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井上あきら習作篇 その四十三 当季雑詠


「銀杏」
月の道途切れて黒きビルの肩


色無き風十句観音経唱ふ


恩寵の枝豆ならん丹波黒


銀杏の地下の轟音ひた走る


そゞろ寒吊革揺るゝ回送車


破れ蓮天竺はるか五絃琵琶




<字句補足説明>
【本稿の季語の説明については その多くを角川書店編
「第三版俳句歳時記 秋の部 」ならびに「季語と歳時記の会」の
インタ−ネット上に掲載された内容を参照しています】

十月十一日は国民の祝日 体育の日 秋日和でした
神に新穀を祀り感謝する最重要の祭事
神嘗祭(かんなめさい)は十月十七日
伊勢神宮において滞りなく納められた

十月二十日は旧暦九月十三日の十三夜の月
今日 十月二十二日は平安神宮の時代祭 鞍馬の火祭と
京の祭りのフィナ−レ
さしもの夏も退散 
遅れてやってきた秋を取り戻すかのように
駆け足で秋を設営中
明日 十月二十三日は二十四節気の霜降(さうかう)
秋も深まり 朝早くに霜が降りるころ

今回の主題は「銀杏」(ぎんなん)
「銀杏」と書いて「いちやう」とも読む
「一葉」の意味で「いてふ」と旧かなで表記することも
ほかに「鴨脚樹」「公孫樹」という中国風の書きかたも
銀杏(ぎんなん)はその実
硬い殻の中に翡翠色(ひすいいろ)の艶やかな実
殻ごと焙烙で焙ったり 翡翠色の実を土瓶蒸にいれたり
秋から初冬にかけて大活躍

「月」(つき)が秋の季語 
もちろん季節によって ル−トはやや異なるが
月は夕方東の空に昇り南東を通って西の方へ移動する
僕の家からは
東の生駒山を出た月が南に見える大林組のビルまでは
遮るものがなく堪能するほど眺められた
(最近できた超高層マンションで一部途切れる)
だからもう大林組に文句をいうつもりはない
このビルは黒い色で 端正なデザイン
大阪初の超高層と呼べるビル(1973年1月)
30階建て搭屋2階 119.8mも今や大阪で75位
最上階と搭屋の段のあたりが肩に見える(ビルの肩)
「月の道」というのは 飛行雲のような航跡が見えるのではない
月が運行する軌道をさすのでもない
情緒的な表現上の言葉だけでもない

月の動きを追っているときにはっと感じる実体としての
月の光の帯・・・のようなもの
太陽では眩ゆすぎて このような鑑賞はできない
悟ったことはないので 偉そうにはいえないが
悟りとはこのような境地をいうのではないかと思う
百聞は一見に如かず
ぜひ一度 ご照覧あれ(明日23日は満月)
春の月ながら中村汀女に<外(と)にも出よ触るゝばかりに春の月>(1948年)
つい最近 銀閣が東山の月待山に上る月の美を愛でるために
作られた楼閣であることを研究している学者がおられる
ということを NHKの番組で観て初めて知った
月は移動するので 時間とともに観る人もベストポジションへ移動する
銀閣(東山堂)はそのための設え 
終いには 外からその銀閣と月とを眺める施設まで造った義政の執念の山荘
現在の銀閣寺は俗称 正式には東山慈照寺(とうざんじしょうじ)

「色無き風」が秋の季語
秋風のこと
だがそのニュアンスはいささか異なる
上五 「秋風や」とか「秋の風」とすれば
切れもあり 五音で字余りにもならない
なぜ 字余りの「色無き風」に拘るのか
秋風といえば 間違いなく分ったつもりで
理解される あえてそういわないのは
分ったつもりで 受けとめられる情感を避けるため
「色無き風」は涼しいとか 爽やかといった情感よりも
その透明感がもつ「無」を強調
「十句観音経」は
「佛説摩訶般若波羅密多心経」より短く
お経の中で最短のお経 短いので全文掲載
正しくは「延命十句観音経」
観世音 南無佛 与佛通因 与佛有縁 佛法僧縁
常楽我常 朝念観世音 暮念観世音 念々従心起
念々不離心(一文字空け毎の単位が一句 それが十句ある)
むかし 嶋野榮道老師がニュ−ヨ−クで禅道場を開くにあたって
辻々で読経して布教されたことを知り 暗記した
深いところは「爾来如何」の清水大門師にご教示を請う

「枝豆」(えだまめ)が秋の季語
大豆の未熟なうちに茎ごと切り取ったもの
さやのまま茹でて食用とする 旧暦九月十三日の月に
供える(広辞苑)
この句は しかも丹波の黒豆「丹波黒」(たんばぐろ)
そのまま育てれば お正月の御節料理の黒豆になる
黒い宝石 これほどの贅沢はない
まさに恩寵(おんちょう)神の恵み
同じ結社(古志)の先輩が丹精されたものを頂戴した

「銀杏」(ぎんなん)が秋の季語
地下には地下鉄が走っている
御堂筋(南北4km弱)の銀杏並木は両側の歩道と
二本のグリ−ンベルトに合わせて千本弱(970本)
四季折々の表情が美しい
なかでも 秋の黄葉は黄金色といっても過言ではない
じつに豪華なもの
この時期 年に一回 銀杏拾いが市民に開放される
普段は感じない地下鉄の轟音を
地面の銀杏を拾うときに実感する

