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井上あきら習作篇 その四十二 当季雑詠


「十三夜」
柿一顆一葉つけて盆の上


渋柿の引き手は数多蛇の目傘


馴染みなき現代案山子コンテスト


天高し低きところをヘリコプタ−


秋灯あのホスピスの母の窓


決闘や背よりも高き薄原


ツイッタ−てふ言葉の坩堝十三夜




<字句補足説明>
【本稿の季語の説明については その多くを角川書店編
「第三版俳句歳時記 秋の部 」ならびに「季語と歳時記の会」の
インタ−ネット上に掲載された内容を参照しています】

今月は旧暦の「神無月」(かんなづき)なにかと神様と関わりの多い月
神無月の由来は 八百万の神が出雲大社に集結するので
出雲以外の地は神様不在
逆に出雲では「神在月」(かみありづき)とか
十月十七日は神嘗祭(かんなめさい)
神様にその年の新穀を祀り感謝する祭事
(そもそも祭りの根本は 五穀豊穣の祈願)
別格の伊勢神宮では十五日から十七日まで
祭器・装束などを一新しておこなう 最重要の祭事
宮中行事・新嘗祭(にひなめさい)は来月 十一月二十三日
庶民にとっては祝日 勤労感謝の日

今日 十月八日は二十四節気の寒露(かんろ)
秋も深まり 冷気で野草に露の宿るころ
十月十一日は体育の日 運動会があちこちで

今回の主題は「十三夜」(じふさんや)
旧暦の九月十三日(今年は十月二十日)の月 後の月(のちのつき)
旧暦八月十五日(今年は九月二十日)の月は中秋の名月だった
どちらかだけを愛でるのは「方月見」(かたつきみ)といって嫌われた
この時期の一ヶ月の気温の差は明瞭 十三夜のころはもう肌寒い

「柿」(かき)が秋の季語 
一顆(いっくわ)一個のこと 果物は一顆 二顆と数える
ただ食べるだけなら葉など無用
この句 一葉をつけて盆の上に置き まず愛でようというのだ
これが俳句の心というもの

「渋柿」(しぶがき)が秋の季語
東アジアの固有種 渋柿が基本種で甘柿は突然変異だとか
その渋柿には いろんな美味しい食べ方がある
食べる他にもいろんな用途が
その有用性は計り知れない
「柿渋」は渋柿の実から採取した液
これを発酵させて 防水や防腐用の塗料にしたもの
木や麻や紙に塗った
蛇の目傘にも柿渋が 広げたときの独特の匂いがそれ
昔の日本家屋の板塀のこげ茶色は たいていこれ
俳誌「渋柿」は1915年(大正4年)松根東洋城(1878〜1964)
によって創刊された 五高時代の漱石先生に俳句の手ほどきを受けた
河東碧梧桐に対して虚子と共に対抗した俳人(とうようじょう)と読む
東洋城に<渋柿のごときものにて候へど>という句がある

「案山子」(かかし)が秋の季語
近頃は素朴な野良着姿やへのへのもへじ顔が姿を消し
有名なキャラクタ−やTVドラマの主役などが登場
コンテストも盛ん 秋の田園風景に馴染まないものも多い
肉付きをして人形のような案山子は いただけない
日本の原風景なのだから 安易な案山子はご法度

「天高し」(てんたかし)が秋の季語
ヘリコプタ−が低空飛行するのは なにかある時
秋になって 空が高く感じられるのに不吉
近くの裁判所で厚生省の被告人は無罪
大阪高検全面敗訴の取材ヘリだった(事件は大阪高検に飛び火中)

「秋灯」(あきともし)が秋の季語
秋の灯(ともしび)はしんみりとした情趣
ホスピスは緩和ケア病院のこと
癌などの不治の病の治療とともに
疼痛などの痛みや精神的苦痛を緩和することに主眼をおいた病院
僕の母も数年前 阪神間のホスピスで看取られた
それは穏やかな最期だった
ホスピスの窓は ホテルや一般病室の窓と同じように
街に開いている
そう思って眺めると その灯が命のようにも見えてくる

「薄」(すすき)が秋の季語
関西では奈良県と三重県の境に近い曽爾高原(奈良県曽爾村)と
大阪府と和歌山県の境に近い生石高原(和歌山県)に広大な薄原がある
ここまでは 外来の背高泡立草も侵入できず
時代劇の決闘シ−ンにはうってつけ

「十三夜」(じふさんや)が秋の季語 
旧暦九月十三日の月を十三夜という
十五夜の月よりも一ヶ月遅く やや肌寒いころの儚い情趣がある

十五夜は旧暦八月十五日(今年は九月二十二日だった)中秋の名月
月も愛でずに孤独のツイッタ− 方見の月になった方も・・・
最近始めたばかりのツイッタ−
夥しい量の呟きが瞬時に掲載されていく
まさに孤独な人が呟く「言葉の坩堝」
慣れるまでは いささか大変
「めくら蛇におじず」で挑戦中
自得を目指す
公開俳句道場「茶柱ツイッタ−句会」はその一環
(287句目)

<お知らせ>
一億人の俳句という向きもありますが 話半分 五千万人の俳句
俳句は日本語の国民的文芸の一形式 <読めれば詠める>
twitter上に五千万人の「茶柱ツイッタ−句会」を始めます
http://twitter.com/haijin575から投句できます
@haijin575へのダイレクトメッセ−ジからの参加も可とします

