花や秘すれば花と独り言つ (大阪市 あきら)

石蕗の花弘法様へお賽銭 (西条市 田所良雄)

山茶花や小雨となりし寺の朝 (西条市 田所良雄)

献金を募り振り込む小春かな (西条市 田所良雄)

湯気に色無くて不思議な柚子湯かな (横浜市 十巣)

黒と三毛立ち止まりたる師走かな (横浜市 十巣)

目腫らして暮れる日もあり時雨けり (横浜市 十巣)

そぞろ寒日清日露遠ざかり (加古郡 はつを)(代ツ)

小春日や連理の枝を知る旅路 (加古郡 はつを)(代ツ)

木枯や餌をさがして青い鳥 (加古郡 はつを)(代ツ)

真昼間青空照らす菊の花 (一宮市 俳句(ry )

秋風で秋風邪になる私かな (一宮市 俳句(ry )

<その他の部>

秋がすぎ「あっ」という間に初日の出 (一宮市 俳句(ry )

*
<総評>
「茶柱ツイッタ−句会」主宰 あきら

今回は参加者5名(23)投句数15句(62)でした
( )内の数字は第一回からの累計です
初参加は 加古郡のはつをさん
古希のはつをさんは「奥の細道」を実際に歩いて
芭蕉追慕の句作をライフワ−クとしておられます
謙虚に学ばれる姿に頭が下がります
(代ツ)での参加はご都合で飛び飛びになりそうです
西条市の田所良雄さんはツイッタ−上で
自作の漢詩を呟かれる才人
じっくりとした詠みぶりで俳句の味わいが
滋味深く伝わってきます
横浜市の十巣さんは アイコンも猫の猫好き?
猫への愛情が伝わってくる師走の景
一宮市の俳句(ryさんには
肩の力を抜いた子規の滑稽な面の味わいがある
俳句っぽくないのは 口語文ゆえか
川柳や俳句を作るのがお好きで楽しいとのこと 
新宿区の新宿翁子さんには
次回のご参加を期待しています

俳句は端的に表現し印象深く伝える詩
それゆえ いろんな工夫がなされてきました
僕は物に即して(即物)余分を捨象(非情)するため
文語 旧かなの表現方法を採っています

何事も楽しむためには稽古(学ぶこと)が大事
その稽古が楽しみになればしめたもの
俳句雑誌の文法特集などで学んだ受け売りですが
来年は高校の国語程度の文語文法(古文)を随時掲載する予定

「茶柱ツイッタ−句会」は俳句を受け止める場
ツイッタ−のタイムラインの奔流に流されず しかと受け止める堰
気取りはご無用 まずは一句からでもご参加を・・・


ツイッタ−句会のお知らせ
平成23年1月1日「第六回句会」(新春詠)は11月30日締め切り
次々回 平成23年1月22日「第七回句会」は
1月1日募集〜1月15日締め切り 1月22日掲載予定
兼題は初春の季語から選んでいます(いずれか一つ選んで詠んで下さい)
「御慶(ぎょけい)」「淑気(しゅくき)」
「新年」「正月」「松の内」「初春」「初空」「初日」「初景色」「初富士」
「初鏡」「初句会」「初荷」「初夢」「初湯」「初詣」「万歳」「屠蘇」「蓬莱」
「買初(かひぞめ)」「鏡餅」「門松」「歌留多」「獅子舞」「雑煮」「宝船」
あるいは「自由題(当季 初春・冬)」
以上


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暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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