「そぞろ寒」(そぞろさむ)が秋の季語
秋が深まってきて それとなく感じるほどの寒さ
漢字で表すと「漫ろ寒」となる
秋の初めのころには「やや寒」(梢寒)「うそ寒」ときて「そぞろ寒」
もっと寒さを実感すれば「身に入む」となる
こちらは 身にこたえる 深く感ずる
という意味にも応用される
夜寒 朝寒 という表現もあり
微に入り細に入る日本語の語彙の豊富なことよ
この句 回送車輌の吊輪の揺れに感じた秋

「破れ蓮」(やれはちす)が秋の季語
敗荷とも表記する
秋の深まりとともに 破れた蓮(はちす)の葉(晩秋の趣)
天竺(てんぢく)は日本と中国での インドの古称(後漢書 西域伝)
五絃琵琶(ごげんびわ)正倉院展で19年ぶりに公開されている
螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんごげんびわ)
琵琶には二系統あり 四絃はペルシャ起源 五絃はインド起源(読売新聞)
破れ蓮と五絃琵琶とのとり合わせの句
(293句目)

<お知らせ>
一億人の俳句という向きもありますが 話半分 五千万人の俳句
俳句は日本語の国民的文芸の一形式 <読めれば詠める>
twitter上に五千万人の「茶柱ツイッタ−句会」を始めます
http://twitter.com/haijin575から投句できます
@haijin575へのダイレクトメッセ−ジからの参加も可とします

誰でも 何時でも 何処からでも 気軽に参加できる句会です
参加費用は無料です
俳句の優劣を競うコンク−ルの場ではありませんので
審査員も選者もいません 投句されたまま掲載されます
順位をつけたり 特別な賞を授与することもありません(添削もしません)

ル−ルは運営しながら随時定めてゆきますが
まず最低限 俳句といえる基本的ル−ルとして ただ一点

<五七五 十七音の中に季語を一つ入れること>と定めます

ツイッタ−に不慣れな家族 友人 知人の依頼による代筆ならぬ
「代ツイッタ−」は(代ツ)と末尾に書き添えていただければ可とします

季語の判定については インタ−ネット上の「季語と歳時記の会」掲載
の解釈を基本とします
http://cei.geocties.jp/saijiki_09

「茶柱ツイッタ−句会」参加者で
ご希望があれば その力量に応じて
「個人・茶柱ツイッタ−句作展」を不定期に開催することも検討中 
主宰にお気軽にご相談下さいませ

将来 投句作品の全句集を印刷冊子化あるいは
電子書籍化することもあり得ますので
作品の著作権は主催者に帰属することをご承諾いただきます 以上


〈第二回 茶柱ツイッタ−句会応募作 一覧(着信順 投句のまま)〉
2010年10月8日募集〜10月15日締め切り 
10月22日発表 お題(兼題)「運動会」「秋日和(あきびより)」「草の花」
あるいは 「自由題(当季)」(一人三句以内)


天の籠運動会の紅と白(大阪市 あきら)


秋日和後ろ歩きを小半時(大阪市 あきら)


草の花白洲正子にかくれ里(大阪市 あきら)


ぐんぐんと近付くテープ運動会(西条市 田所良雄)


テ−プ切り親の笑み見る運動会(西条市 田所良雄)


昼食は腹七分とす運動会(西條市 田所良雄)


蒸し暑き二百十日も過ぎていた(一宮市 俳句(ry )


田舎だけ都会じゃ見れない星月夜(一宮市 俳句(ry )


蒼き空真上に広がる桔梗かな(一宮市 俳句(ry )


柿木の垂れ下がる実の重さかな(大阪市 鉄平)


柿成りて飛びつく犬にほほえまし(大阪市 鉄平)


見え隠れ父母の姿よ運動会(新宿区 新宿翁子)


燃え盛る命は何処秋日和(新宿区 新宿翁子)


鮮やかに蘇る日よ金木犀(新宿区 新宿翁子)


きれぎれにマ−チははずむ運動会(横浜市 トス)


坂道をいとわぬほどの秋日和(横浜市 トス)


散歩する老犬の背に草の花(横浜市 トス)


*
「第二回茶柱ツイッタ−句会」報告
前掲 投句作品一覧の通り 参加者6名 投句総数17句でした
しばらくは毎月2回 応募期間7日のペースで進行します
(年末 年始は茶柱横町の編集の都合で予定が変わることもあり
11月中には お知らせする予定)
このようなペ−スでいいものかどうか
皆様のご希望やアイデアも
主宰のあきら宛へ
通常のツイ−トでもダイレクトメッセ−ジからでも結構です
 
「第三回茶柱ツイッタ−句会」募集案内
10月22日募集〜10月29日締め切り 11月8日発表予定
お題(兼題)「萩(の花)」「秋深し」「秋惜しむ」
それぞれ秋の季語になっていますので 一つを選んで詠みこんで下さい
あるいは自由題(当季)」でも結構です
一人三句以内<各句ごとの末尾に(所在市 作者名)を記入>
ダイレクトメッセ−ジからの参加でも結構です

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暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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