誰でも 何時でも 何処からでも 気軽に参加できる句会です
参加費用は無料です
俳句の優劣を競うコンク−ルの場ではありませんので
審査員も選者もいません 投句されたまま掲載されます
順位をつけたり 特別な賞を授与することもありません(添削もしません)

ル−ルは運営しながら随時定めてゆきますが
まず最低限 俳句といえる基本的ル−ルとして ただ一点

<五七五 十七音の中に季語を一つ入れること>と定めます

ツイッタ−に不慣れな家族 友人 知人の依頼による代筆ならぬ
「代ツイッタ−」は(代ツ)と末尾に書き添えていただければ可とします

季語の判定については インタ−ネット上の「季語と歳時記の会」掲載
の解釈を基本とします
http://cei.geocties.jp/saijiki_09

将来 投句作品の全句集を印刷冊子化あるいは
電子書籍化することもあり得ますので作品の著作権は
主催者に帰属することをご承諾いただきます 以上


〈第一回 茶柱ツイッタ−句会 応募作一覧(着信順・投句のまま掲載)〉
2010年(平成22年)9月22日募集〜9月29日締め切り 10月8日掲載
お題(兼題)「紅葉(もみぢ)」「柿」「秋刀魚」及び「自由題(当季)」
一人三句まで (一ツイ−ト三句以内)


法然の寺のもみぢに染まりけり(大阪市 あきら)


一村を見渡す棚田木守柿(大阪市 あきら)


誰彼も秋刀魚定食淀屋橋(大阪市 あきら)
 

風に舞う紅葉ひらひらからだ燃ゆ(横浜市 さかい まみ)


紅色に染まりに染まる紅葉かな(一宮市 俳句(ry)


青柿や夏を喰らいて朱に染まる(新宿区 新宿翁子)


秋雨や夏の残り火消してゆき(新宿区 新宿翁子)


紅葉狩りそれが最後と知らず過ぎ(八尾市 howk)


軒々に柿吊るしをり坂下る(八尾市 howk)


秋刀魚焼く路地の煙や母の家(八尾市 howk)


*
第一回茶柱ツイッタ−句会報告(主宰 あきら)
反響の大きさのわりには
主宰の力不足で参加者5名 総句数10句と低調な結果
この10句がありのままの姿 ここが出発点
しかし 参加には至らなかったものの
それに倍する多数の方々から関心が寄せられたのが希望

ツイッタ−句会そのものの存在意義が明確になる一方
多くの課題も明らかに
俳句とツイッタ−はその相性の良さから
ツイッタ−上には 既に毎日のように俳句が躍動

俳句界のツイッタ−族とでもいえる
フリ−な俳人や俳句愛好家も数多く台頭
#haiku タグを付すだけで 自由に俳句を毎日発表できる仕組み
だが ツイッタ−は言葉の坩堝
タイムラインの奔流に たちまちに流れ去るうたかた
それは大都市の様相そのもの
鑑賞されるいとまもない

ことの良否は別に このダイナミズムこそが
俳句界や既存の俳句結社に欠落している部分
あいかわらず3ヶ月前の句が掲載されている

一方○○botと称する名句紹介では古今の名句が定期的に更新され
鑑賞の機会が随時与えられている

改めて「茶柱ツイッタ−句会」とは何者なのかを自問しつつ
活動を継続すべきだと自覚した次第
まず当初の構想の柱の一つ 俳句への敷居を低くすること
ツイッタ−内では消え去ってゆく句を掬い留めること
活字冊子化あるいは電子書籍化への眼差し

飯田龍太さんがなにか*で「俳句は自得の文芸様式だ」
と述べておられた(*現代詩手帖 龍太の時代─山蘆永訣)
俳句(俳人)にとって一番大切なことは 自分で自分の句を知ること
「自分の作品の是非が判別できる人が俳人でしょうね」とも
自得とは 自分で会得して悟るということ
どんな師につこうが
結社に所属しようが
ツイッタ−族であろうと自得できない人はそれまで
じつに厳しい言葉だ

茶柱句会は 僕にとって自得に至る公開修練の場
それゆえ掲載句であってもいまだ習作という

茶柱ツイッタ−句会は これから俳句に取り組もうとする方と
修行者がともに自得に至ろうとする いわば俳句の入門道場

立ち上げてすぐに閉刊する雑誌のことを揶揄して
三号雑誌とよぶ
だが 賛同の方の声あるかぎりそうはならない
「往者不追 来者不拒」(去る者は追わず 来たる者は拒まず)
入門道場「茶柱ツイッタ−句会」の門戸は全開

「第二回茶柱ツイッタ−句会」のお知らせ
10月8日募集〜10月15締め切り(当日着信可)10月22日発表
兼題は「運動会」「秋日和(あきびより)」「草の花」
秋の季語になっていますので いずれか一つを一句の中に詠み込んで下さい
あるいは「自由題(当季)」で詠まれても結構です
一人三句以内(1ツイ−トに3句以内)@haijin575を頭に付して送信下さい
そうすれば迷子になることはありません #haiku のタグは不要です

句の後尾に(所在市 作者名)東京都の方は 所在区または所在市
その他 要領は前回と同じです
この主旨に賛同された方なら どなたでも参加していただけます
前回 参加できなかった方もぜひご参加あれ 以上

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井上 明関連サイトリンク
暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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